JOIFA、2025新春記念講演会と賀詞交歓会を開催
講演は原田幸明氏の「サーキュラーエコノミーで開く未来」
一般社団法人日本オフィス家具協会(JOIFA)は2025年1月9日(木)、東京都港区の赤坂インターシティコンファレンスで、2025年新春記念講演会・賀詞交歓会を開催しました。

第1部 新春記念講演会
第1部の新春記念講演会(Zoom併用)では、「サーキュラーエコノミーで開く未来」という演題で、(一社)サステイナビリティ技術設計機構代表理事・(国研)物質・材料研究機構名誉研究員 原田幸明 氏が講演を行いました。
司会進行はJOIFA専務理事・貫名英一氏。
冒頭
貫名専務理事が新年の挨拶を述べた後、「JOIFAでは2023年9月に政策委員会の中のサーキュラーエコノミー検討ワーキンググループを立ちあげ、皆で色々と勉強しながら業界がどのようにサーキュラーエコノミーを目指していくかということを議論してまいりました。そのなかでの最近の話題はそもそもこれは何のために行わなくてはならないのか、これを行う大義はどこにあるのか、細かく議論すればするほど気になりだしまして、今日はそのようなお話をしていただこうと思います」と述べ、講師である原田氏の紹介を行いました。

原田氏は東京大学で金属工学の博士課程終了後、科学技術庁の金属材料技術研究所に入所、その後エコマテリアル研究センター長などを歴任され、ライフサイクルアセスメントやサーキュラーエコノミーに関しての第一人者だといいます。
サーキュラーエコノミーで開く未来
製造業を守るのではなく製造業がいかに変わるか
原田氏は、記念講演において、サーキュラーエコノミーはリサイクルではなく、リサイクルだと勘違いされていることが今の一番の問題で、物が売れなくなった時代に新しいビジネスをどうつくっていくのかということがサーキュラーエコノミーの一番の本質だといいます。そのなかで物を循環させるということがあるのだとしています。ところが日本はリサイクル社会を進めすぎたもので、サーキュラーエコノミーといえば循環経済と訳す人がいて、循環経済といった瞬間にリサイクルの話が始まってしまうといいます。そこまでになるとどうしても話が小さくなるのであり、大きなビジネスの転換をしなくてはならないとしました。
サーキュラーエコノミーにしろ、リサイクル、カーボンニュートラル、最近はネーチャーポジティブなどという言葉が多く出てきて、会社のなかで一体どうして取り組めばいいのだろう。もちろん経済活性化も必要であるし、リサイクルもやらなくてはいけない、カーボンニュートラルもやらなくてはいけない、となってくると、これはまた新しいトリレンマではないか、と実際に多くの方がとらえられているのではないかといいます。サーキュラーエコノミーを本質的に言うと、これ全体を解決できるような方向というものを探していこうというのが基本的な考え方であり、それは何かというと私たちのビジネスのあり方自体を考えていく、テイク、メイク、ディスポーザルの従来型のリニアな経済、すなわち取って、つくって、捨てるこれが直線的に流れていく。そこから脱却した生産と消費の新しいモデルをつくる、それがサーキュラーエコノミーの考え方であり、一番先進的に進んでいる欧州で一番使われている表現である、などとしました。そして、サービス業に比べ、収益性が伸びなくなった製造業について、製造業を守るのではなく製造業がいかに変わるかということ。製造できる技術の強みを持った製造業がいかに変わるかということ。そこまで考えて物の基盤をつくっていくということ。社会がサービス主体の流れだとしても物は必ず必要である。事務機器は絶対に必要で、その物質基盤を考えていくうえでそのつくりかたの上で儲ける、ビジネスにしていく、ニーズに応える。そういう意味で循環、サーキュラーという言葉が出てくる。物売りからサービスへの転換という社会的な流れのなかで、物の役割でその改善を訴えていく。そのためにサーキュラーという言葉がついているとしました。

そこで、今までの売り切りではなく、消費者を使用者としてとらえ、そこまで入り込む。メンテやアップグレード、再生使用などの部分で経済を回していく。新たな使用者ベースの産業活性のためのカスタマイズ経済を考えていくべきだといいます。そういうことがサーキュラーエコノミー。物質は少なく効率的に使う技術で製造業者は活路を見出すことができてくるとしました。例えとして、PCのサードパーティのリファービッシュを上げ、その現状と課題を説明し新しい循環経済の可能性を提案ました。
