イトーキ、AI解析で自動物流倉庫の故障の兆候を検知する「予知保全システム」を開発
最適な保全を可能にする保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」として展開。
2026年1月発売へ
物流設備の「止まらない運用」を支援し、突発停止のリスク軽減と保守最適化を両立
イトーキは、物流業界における人手不足と需要拡大という課題に対応するため、日本オラクル株式会社の「Oracle Autonomous AI Database」と「Oracle Cloud Infrastructure(OCI) Data Science」を基盤に、自動物流倉庫の稼働データを収集・AI解析して故障の兆候を事前に把握する予知保全システム「スマートメンテナンス」を開発したといいます。
そして現場に行かずに遠隔で状況把握・復旧を支援できる「リモートメンテナンス」と一体の保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」として、2026年1月に発売するとしています。
「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は、シャトル式自動倉庫「システマストリーマー SAS-R」の稼働データを収集・AI解析し、故障の兆候を事前に把握することで、突発的な設備停止のリスクを軽減し、業務計画の安定化と、物流の「止まらない運用」を実現するとしています。

製品開発の背景
人手不足を背景に自動化・省人化が進む一方で残る「突発停止リスク」
政府が2023年に公表した「物流革新緊急パッケージ」によると、対策を講じなければ2024年度には14%、2030年度には最大34%の輸送力不足が発生する可能性が示されているといいます。物流業界における人手不足の深刻化に加え、EC市場の成長に伴い、宅配便の取扱件数が直近5年で18%増加しており、小口配送や多頻度配送の増加による物流オペレーションへの負荷が増しているとしています。こうした状況下で、安定した供給体制の確保は日本の産業基盤や経済の持続性に直結する喫緊の課題になっているといいます。
一方で、自動化・省人化が急速に進む物流現場において、突発的な設備停止による生産や計画への影響はいまだ大きなリスクだといいます。こうした課題に応えるため、日本オラクルの「Oracle Autonomous AI Database」と「OCI Data Science」を基盤に、稼働状況の可視化や、稼働データの解析によって故障の兆候を検知し、ダウンタイムの発生を軽減しつつ計画的なメンテナンスを実現できる「予知保全システム」を開発。現場に行かずに遠隔で状況把握・復旧を支援できる「リモートメンテナンス」と一体の保守サービス「ITOKIアドバンスドメンテナンス」を開発したとしています。
「ITOKIアドバンスドメンテナンス」の概要
「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は、イトーキのシャトル式自動倉庫「システマストリーマー SAS-R」に搭載可能な保守サービスプランだといいます。各機器に取り付けたセンサーや制御装置から収集した稼働データをAIによる異常検知アルゴリズムが判断し、設備の状態や故障の兆候(いつもと違う)を把握・検知する予知保全システム「スマートメンテナンス」と、遠隔で状況把握・復旧を支援できる「リモートメンテナンス」の機能を搭載しているとしています。
収集する稼働データには、稼働時間、動作回数、動作距離などが含まれ、これらを蓄積・表示することで、設備の状態を継続的に監視できるといいます。直感的なUIにより現場担当者が稼働状況を理解でき、メンテナンス計画の精度向上につながるとしています。
こうしたデータの可視化を基盤に、異常検知や入庫制限、部品交換時期の最適化といった高度な保全機能を展開することで、従来の時間ベース保守では対応しきれなかった突発故障のリスク軽減、計画的なメンテナンスによる最適化を実現するとしています。

スマートメンテナンス(予知保全システム)の主な特徴
部品交換時期の最適化 ― データに基づく計画的保守で安定稼働を実現
稼働時間、動作回数、動作距離などといった実際の稼働データをもとに、部品交換の最適なタイミングをシステムが通知するといいます。これにより、故障の未然防止につなげつつ、必要以上に早いタイミングでの交換を防ぐとしています。
異常検知と入庫制限 ― 故障の兆候を捉え、システム全体の停止を防ぐ
センサーやモーターから収集した稼働データをAIが解析し、データの変化を捉えて故障の兆候を検知するといいます。異常が検出された機器については、システムが自動で入庫制限し、出庫のみを継続稼働させることで、システム全体への影響を局所化し稼働停止の連鎖を防ぐとしています。これにより、物流現場における突発的なダウンタイムを最小限に抑え、安定した運用を維持することが可能になるとしています。

