日本オフィス家具協会(JOIFA)、シンポジウム2024を開催

「JOIFAオフィスアワード受賞社に聞く、オフィスから会社を変える」

一般社団法人日本オフィス家具協会(以下、JOIFA)は2024年11月7日(木)、東京都 渋谷ソラスタコンファレンス4Aでのリアル参加とZoom参加でのハイブリッド形式で日本オフィス家具協会(JOIFA)シンポジウム2024「JOIFAオフィスアワード受賞社に聞く、オフィスから会社を変える」を開催しました。

シンポジウム開催の様子


司会はJOIFAオフィスイノベーション推進委員会委員長補佐の長浜崇史氏(プラス(株)経営管理本部 経営企画部 部長)。
JOIFAでは、時代背景の変化に合わせて継続的にオフィス改善に取り組んでいる団体や個人を表彰する「JOIFAオフィスアワード」を開催。今年で第3回を迎え、今回、第1回と第2回を受賞した2社を招いて同シンポジウムを開催したというものです。

今泉嘉久オフィスイノベーション推進委員会委員長が冒頭の挨拶

シンポジウムの冒頭、開会挨拶を
シンポジウムを企画したJOIFA副会長 オフィスイノベーション推進委員会委員長(プラス株式会社代表取締役会長)の今泉嘉久氏が行い、リアルとWeb合わせて約300名の参加者に感謝の言葉を述べた後、

開会挨拶を行う今泉氏


「何故このようなことを行うかについては、私たちの産業は長い間、どちらかというとオフィスの中の業務を支援する道具を売っていた会社であったような気がします。それをつくっておられる方、売っておられる方、企画する方、このような方々が我々の集合体ですが、どちらかというと業務支援がメインだったような気がします。ところがここにきて大きく変わってきたのは、それ以外のものをオフィスに求めるお客様が増えてきた。それはなぜだろうかと考えると、よく言われる失われた30年にリンクしていると私は思っています。なぜ日本は30年間もだめだったのだろうか。それよりその前に30年前はなぜ成功したのか。これが全部つながっていると思うのです。あの頃の日本というのはまだどちらかというと先進国というよりは中進国だったのですね。やはりコストダウンをさせること。生産効率を上げていくことがメインのことでそれが上手に成し遂げることができた会社が世界に冠たる企業になれた、と。ところがそれは私たちだけの道具ではなくて、実は将来は中国だって、インドだって皆さん同じように中進国から先進国に移っていく過程のなかで同じようなことをしていくわけですね。その時に我々が人件費が高くなったにもかかわらず、相も変わらず経済の生業のあり方を変えないで来た30年だったわけです。だから取られっぱなしになってしまったわけです。そこで我々も気が付いて、新しいコストダウンというよりは生産性を追いかける、何か新しいものを世の中に提供していく。付加価値提供型の産業に我々が変わっていかなければいけない、ということをお客様の方が気が付き始めた。それを変えるためには、社風を変えるためには何をしたらいいのだろうか。行きついたところがオフィスを変えるということがとても効果的な方法だということに皆さんが気が付き始めた。今日ご登壇いただく2社はそれをとっくに、先進的に会社を変えるための道具としてのオフィス。効率というよりは効果の方を狙う。生産性というよりは付加価値をどう上げていくかということに関心が強い会社だというふうに思います。ですからこれから自分たちも含めて今日のシンポジウムをお伺いすることで、自分たちの会社を変えていくことにとても役に立つお話が聞けるのではないかと思い期待をしております」などと述べました。

パネルディスカッションを開催

次にJOIFAオフィスアワード審査委員長 東京造形大学名誉教授 地主廣明氏をモデレーターにパネリストに
第1回JOIFAオフィスアワード最優秀賞を受賞した
株式会社日東システムテクノロジーズ 代表取締役 青木 稔氏
第2回同アワード最優秀賞を受賞した
株式会社船場EAST事業本部 営業企画Division1チーフプランナー 佐々木 和久氏
を招いてのパネルディスカッションが開催されました。

冒頭
地主氏は、自分はただいま東京造形大学名誉教授と紹介されたが片方で日本オフィス学会の副会長でもあるとして、この程学会から出版された書籍「オフィスから会社を変える」の紹介を行いました。

書籍の紹介をする地主氏

日東システムテクノロジーズ企業紹介

次に地主氏は、日東システムテクノロジーズの受賞の評価ポイントについて述べ、とりわけ地域社会あるいは顧客といったステークホルダーに対して開かれたインタラクティブなオフィスを実現しているという点が高く評価されたとしました。それらステークホルダーとの共生がなぜ企業として重要なのか。またそれに応えるオフィスとはいかなる場であるべきか、なども含め改めて受賞オフィスの内容を皆さんにプレゼンテーションしていただきたいとしました。

それに応え青木氏は、資料を使いながら、説明を行いました。
日東システムテクノロジーズはいわゆるIT企業。従業員は160名。今回紹介するオフィスには約140名が働いているとしています。
同社は、群馬県太田市にある企業で、いわゆるIT製品を日本全国に提供しているとし、メインは学校、専門学校、大学・短大、病院などだといいます。また太田氏にスバルがあるのでその製造業にも提供をしているとしています。移転前にはだいたい50名くらいが入る規模のオフィスに100名が入っていたといいます。トイレも会議室も駐車場も足らないという状態で、移転しないとどうしようもないという状況だったとしています。そこでプロジェクトを組み、社員皆で現状の課題を洗い出し進めていったといいます。そのなかで自分たちのオフィスコンセプトと出会ったとし、それが「コミュニケーションと集中」だったとしています。