スモールミディアムエンタープライズを結びつける
また、経済的価値、持続可能性、ユーザー価値の部分で資源は少なく使いGDPやバリューを上げるために頭を使うことの重要性を述べ、資源効率を挙げ、それを上げるための工夫について、物質フローを減らすこと、長寿命化、シェアリング、リユース、機能拡張、リパーパスなどを挙げ、「残存価値」「プラットフォーミング」「サービサイジング」の3つについて述べました。

「残存価値」については自動車などの例。単なる廃棄からシェアリングまでの思考の過程、など。そのほかプラスチック、クラウドホスティング、照明、建築、農機具、工場器具、太陽光発電、プリンター、ファッションなどの分野での例を挙げました。
「プラットフォーミング」については、GAFA。その他、オンデマンド印刷、メルカリ、スマートニュース、ペイペイなどの決済サービス、など。また、クラウドファンディングにおけるオープンイノベーションの広がりについて述べました。
また、失敗例として日本におけるペットボトルのリサイクル。
そこで重要になってくるのが
「サービサイジング」で、1997年に原田氏は「リサイクルの究極の答えは消費者に物を与えないことである」を提唱したといいます。売り切り経済ではなくサービスプロバイダーがサービスを提供し消費者は充足感を得ればいいのであり、物はサービスプロバイダーの方で回せばよく、それにより消費者は使い終わったものの廃棄から解放されるとしています。当時の成功例はビール瓶と写ルンです(フィルム付きカメラ)、だといいます。現在ではトヨタ自動車のKINTOを挙げました。その際ポイントになるのは製造業者がその面倒を見れるのか、ということ。ここが日本の製造業の課題で、ややもすると「いいものをつくればいいんだろう」ということになる。原田氏はここにおける決断を促します。それについて欧州には「スモールミディアムエンタープライズ政策」というものがあるといいます。スモールミディアムエンタープライズとは日本ではモノづくりを支える中小企業のことで、欧州が見ているものはつくった物を消費者に対して展開してくれるスモールビジネスエンタープライズだとしています。この部分を使いBtoCの循環は、カスタマイズ、シェアリング、リース、サブスクの方であり、そこに対していい物を提供していくのが製造者の役割であり、BtoBの循環を管理していく。今の製造者は何をしなくてはならないかというと、BtoCの部分をお友達として増やしていくこと。場合によっては今までモノづくりの底辺に位置する人たちは唯一技術を持っている。この技術を持ってBtoCの部分に参入する。すなわち昔やっていたナショナル電気の修理屋さんのようなことだといいます。技術を持ちしかも販売もやり、もしかするとものづくりをしているところはこういったものに変わりつつある。ましてや自分たちのつくったものに執着がある。この人たちを周りにおいてその人たちを結びつけるようなビジネスをつくっていくというところが大きなポイントになっていくとしました。
まずある技術を使ったオープンイノベーション
今までの売り切り経済はブランドメーカーがあり、その下に下請けメーカーがあり、色々な人が関わっていた。消費者は物質の管理を任されていた。これからはBtoCのサービスプロバイダーをいかにつくっていくかが大きなカギになるといいます。サービスプロバイダーの中には物質の管理をする人もいる。家具のリサイクルを積極的に扱えるような、プラスチックに強いリサイクラーがこの部分に入る。こういう人たちを周りにおけるような経済をつくれるかどうかが大きなカギになるということです。今必要なのは新しい技術をどう生み出すかということではなく、今ある技術をどう使い回すかということで、そういう人たちをどう周りに持ってくるかということ。それにおいて日本が最も役割を果たした例として原田氏はQRコードを挙げました。QRコードはデンソーがつくった技術ですが結局デンソーだけでは役に立たなかった。デンソーが賢かったのは絶対化けると信じて特許を全部公開したこと。そうすることでアフリカやアメリカの人たちが決済でどんどん使って大発展した。ポイントはこの技術の開発をやったことだけでなく問題はその技術を使う技術が開発されてきたこと。これがいま最も求められているし、この部分が早く動く環境がインターネットなどでできている。逆に言うと新しい技術開発は待っていられない。まず在る技術を使う人たちをどれだけ持って来れるか、ここにオープンイノベーション、プラットフォーミングというところのカギが出てくるとしました。