リモートメンテナンスの主な特徴
現場に行かずに遠隔で状況把握・復旧を支援
同システムは、拠点外から稼働データやログを収集し、設備の状態を遠隔で確認できるリモートメンテナンス機能を備えているといいます。現場に赴かなくても、制御盤(LCU:Local Control Unit)の画面操作や一部のソフトウェア更新が可能であり、トラブル発生時の復旧時間の短縮につながるといいます。これにより、保守員の派遣頻度を減らすとともに、人的負荷の軽減とメンテナンス効率の向上を実現するとしています。
データ解析・機械学習フローについて
同システムでは、物流設備から収集した膨大なセンサーデータをもとに、AIが設備の状態を学習・推定するプロセスを構築しているといいます。まず、拠点や季節によって生じる稼働データの差を補正し、ノイズを除去するなどの加工処理を実施。次に、設備構造や動作特性といった業務知見と解析技術を融合し、異常を高精度に捉えるための特徴量を設計するとしています。
モデル開発には「Oracle Autonomous AI Database」と「OCI Data Science」を活用し、高精度な学習と推論を効率的に実現。これにより、従来の閾値ベースの監視では検知が難しかった微細な変化も捉え、設備停止に至る前に予兆を把握できるAI異常検知システムを実現したとしています。

今後の展望
「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は2026年1月に発売予定であり、まずは「システマストリーマー SAS-R」の保守サービスプランとしての提供を進めていくといいます。さらに、他の物流設備や関連分野への応用も視野に入れているとしています。
イトーキと日本オラクルは、深刻化する人手不足や物流需要拡大といった社会課題の解決に貢献し、持続可能で強靭な物流ネットワーク構築に寄与していくとしています。
株式会社イトーキ 代表取締役社長 湊宏司氏のコメント

物流やインフラの現場では、人手不足や設備の老朽化といった課題が顕在化し、社会全体で「止めない運用」が求められています。「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は、「Oracle Autonomous AI Database」と「OCI Data Science」を活用することで、突発停止の最小化や保全計画の高度化を実現し、稼働率向上とTCOの最適化を同時に推進する新たな取り組みです。
イトーキは、設備機器・パブリック事業をワークプレイス事業に次ぐ第二の柱として位置づけ、日本オラクル様との協業を通じて先端技術と現場知を融合し、物流現場の生産性と安定稼働の両立をリードしてまいります。今後もテクノロジーと人の知恵を掛け合わせ、社会の安心と産業の持続性を支えるとともに、専門領域の“働く”と“未来”を切り拓いくイトーキにご期待ください。
日本オラクル株式会社 専務執行役員 クラウド事業統括 竹爪慎治 氏のコメント

物流の供給力確保はお客様の収益性と競争力の源泉です。「ITOKIアドバンスドメンテナンス」は、堅牢で拡張性の高いプラットフォーム上で現場の生産性と安定稼働、業界の継続的なイノベーションを実現します。オラクルは“AIとデータ中心”の戦略のもと、プライベートデータの安全活用を核にエコシステムで課題解決を推進します。AIインフラ領域でAI開発ベンダーと、特に日本ではユースケース起点で共創し、本件の立ち上げも支援しました。「Oracle Cloud」を通じ、イトーキ様のDXと持続的成長を力強く後押ししてまいります。
参考情報
・イトーキの工場・物流施設向けソリューション(システマストリーマーSASなど)
https://www.itoki.jp/solution/field/distribution/
・イトーキ、物流の現場再編に応える保管特化型自動搬送システム「X-NR(プロジェクトコード)」を開発、2026年発売予定
https://www.itoki.jp/company/news/2025/0703_X-NR/
・物流革新緊急パッケージ
内閣官房 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/pdf/kinkyu_package_1006.pdf
国土交通省 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/content/001725232.pdf
日本オラクルについて
日本オラクルのミッションは、人々が新たな方法でデータを理解し、本質を見極め、無限の可能性を解き放てるよう支援していくことだといいます。データ・ドリブンなアプローチにより情報価値を最大化するクラウドサービス、それらの利用を支援する各種サービスを提供しているとしています。オラクル・コーポレーションの日本法人。東証スタンダード市場上場(証券コード:4716)。
イトーキの設備機器事業について
株式会社イトーキは1890年創業。ミッションステートメントに『明日の「働く」を、デザインする。』を掲げ、オフィス家具の製造販売、オフィス空間デザイン、働き方コンサルティング、オフィスデータ分析サービスのほか、在宅ワークや家庭学習用家具、公共施設や物流施設向け機器など、”Tech×Design based on PEOPLE”を強みに、さまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートしているといいます。
設備機器事業では、安全性と機能性が求められる工場・物流設備(SAS)をはじめ、高い技術と信頼性を要する特殊扉、生体認証やICカードによる情報セキュリティシステムなど、社会ニーズに的確に応えるシステム設備を幅広く提供しているとしています。
(画像はイトーキ様リリースより)