日東システムテクノロジーズ 代表取締役 青木 稔氏(左)

「コミュニケーションと集中」

青木氏はコミュニケーションがいい状態とは付加価値の高いサービスをつくるためにオープンに話せて部門を超えて話せ、それを自由に柔軟に発想してチャレンジしていいよという風土がある状態をいうと位置付けているといいます。
もう一方の集中というのは、意思決定の早さ。着手からリリースまでのスピード。これを競合他社よりも早くできている状態が集中できているということだとしました。
この2つの要素は相反するもので、コミュニケーションは人とかかわっていくことでもあり、集中というのは自分の時間にフォーカスすることだったりするのだが、どちらも重要で、どちらも高次元で実現できている状態というのが素晴らしい状態であると定義したとしました。
これを実現するために同社はABW×自席という働き方をする、ということに決めたといいます。
具体的には、コミュニケーションについては、仕切りのないオープンな空間をつくり、会議室ではない多くのオープンミーティングのエリアを設け、開かれたコミュニケーションが高まるような工夫をしているといいます。
集中についてはソロワークブースを用意したりするのは当たり前だが、人によって選ぶ家具によって集中力が違うということもあって、硬いもの、柔らかいもの、高いもの、低いものなど集中できる家具を個人で選べるような提供、また、光が当たりすぎないようなライティングをしたりしているとしています。
また、ABWの考え方にプラスして自席を残しているといいます。一般的なIT企業はフリーアドレスで働く人が多いが群馬県では土地が広くとれるので贅沢にスペースを使えるといいます。そのため、共有、相談、偶発的な発見、困っているときの助け合いなど、自席でチームで集っている方がやりやすいとし、これを無くしたくなかったとしています。ただ、電話の声や隣のキーボード入力の音が気になるときは自ら席を外して働く働き方をしているとし、ABWと固定席両方の良いとこ取りをしているとし、コミュニケーションと集中を高めていこうとしたとしています。
ユニークな施設として、トレーニングジムがあったり、子供と一緒に働ける部屋があったり、仮眠室があったり、群馬県は車通勤なので個人の荷物を宅配ボックスで受け取って帰ることができるということも喜ばれているとしています。
新たなオフィスでは地域とのつながりということも強化したといいます。新オフィスをつくった時期がコロナ禍だったので、来客の減った地元のレストランからキッチンカーを出してもらい、それは今でも毎週来てもらっているとしています。また、中学生の職場体験の実施、大学生、専門学校生へ向けての課外授業、数百社に上るオフィス見学など、地域とのつながりも移転を機に大切にするようになったとしています。(ここで動画を上映))
移転の結果、残業時間が減り、IT化でコピー料金が減り、離職率も改善したといいます。とりわけ採用がうまくいくようになり、非常に多くの応募が来るようになったとしています。社員の不満もオフィス環境に関しては出なくなったとしています。そういう意味でオフィス移転の効果を感じているとしました。
さらにこのオフィス建築は一回きりで終わりではなく時代とともに新しい価値観を築いていきたいとしています。働く人とともにオフィスを進化させていける企業でありたいと思っているとしました。

船場企業紹介

次に地主氏は、船場EAST事業本部 営業企画Division1チーフプランナー 佐々木 和久氏を紹介。評価ポイントとして、同社はそうはいっていないが、地主氏は自己組織化的なオフィスを目指しているような感じがし、その辺が大きな評価を得たといいます。同社はそれを自己組織化とは言わずに「エシカルデザイン」と表現していて、エシカルという言葉は本来、倫理、道徳的なという意味であるが、それを拡張してサプライチェーン全体の幸福度を上げようという試みを目指していると聞いているとしました。具体的には同社は商業施設の設計・施工に携わっているのでそこから出た廃材等、を使って家具や環境、装置を作り上げている。その都度オフィスを改変、拡張していくという仕組みであると紹介しました。そのような自己組織化するオフィスすなわちオフィスを与えられたものにするのではなく、ユーザー自らがつくっていくことの意味、そしてその可能性等々、改めて紹介して欲しいとしました。

船場EAST事業本部 営業企画Division1チーフプランナー 佐々木 和久氏

「Good Ethical Company」

佐々木氏は、同社の企業紹介を行った後、同社は2022年12月期から2024年12月期までの中期経営計画で「エシカル」と「デジタル」の2つのテーマを発表し、これに基づいてビジョンとミッションを策定したといいます。
ビジョンは「Good Ethical Company」気のあうエシカルな仲間たちだといいます。ミッションは、「未来にやさしい空間を」を掲げているとしています。
同社はエシカルを柔らかく解釈して「おもいやり」とし、同社が考えるエシカルデザインとは、サプライチェーン全体で未来の空間を共創していくことだといいます。人の暮らしはもちろんその先にある地域社会や自然環境までも創造し、つくり方、使い方、捨て方までを含んだ環境をデザインすることというふうに定義しているとしています。
同社がエシカルデザインを以て目座すところはエシカルデザインを中心にサーキュラーエコノミー、D&I、などに到達していたいといいます。主要事業は内装業なので同社のみではこれらの達成は難しく異分野の共創パートナーと知恵とこれまで培ってきたものを組み合わせて到達することを目指すとしています。