そこでサーキュラーエコノミー。売れればいいというビジネスも行き詰ってきたので、売った後の使用者のニーズをビジネスで取り出す。使用後はどうする、劣化を抑えたい、使い勝手を良くしたい、色々な部分をどうやってビジネスに取り込むか。それを自社だけではなくて、周りにおいていままで吸い上げるためだった下請けから広げる下請けへの移行。そういった意味でのスモールミディアムエンタープライズをつくっていけるような体制をつくっていくことが求められているといいます。
また原田氏は、LCA (ライフサイクルアセスメント:life-cycle assessment)について誰がやってもLCAの答えが出せることについて言及しこれらを使って新しいビジネスモデルを生み出してほしいとしました。
「推し」と「ブリコラージュ」がポイント
さらに原田氏は、消費者に渡してからが勝負で、この部分は我々の経済のなかでうまく取り込んでいない、この部分をどうやってうまく変えていくのかとして、ついついバリューチェーンやサプライチェーンなどといって供給体制から考えがちであるがそうではなく、使用者が価値を考えたときにどうなのかと考えてみるべきだとし、その例としてスイスのランニングシューズメーカー「On社」のサービサイジングの例を挙げました。その成功の要因は「推し」だといいます。この靴が好きだということがシェアリングでユーザーはお金を払うのだとしました。どうやって儲けるというより、いいものを提供する、何かアピールできることがシステムの中にある。あくまで特例とはいえ、そういうところまで目を止めなければいけないといいます。
また、自分が使用している海外製の椅子についても使用感の満足を共有したいということ。最近の服のリユースではもったいないからではなくつくるのが楽しい。人が着ていたものを自分流に加工してみるということ。それですべて経済がうまくいくわけでもないが、フランス語の「ブリコラージュ」いわゆる寄せ集め組み合わせて自分の必要なものをつくっていくことが重要だといいます。(その反対は「エンジニアリング」でエンジニアが設計図をつくりそこに道具が使われて設計図通りにつくられる)このブリコラージュの要素が服のリユースのなかに入っている。そういうところを拾い上げてみることも必要なのではないか。それもブランドメーカーが全力でやってはいけない。こういうところもある、そういうところもあるというところを周りにおいておき、そういうアプローチをする人たちに物を出していく。そういう構造をつくっていけば物が正しくできる。最終的にはブランドメーカーを包むスモールミディアムエンタープライズたちが使用者に対してどういうサービスが必要なのかということを実現していく。そういうことをやりながら新たなビジネスを探していくことが求められているのではないかとしました。
昔は物を与えられればそれで幸せだった。それが限界にきて、それを使ったサービスをいかにしていくかというところに今から変わっていく。サービスプロバイダーの部分をどれだけ周りに置けるか。逆にいうとそういうところと結びつくという分け方が今後の日本の経済の姿としてあるのではないかなどと述べました。
第2部 新年挨拶
第2部は新年挨拶(Zoom併用)、第3部は賀詞交歓会が行われました。
第2部と第3部の司会進行はJOIFA事務局長の内田道一氏。
中村会長が新年の挨拶
第2部の新年挨拶においては
日本オフィス家具協会 会長の中村雅行 氏(オカムラ代表取締役社長執行役員)が行いました。
中村氏は、新年の挨拶を述べた後、