資源循環型リノベーションを提唱

同社は、内装業のなかで何ができるかということで、資源循環型リノベーションを提唱。「Return」「Reuse」「Recycle」「Reselect」「Redesign」「Renovate」を駆使して資源循環型の事業モデルを構築しているといいます。
具体的には、「ゼロWaste」資源を無駄にしない、「エシカルマテリアル」素材から未来を再考する、「リプロダクト」未活用資源の可能性を拓く、だとしています。
「ゼロWaste」については、2021年から実装。現場で発生したごみを重点8品目の分別を現場で行っているといいます。それにより混合廃棄物を極力無くしてリサイクルにまわしているとしています。
「エシカルマテリアル」のギャラリー公開と技術の拡大では、地球環境に配慮された素材や商材を同社独自のキュレーションで東京、大阪、九州の支店のなかにギャラリーを展示しているとし、また、それを活かしてエシカルマテリアルを設計段階から選定を行っているとしています。
未活用資源の用途開発については、未利用材、端材にデザインの力を加えて新しい素材としてプロダクトアウトすることによって価値を見出してもらい市場に流すことにより、本来あるべき価値を根源であるところに還元する取り組みを行っているといいます。
同社の東京オフィスは2013年12月に東京都港区芝浦にあるシーバースというオフィスビルS館9階のワンフロアに入居。約610坪で在席人数は約200人。ABWの考えをベースにコーポレート部門のエリアはグループアドレス。それ以外のエリアはフリーアドレスを採用しているとしています。在宅勤務制度もあるのでコロナ禍以降本社全体での出社率は40~50%程度だとしています。
元々同社は1990年から2013年まで都内に自社ビルを所有していましたが、2013年に現在のオフィスビルに移転。2019年にフリーアドレスへ向けてのトライアルオフィスを導入。2021年に大規模なリニューアルを行いそこから小規模なアップデート、改装などを行って現在に至るといいます。今回JOIFAオフィスアワードで最優秀賞を受賞したのは2021年のリニューアル後のオフィスで、佐々木氏はその時に行ったことを説明しました。

「グッドエシカル」と「ハッカブルデザイン」

オフィスコンセプトは経営課題と外的環境、文化の時代、サステナビリティなどのトレンドのなか「エシカル」と「デジタル」を中計で掲げたといいます。そのかけ合わせによって出来上がったコンセプトが「グッドエシカル」「ハッカブルデザイン」だとしています。リニューアルのなかでのエシカルについては、あらゆるものに思いやりを向けることだといいます。その取り組みとして、既存オフィス什器や家具の約80%を転用したとしています。なるべく廃棄物を出さないとし、80%のものを元に戻したということだといいます。残りの20%についてもすべてを捨ててしまったのではなく、使える什器はリサイクル業者に買い取ってもらうなど、なるべく廃棄物を出さないようにしたとしています。
また、特長的なこととしてリサイクル什器を製作したといいます。工事現場や今回のリニューアルのなかで出た廃棄物を使って社内のデザイナーでコンペを行い、採択されたものをデザイナーも入り込んで手で什器としてつくり上げたとしています。これをコラボスペースというフリースペースに利用しているとしています。
2つ目のコンセプトの「ハッカブル」にていては、誰でも簡単に空間を改変できるのだといいます。フリーアドレスになって1人1個のキャビネットを廃止。見栄えはともかく機能的な部分を担保として椅子として使用するなどしたとしています。
同社は新オフィスを「SEMBA Good Ethical Office」と呼び、敢えて簡単なつくりにすることでレイアウト変更が容易にできる。空間に可変性を残して社員の個性を引き出すというオフィスだとしています。 (この後動画を上映)
東京のオフィス改装から、全国の支店にも広がり、エシカルに対する社員の意識が向上したといいます。結果的に社員自らがオフィスのあり方について考えることが増えたとしています。佐々木氏はこれも序章にすぎず激しい時代の変化にオフィスのあり方を常に考えないといけないとし、自分たち自身が自分事と考えて改変していかないといけないとしました。

パネルディスカッション 

Well-beingとWork engagement

企業紹介の後、キーワードを絞ってのパネルディスカッションが展開されました。
地主氏はABWのWはワーキングではなく本来の経緯からすると本来はワークプレイスで、人はどこでもいいのではなくここでなければだめとして「to Love」な場所、だといいます。そのうえで、発言者の2人にWell-beingが高まればWork engagementも高まるのかと問いました。