「いよいよ2025年巳年がスタートいたしました。今年は巳年で、蛇をみると縁起がいいとよくいいます。古来日本では蛇は商売の神様といわれておりまして、仏様を守る七福神の一人である弁財天の化身だというのが蛇だそうでございます。そういうことから金運に結び付く生き物だといわれておりますが、蛇は脱皮を繰り返すので無限にお金が増えるとか、巳年の巳(み)といいますから実入りがいいというような非常に縁起のいい生き物だといわれております。また、神社にいきますとよく注連縄(しめなわ)が飾られていますが、出雲大社などこんなに大きな注連縄がかかっておりますが、元来生命力が強い蛇の雄と雌が絡まっている姿、それにしめといいまして雷のかたちの短冊がかかっておりまして、雨乞いといいますが、雨が降って五穀豊穣になる。ですから子孫繁栄とか五穀豊穣を表している。ともあれ、巳年というのは私たち商売をする者たちにとってはとても縁起のいいチャンスのある年ではないかと思います。

ナレッジブローカーの必要性
去年一年間、主要各国で行われた総選挙では、全部政権与党が敗れました。日本もそうですが、アメリカも今度トランプ氏が20日の日に就任されるようですが、トランプ氏はアメリカを再び偉大な国へと言って保護主義に奔りそうですが、アメリカが今トランプ氏がいっているような関税をかけると世界経済のGDPが0.8%下がるといわれています。本当はグローバリゼーションや自由貿易が逆回転し始めたなどと書かれています。こういう時代、これから何が起こってもおかしくないような時代が来そうで、2025年はいろいろなことが起こりそうな感じがします。それを乗り切る知恵というものが今年必要なのではないかと思います。英語の単語にknowledge broker(ナレッジブローカー)という言葉があります。訳すと組織を超えて知を仲介する人たち、という意味ですが、まさしくこれが知を探索して仲介するということが、今まで以上に必要な年になってきたのではないかと思います。この知の探索と仲介をすることをオフィスでやってもらいたいと考えている人たちがいます。経営者の中のアメリカのシリコンバレーにいるCEOと呼ばれている人たちですが、新聞で記事になったように週に5日オフィスに出社すべきだと主張している人たちであります。

業界を挙げ近未来へ向けて需要を創造
先日雑誌を読んでおりましたら、ハーバード大学の白熱教室というものがありますが、そこの教室のマイケル・サンデル氏という教授が今回の大統領選挙を振り返って、SNSが時代を変える大きなファクターになったことは確かだ。しかしそれ以上に重要なのが、人と人とのコミュニケーションによってつくられる時代の変化である、と述べているというようなことが書いてありました。今、経営者自らコミュニケーションを大切にして、オフィスを知の仲介の場所に変えるためのオフィスの改装投資に旗を振り始めているということが、私たち家具業界にとってはとても力強いことだと思います。また最近の傾向の一つに若手ですとか中堅の人たちに新しいオフィスのコンセプトをつくれということが徐々に表れてきました。以前もそういう流れはあったのですが、ここにきて大手企業がそういうことを一生懸命やるようになってきた。つまりいままでの規定概念、既成概念でオフィスをつくるのではなくて、若い人たちが不連続ななかで新しいものをつくっていく時代になったのだと、そういうことが必要なのだ、という意思の表れだと思います。そういう変化が求められる時こそ、新しいシステムとか新しい価値、そういうものが受け入れられるチャンスだと思います。業界を挙げて近未来に向けて新しいコンセプトの製品ですとかシステムを提案して需要をつくっていきたいと思います。
先日新聞に全日空ホールディングスが2027年に空飛ぶ車を運行すると書いてありました。いまからたった2年後です。成田から羽田まで10分で結ぶという乗り合いのタクシーが出現する時になりました。これから本当に近未来といいますか新しい時代が始まるのではないかなという気がいたします。私たちは社会のインフラである働く場を提供するオフィス家具協会であるという自負がありますけれども、今年が新たな時代の起点になることを祈念するとともに本日ここにご参集の会社のご繁栄と皆様のご健勝をお祈りして私の新年の挨拶とさせていいただきます」などと述べました。
来賓紹介
続いて来賓の紹介が行われました。
紹介された来賓は以下のとおりです。
経済産業省製造産業局生活製品課 企画官 伊藤裕美氏
経済産業省製造産業局生活製品課 係員 角谷一真氏
日本オフィス学会 会長 松岡利昌氏
一般社団法人ニューオフィス推進協会 専務理事 事務局長 竹森邦彦氏
公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏
一般社団法人日本家具産業振興会 専務理事 高橋清司氏