JOIFAオフィスアワード審査委員長 東京造形大学名誉教授 地主廣明氏


それに対して青木氏は、Work engagementが高いとオフィスや働き方に対する満足度が高い方が大きく、同社でも生き生きと働いて成果を出している人の方がそのような感じがするといいます。オフィスのデザインとか家具とか働く場所とかよりも、どちらかというと働き方の制度やルール、カルチャーや風土など、そういったところがベースにあったうえでそれをさらによくするための場所、ツールというものがオフィスなのではないかと感じることが多いとしました。評価制度を変えるだけで生き生きとする人も居たり、同社の8つの行動指針に沿った行動をしている人を朝礼で称賛するようなことをこの1年で始めたが、そういうことをすると働くことのコミットメントが上がっていき、もっとコミットしていこうという姿勢を持った人たちが、色々な働き方ができる場所で成果を出しやすくなるという流れが強いといいます。また、移転したことについてのWork engagementの高まりというものはあるとは思うとして、自分がこういうオフィスで働いていることを誇らしく思うとか会社のことを誇らしく思うということで、engagement自体の高まりはあったと思うとしました。

同じ質問に対して佐々木氏は、オフィスのリニューアル後のWork engagementの向上が見られたかということについて、それはあるとして、さらに制度上の問題もあるといいます。場所と制度の掛け合わせによってWork engagementが高まっているのではないかとしました。同社は在宅勤務制度や時差出勤制度などもあり、必ずしもオフィスの場に行かなければいけないというわけでもないので、オフィスが好きな人、オフィスで自身の仕事の業務効率が上がるという人はオフィスに来るし、to Loveな場所を見つけ出して大抵その人はそこにいるという現象が起こっているといいます。たまにしか来ない人はto Loveな場所があまりなく自宅などの方が自分の業務の効率がよくなって能力が発揮できている。それは会社の業績という指標でしかないが、コロナ禍は低迷した部分はあったものの、会社自体の業績は伸びてきているので経済の復調もあるとはいえ、皆の働きやすさが上がった結果として自分たちの働く場所が選択できるようになったのが結果的にオフィスに来て働く人たちのWork engagementはかなり高まっていると思うとしました。また、若い人やキャリア入社の人が入って来るので最初業務に慣れるまで、仕事がわからない間は誰かが傍にいた方が、その人自身が成長していくし、若手が多いチームの人は出社率が高く、そのチームの中で活躍していない人はあまりいないとし、そこは制度と掛け合わせであり、実際のWork engagementは高まっているとしました。

何故オフィス環境を良くしようとするのか

次に地主氏は、古くはホーソン研究に見るように過去の研究例としてオフィス環境は生産性に寄与しないという見方が多い。最近ではグーグルの「プロジェクトアリストテレス」いわゆる「心理的安全性」があるが、それらはいずれも人間関係であり、本当に環境は寄与しないのかというと多くの人はやっぱりあるという。心のなかで思っている。だからオフィスを変えていくし美しいオフィスをつくろうとするし、Well-beingのオフィスをやろうとする。しかし何故それをやるのかというと誰も答えられないという現実がある。それに答えるとしたらいかに答えるかと問いました。

青木氏は、難しい質問としながら、人間が何かしら不満を持っているときの生産性は悪いといいます。しかも人間の不満は尽きないもので、これの解決は経営者としての永遠の課題だとしました。
佐々木氏は、温度や湿度は自分だけではどうにもならないもののそのなかで自席を立ち自由に他の場所にいけることやリフレッシュに出ることも悪くない。結果的にそれが生産性向上につながるのであれば、オフィスを効率化していくのも手段ではないかとしました。

個と集団のパッケージング


続いて地主氏はパネリスト2者の企業紹介のなかで、青木氏の方は人間に注目しているのに比べ佐々木氏の方は環境に注目しているように思える。個と集団のパッケージングをいかに行うかを青木氏の場合はコンセプトにしているが、佐々木氏の方はどのようなかたちで実現していくのかと問いました。
それに対し佐々木氏は、個と集団について朝のオンラインミーティング、社内副業制度を挙げ、また仕事内容自体が営業、設計、制作など各部門の横断、チームワークが必要であり、それに対する意識があるといいます。さらに副業になると難易度が高まるのでICTを駆使するがそれだけでは立ち行かない部分は全員オフィスに集まるという形になっているといいます。可変性があるなかでそれを駆使していけばいいのではないかと答えました。

「ハッカブル」について

次に地主氏は「ハッカブル」について、自己拡張性、自ら場を改変することについて問いました。

青木氏は、Work engagementに対する調査を半年に1回社員に行って、そのなかで自分が働く場所や環境にどれだけ満足しているか、何があったらもっと良くなるかという意見を出してもらっているといいます。また、企画コンペを年に1回開催して、新規事業や会社のルールなどを企画してコンペするということを行っているとしました。こういった活動のなかでオフィス環境の改善などが結構上がってくるとし、上がってきたものを、青木氏を含め総務系の部門と検討し常に改変を行っているとしています。例えば仮眠室が足りないという意見があったことがあってそれは無理だったので皆にデスク枕をプレゼントするなどして対応をしたとしました。
佐々木氏は、可変性を持たせているエリアがコラボスペースというセキュリティがかかっていないエリアで、そこにある家具類は可動式でキャスターがついており、普段は来客スペース、社員の休憩スペースとして使用されているが、大人数での会議などにも都度使用されており、コロナ禍以後Work engagementを高める一環として、社内イベントなども行っているとしました。

オフィスは誰のものか 今後のオフィスはどうあるべきか

次のテーマとして地主氏は「オフィスは誰のものか」を掲げ、「与えられるオフィスから自らつくるオフィスへ」というイメージで、これが今回のシンポジウムのテーマでもあるといいます。「オフィスから会社を変える」という本からもそのキーワードが出ているとし、オフィスが会社を変えるとはどういうことなのかについて話を聞きたいとしました。


その前提としてのオフィスデザインを考えるとき、相反する2つのプログラムが内在しているといいます。それは「経営者から見た視点」と「実際にそこで働くワーカーとしての視点」であるといいます。地主氏は、乱暴な言い方になるが、と前置きをして、経営者から見た場合、オフィス環境というのは与えるものであり、ともすれば経済合理性が優先される。例えば日本のフリーアドレスはその動機付けとして、在席率が70%であれば、100人を70席のデスクでシェアしようという発想である。ちなみに元々のアメリカのノンテリトリアルオフィスは、偶発的な出会いがクリエイティビティやパフォーマンスを向上させるという理論に基づいて考えられているので、姿かたちは全く一緒なのだけれどもその動機付けと目的は全く違うところから出てきたというような視点もあるといいます。
これに対してユーザーから見た場合オフィスというのは与えられるものであった。個々のワーカーの要望が当然最低限に止まらざるを得ない。100人いたら100人全員の幸せをクリアしたならば当然そのワーカーが変わった場合新たな要望を聞かなければならないしその都度施設なり家具を用意しなければならない。経済合理性が全くないということになり、いかにして合理的に配分するかという前提に立ってしまうので、ユーザーからすると機能的な側からするとあまり機能的ではないといったような現状になるといいます。
しかしながら現在世界的にワーカーの自律性、autonomy(オートノミー)としての自律性、自律的な働き方が高まるなかで、オフィスというものは与えるものではなく、むしろ自らつくる、もしくは選択するという指向が高まっている。それがハッカブルという思考であるし、ABWという考え方になっていく。いま、皆がABWといっているのはそれが大前提になっている。皆が周知している証なのだといいます。つまり今まではパッケージとしてのオフィスを経営者が提供していればよかった。しかしこれからはワーカーが自らの意思で自らの思考でそれを改変したり拡張したり、つくりだしていくことが求められるということが考えられるだろう。言い換えれば経営者目線の出社させるオフィスからワーカー目線の出社したくなるオフィスへというパラダイムシフト、これが現在起こっているのだというふうに考えるといいます。つまり出社したくなるオフィスというのは単に美しいオフィスに止まらず、その企業の経営思想の根幹にも関わってくる重要な問題である。それが実現して初めてオフィスが会社を変える可能性があるともいえる。以上の視点から改めて今後のオフィス、将来的なオフィスはどうあるべきか。自社も含めてどう変わっていくべきか。どうすればオフィスが会社を変えられるかについて問いかけました。

AIの台頭がオフィスを変える

それに対し青木氏は、地主氏の発言を肯定したうえで、昨今労働力が不足しており、労働者から選ばれないと会社自体が生き残っていけない。単純に生産性の高いオフィスというだけではだめで、働く人に選ばれるオフィスになっていかない限りは、売り上げ、利益を伸ばしていくことはできない実情としてあるので、まさに働く人たちのためにその人たちが生産性良く働くためにまた不満なくために会社が考えなくてはいけない時代になっていくのかなと感じているといいます。ただ、一方で同社のような業界はAIが非常に進歩してきており、自分たちもだいぶAIに業務をやってもらっている。人がやれることが削減されてきている。GAFAMなんかもテレワークはなしで出社ねといっている。これは何を意味しているかというとGAFAMの企業たちは出社と強制したところで十分な労働力を確保しているからいえるのであって、従業員がいやだといって従業員が離れていったらテレワークを認めざるを得ないけれども、離れていくならどうぞ、代わりはいるのでというスタンスをGAFAMはとるようになってきているので、それはたぶんAIで業務効率化ができているのでそれほど人はいらないという時代になりつつあるともいえるといいます。働く人たちはそこの見極めが必要で、売り手市場の状態であればおそらく強気でいられるのだと思うが、もしAIが台頭してきた場合、特にオフィスで働いているホワイトカラーのワーカーの仕事がどう変わっていくのかによってはオフィスのあり方は大きく変わっていくだろうというのがIT企業から見たオフィスの考え方なのかなと思うとしました。
ディープラーニングでオフィスをデザイン
それに対し地主氏は青木氏のオフィスがAIを使ってディープラーニングでつくったことに言及しさらにそれについて尋ねました。

それについて青木氏は、自分たちは(オフィスづくりには)素人なのでコンサルタントと設計事務所が入っていないと述べ、同社と建築会社だけでつくったといいます。素人がやるには大変で、このデザインいいなと思うオフィスをPC上で収集していったといいます。そうすると何パターンかに分けられるといいます。そのパターンというのがこうだからこれは皆が好きなんだと定義づけられるとしました。私たちが何故これがいいのだろうと思っているのだろうとたくさん写真で学習して、結果その写真はこうだからいいのだ、例えば床が木目で壁がコンクリートで天井が暗くてこういう照明があるオフィスは皆がいいというようなことを覚えることができる。これを(AIが)繰り返していくとオフィスづくりもただ単にデザイナーがいいと思ってつくるだけではなく、ワーカー側がいいと思ったものを収集するとAIがこういうオフィスは素晴らしいという感じで出せるようになる。我々はそのようなイメージでオフィスづくりをしたと述べました。

AIに新しいオフィスができるか

地主氏はさらにそこを掘り下げて、その方法で本当に素晴らしいというか新規性がある新たなオフィスが、つまり明日のオフィスができるのかという疑問が常にあるとして、全く異質なプログラミングが創出できるのだろうか。有名なSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と同じで、「突拍子もない」つなぎが本当にAIに可能なのか。つまり我々がクリエイティブで進歩してきた過程のなかをみると、「突拍子もない」新結合をかつてはイノベーションと呼んでいた。イノベーションも意味が変わってきているが、もともとシュムペーターのいうイノベーションというものは新結合という意味で、全く異なるものが結合することによって誰も見たことのない新たな次元に進歩するということを繰り返して進化してきた。では今のやり方で全く新しい明日のオフィスができるのだろうかという疑問を持つが、それについてはどうかと問いました。

青木氏は、全くそのとおりで、いままで過去できたものから選んでつくるので全く新しいものは非常にできづらいといいます。どこかにあるようなものはできる。ただそれが最適であるものであったり、間違いないというものはAIがつくりやすいといいます。ある意味今後人間とAIとの切り分けの部分で、人間側がやはりそのクリエイティブなところを考えていくことが求められるだろう。そうではないものはAIにやらせた方が早いし安くできるだろう、ということになるのではないかと述べました。

出社したくなるオフィスについて

地主氏は、そこでまた出社したくなるオフィスについて佐々木氏にも問いかけました。

佐々木氏は、ワーカーという視点から極端なことをいうとおしゃれで快適なオフィスで働きたいとし、新卒でこの会社に入りたいなと思うオフィスがあればそこがちゃんと整備されているきれいなオフィスがいいというし、皆に自慢したくなるオフィスがいいといいます。同社のオフィスがそうかというと疑問を呈するところもあるとし、それはなぜかというと、(家具が)元のものが何だったとわかるくらいの原型をとどめている。これの元をただしてみると、経営からスタートしている。中計のエシカルというところから出てきた結果として、エシカルの改装に至った。最初はそれがよかったのか、ワーカー視点でみるとやはりきれいなオフィス、かっこいいオフィスで働きたかった。では既存のものを80%新しくしてそのオフィスをつくるべきだったのか、当時の自分はそう思っていたが、結果的に数年経って今のオフィスが好きか嫌いかといったらたぶん好きである。というのはエシカルという方向が良くいくのか悪くいくのか当時は自分では判断がつかなかったのだが、今、社員にとっていい方向にいっている。それが東京のオフィスの改装だけで終わらずに、地方の支店の改装もエシカル中心に行われている。今エシカルというものが当社にはなくてはならないものになった。したがって、社員に啓蒙していくとか、浸透させていくところの機能としては今のオフィスは十分機能しているとしました。
ではこの先オフィスはどうあるべきなのかと考えたときにはまた一歩先を行かなければならない。そこを考えるとなると自分たちの産業、内装や建設業は人手不足で困っているが、やはりクリエイティビティと今までにない発想でそこを超えていかないといけない。今までのやり方に固執するとか、自社だけのやり方に固執するそこを脱しないといけない。そこをたぶんAIの力や、共創パートナーなど、周りを巻き込んで殻を破って超えていかないといけないフェーズにきている。ただそういう人たちが集まってくる空間にしていかないといけないと思うので自分たちには働いている場でもあるが、そういったパートナーの人たち、あるいは新しい技術を活用できるような空間に変えていかなければならないと思っているとしました。

経済合理性との関係

それに対し地主氏は、経営者視点に立った時の経済合理性、ファシリティコストを考えた場合、自ら拡張していくという方法は合理的なのかと問いました。

佐々木氏は、部分改変的なところオープンエリアは改変されるが、それ以外は改変されない。そのエリアに限って改変されるところをみるとタイミングが訪れてそうしているのであり、そこだけを見ればそれほど大きな投資ではない。結果的にそこは合理性が保たれているといいます。その作業がなければないほうがいい。土地が広くて色々なエリアがたくさんあって経営視点で考えるとそんなにファシリティに対して投資する必要がないというところになってくると思われるので、その辺は社員数とオフィスの面積、可変できるエリアがバランスが取れているとしました。

ファシリティコストと人的投資について

続いて地主氏は一人当たりのファシリティコストについて佐々木氏に問いました。

佐々木氏は、数字は答えられないとしながらも、リニューアルをした時のコストだけを考えたら安かったものの、リニューアルを行うことによって生み出された自社の経済効果をどれだけ売り上げ、利益をたてられたかというところを視点に考えると結果プラスになっている。ただ継続して何年も今のかたちのままでうまくいくかというところも考えていかなければいけないのでそのタイミングが来た時には投資しないといけない。それがいつかという見極めが大事だといいます。

それを受けて地主氏は、同じ質問を青木氏にしたいとして、ファシリティコストとは一言でいえば環境・施設にお金をかけるということだが、人的資源という言い方、人に投資するという場合、どういうふうに投資するというのが一方である。そういったバランスを含めて、投資についての考え方を聞きたいとしました。

青木氏は、同社は自社ビルで買ってしまっているので最初の投資コストが大きく、減価償却していくのでファシリティコストが常にかかっているという感覚はないといいます。投資するタイミングでこれから会社をどれだけ大きくしていきたいからこれくらいのコストがかかるのはしょうがないとして、キャッシュを最初に出すという考え方であり、そのあとはどれだけ減らせるかであるので、どんどん太陽光を追加して電気代を削減して自社の発電量を賄うというようなことはやっているといいます。
一回つくってしまった自社ビルなので、正直この後社員が要望してくるものに対してコストというものがそんなにかからない。バーンと買ってもたかが数百から数千万で済んでしまうので、不満になりそうなものに対してはどんどん使っていく。あまりコストがかかっているという意識自体はないといいます。どちらかというと不満がたまっていく方がいやなのでその不満がたまらないようにオフィス環境は常に改善をかけていくというイメージで軽いものは定期的に軽くないものは半年に一回周期で行っているとしました。

リアルかリモートか リアルなオフィスの役割とは

次に地主氏は、リアルかリモートかということについてどのように考えるのか。今後のオフィスも含めて体面にするべきなのか、ハイブリッドなのか、ハイブリッドであればどちらのウエイトが高いのか、本社機能としてのセンターオフィス 、リアルなオフィスの役割とは何かを含めてお話をいただきたいとしました。

それに対し佐々木氏は、ハイブリッドがいまはベストだといいます。同社は内装業であり物理的な現場がどうしてもあるのでその現場無くしては事業が成り立たない。職種別で採用しているということもある。営業と設計と制作、制作というのは現場管理の人が現場に行かないと同社の仕事は成り立たないので、現場にもいくし、そのための作業を皆やります。そのためのファシリティの部分はないといけないし、最近ではipadに代わるとか代替はあるもののやはり図面でないと対応できないとか、AIとか産業ロボットで現場がすべて置き換わるかということはあと数年でできる話ではないと思うので、自分は営業でホワイトカラーなので選択の自由はあるといいます。
手がける事業のうち商業系以外の例えばIT系とかベンチャー系企業と対峙したとき企業としてのカラーが違うとか、働き方自体がそもそも違っているので、同社はそれぞれ両方に対峙することになる。長年の業績がある大きな企業とも若手の企業とも一緒にやることがある。今後は見えないところがあるので、対面を重視されてきた企業と今のところはお付き合いが多いとしました。
営業であるからフルリモートで行けるかといえばそうではない。やはりハイブリッドで、職種ごとに違うというところもある、現場が伴うという物理的な要因と自分たちが職種で固まってチームとして動いているという部分を考えてもオフィスは絶対にあるべきだが、そこでWell-beingの観点だとかWork engagementのところでもう少し働きやすさを向上させるという意味ではリモートワークを取り入れていくのがやり方として必要なのかなといいます。それは業種、業界にもよるし、企業の考え方で変わってくるとし、同社としてはハイブリッドで行くのがベストだとしました。
また、ハイブリッドのなかでのセンターオフィスの役割というのは一言でいうとどういうものかという問いに対しては、この場所に来たいなという場所がセンターオフィスであるべきで、いろいろなところに支店やレンタルオフィス、シェアオフィスもたくさんある。どこでも働ける。ただそこではなくて本社、センターオフィスに行きたいというふうになるにはそこに好きな場所、皆が好きな場所をつくっていかないといけないといいます。それがデザイン的であるべきなのかもしくはイベント的なものであるのかはわからないが、ただそこに人を集める装置みたいなものはあった方がセンターオフィスとしての役割はあるし、そこに集まったことによってできるクリエイティビティを高めるための、いままで関わったことのない人との接点や対話のようなことを行う場であるなどとしました。

地主氏はそれを出社させるオフィスではなく帰りたくなるようなオフィスに近いような気がしてきたとし、現場で働いている人が会社に帰っていくようなホームみたいなイメージを感じたとしました。

経営効率と労働需給 テクノロジーと地域差による施策の違い

青木氏は、所在地や業界によって違うとしながら、群馬県太田市という立地で全員車通勤であることでテレワークする人はほとんどいないといいます。
介護、育児、本人の病気、今日は雪が降る、などの理由があるときにテレワークができないときは不満が出るが、理由がなければ皆が集まっているところで仕事をした方がチームコミュニケーション的にも良いし、一人でやるのは明らかに生産性が上がるわけではないということになると思うとし、その意味からすると地域によって違う、 またIT企業なのでそういう言い方をするが、テクノロジーの進化によっても違うといいます。どうしても今のテクノロジーではオフィスで、チームで一体になって働いている以上のパフォーマンスを上げるのは厳しいと思うとし、パフォーマンスが上がるのは仕事ではなく作業であるといいます。作業はたぶんテレワークでパフォーマンスは上がるとし、仕事というもの、今までできなかったことをできるようにする、困難に立ち向かうもの、新たなものをつくりだしていくもの、付加価値が高いもの、というものはどうしてもチームでやっている方がパフォーマンスが高いので、そういう意味からすれば出社するのが絶対的にいいとは思うが、東京の人は電車乗るのはいやだよね、売り手市場だよね、全員出社だといったら皆辞めてしまうとなったらテレワークを取り入れざるを得なくなるので、会社の経営効率と従業員側の需給、労働の売り手市場と買い手市場との需給によって施策は変わってくる、それと地域が関係してきて一概には言えないが、同社においてはそのようなイメージであるとしました。

テレワークは個人側の理由

地主氏はそれを聞いて、アメリカで「オルタナティブオフィシング」、いわゆるテレワーク化がスタートしたときのきっかけの一つが1990年に改正されたアメリカの大気清浄化法で、排気ガスを出すので車通勤で出社するな、だから家で働けという動機付けがなされたのだが、今の話だと車出勤だからテレワークがないというのは歴史の矛盾を感じてしまったといいました。

青木氏は、群馬県民は日本で一番家庭に車を保有している県民であるとして、電車の1時間と車の1時間をストレス的にも全然違うといいます。そういう意味からしても同社の地域でいえばテレワークをしているよりは効率もいいし皆も嫌がらないとしました。

地主氏は普通であれば家で働こうと思うのではないかと問いますが、青木氏は家で働いた方がパフォーマンスが出るのであればいいよというが、それは無いよねというと従業員も納得するといいます。
さらに青木氏は、テレワークをするというのは個人側の理由であり、会社のパフォーマンスや業績が上がるために行っているのではなく、出社したくない故のテレワークだといいます。これを許さなくてはいけないのは何故かというと需給であり、労働者側が強ければそれを許さなければいけなくなるので、それを繰り返している会社は弱くなると思うと述べました。

「働き方改革」という「都市伝説」

それを受けて地主氏は、それはその通りで、コロナ禍に皆家で働けと言われたのだが、同時にあの時代「働き方改革」という「都市伝説」も現れてきて、実際我々は何をやってきたかというとあれは「働き方改革」ではなくて「働かせ方改革」に過ぎなかった。つまり、ワーカーというかユーザー自らが改革していない。その最たるものがコロナだから家を出るな、家で働けという強制労働。あれでは働き方改革にはならないし、実質的なテレワークにはならなかった。ある意味、先ほど、これからはハイブリッドになるというときに単純にハイブリッドになるだけではなく、改めて家で働くとはどういうことなのか。と述べたうえで、SOHOの時代、あるグラフィックデザイナーが独立し自宅マンションでそれを始めようとしたとき、ホームオフィスにしようとしたら他人が家に来てトイレを使用することがあるという理由で家族に反対され実現しなかったという実話を披露して、日本で本当にテレワークをしようとすると家そのものを変えていかないとおそらくできないという話で、これは単にオフィスを変えるだけではなく、家もセットで変えていかないとハイブリッドワークはできないと思うとし、それについてどう思うかと問いかけました。

オフィに行こうと思う一番のきっかけ

佐々木氏は、地主氏のいう通りだとし、いまオフィに行こうと思う一番のきっかけは、自宅勤務を行うための設備が十分に整っていない、そこにあるとし、であるからオフィスに行った方が業務の効率が格段に上がるので1週間のなかの割合でみてもオフィスに出社する比率の方が高いのだと思うといいます。


青木氏も、その通りだとし、テクノロジーが進んでいって出社してもしなくても同じパフォーマンスで働けるようになった場合の自宅環境を整えるということに今後はなっていくのだろうと思うので、そういった考え方が正しいのではないかと思うと述べました。

地主氏はそれを受けて、これからはJOIFAも自宅を含めた場づくりを提案しないといけないと思うと述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。

北尾知道JOIFAオフィスイノベーション推進委員会委員長代行が閉会の挨拶

閉会の挨拶をJOIFAオフィスイノベーション推進委員会委員長代行の北尾知道氏(プラス(株)常務取締役ファニチャーカンパニープレジデント)が行い登壇者並びにリアルとオンラインの参加者に感謝の言葉を述べた後、今回の感想として「改めてオフィスというのは経営に直結する重要なリソースだということを改めて感じました。今日お二人のお話のなかで経営者自らが高い問題意識をもって、働く人々に対してエンゲージメントをどうやって高めるのか、そしてwell-beingに感じるオフィスが必須の時代になったと改めて感じました。特に昨今出社したくなるオフィスというものがいかなるものなのか、あるいは自慢できるオフィスという言葉が出ましたけれども、そういったものをいかに構築するかということが課題なのかなと。そしてこれは働く側と経営側両方からいえることだと思いますが、人的資本経営を踏まえると、いかに優秀な人材を集める。そしてその人たちに気持ち良く働いてもらう。あるいはつなぎとめることができるということが重要なテーマになると感じました。また、今日の2社のオフィスが目指されているなかにありました地域との関係、あるいはエシカルへの配慮、SDGs等を考えますと、これからは様々な関係者の方々と共創、共に創るということをキーワードにオフィスというものを考えていかなければいけないなと思います。そしてやはり我々の考えているオフィスというものがいかにメディアとてして、働く人あるいは地域の人を含めたステークホルダーに色々なメッセージを伝えることができる場なのだということを感じました。本日のシンポジウムが皆様のお客様へのご提案あるいは皆様自らのオフィスの構築に少しでもお役に立てれば開催者として嬉しい限りでございます」などと述べ、第3回のJOIFAオフィスアワードの紹介も行った後、シンポジウムを締めくくりました。

情報交換会を開催

シンポジウム終了後、情報交換会が開催され、各自交流を深めました。

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