デザインオフィスf&f 代表 藤村盛造氏
SOMPOリスクマネジメント(株) 取締役常務執行役員 木田浩氏
SOMPOリスクマネジメント(株) 部長代理 鈴木健一郎氏
ケルンメッセ(株) 代表取締役社長 高木誠氏
ケルンメッセ(株) プロジェクトディレクター 松岡靖之氏
ケルンメッセ(株) シニアマーコムマネージャー 丹野牧子氏
監査法人ユウワット会計社 代表社員 木地健介氏
(株)日本経済社 執行役員 深澤博氏
(株)日本経済社 次長 鈴木亮氏
来賓挨拶
来賓挨拶を経済産業省製造産業局生活製品課 企画官 伊藤 裕美 氏が行いました。
伊藤氏は
「今日このように盛会な賀詞交歓会を開催できることを非常に喜ばしく思っております。振り返りますと昨年は、元日に起きた能登の震災、また、台風や豪雨など多くの予期せぬ自然災害というのに見舞われた1年でございました、今なお被災されて苦しんでいらっしゃる方がおられることに心よりお見舞いを申し上げたいと思います。また、世界情勢に目を向けますと、我が国の経済と社会の安定をいかに守り抜くかを問われた1年でもありました。中東やウクライナでは、いまだ戦闘が続いております。また、アメリカではトランプ大統領が新しく誕生し、国際情勢というものが刻一刻と引き続き変化をしております。方や国内に目を向けますと、円安、人口減少、30年以上続くデフレ、地政学リスクの高まり、国際競争力にもまだまだ課題があり、多くのやるべきことが待っているという状況です。そのような中でも産業政策面では積極的な国内投資が芽を吹き始めました。実に30年ぶりとなる水準の賃金の値上げ。市場最高水準の株価など、大変大きな節目を迎えた1年であったかと思います。方や足元の物価高の影響を受けて、消費というものは引き続き力強さを欠いています。賃上げが進んでいますが地域や業態によっては条件幅にばらつきもございます。長きにわたるコストカット型の経済から賃上げと投資が牽引する成長型経済への転換を確かなものとするために我々経済を引き続き全力で取り組んでまいります。そしてその経済を明るくしていくうえで、オフィスというのは非常に重要な根幹を担う部分だと認識しております。

素晴らしいワークプレイスで我が国を活性化
オフィス家具業界の現況に目を向けますと、コロナ禍が収束してオフィスに人が戻ってきている。そして新しいオフィスのあり方が今まさしく問われているのではないかと思います。新しい働き方を取り入れたオフィスの改装ですとか移転の旺盛な需要を背景に好調を維持していただいております。オフィス家具を含めた関連製品の開発や企画にとどまらず新しい働き方に対応したオフィス空間の設計やICTの活用などまだまだこれから素晴らしいワークプレイスを生み出し、我が国の活性化、そして生産性の向上につなげていただけますよう皆様のご活躍を心より期待しております。
そして昨年このオフィス家具協会様にご対応いただいた2つのトピックについても少しご紹介をさせてください。
まず、昨年6月に開催されましたオルガテック東京2024でございます。こちら13の国と地域から163社の出展があり、1昨年度の1.5倍である約4万人の来場者を得たと伺っております。皆様のご活躍がこのような我が国のオフィス家具の魅力のPRにつながっている成果だと思います。引き続きのお取組みをぜひよろしくお願いいたします。
また、同じく6月に日本オフィス家具協会の事務局様が中心となり、論議の適正な価格転嫁の推進に向けた自主行動計画の策定、また会員向けの説明動画の作成にもご尽力いただきました。オフィス家具業界全体として、このような積極的な価格移転の普及に努め、業界内外からのクリーンなイメージを向上させるということが引き続き重要になっていくと思います。
最後にいよいよ本年4月13日から大阪関西万博が開催されます。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとし未来社会の実験場として最先端分野を国内外へ発信、社会実装する素晴らしい機会となります。オフィス家具業界の皆様におかれましても皆様のお取り組みの国内外への発信、製品のPRなどさらなる業界の発展に向けた大変貴重な機会としてご活用いただきたく存じます。経済産業省としても開催に至るまでの8年間の努力を結実させその成功に向けて全力で取り組んでまいります。経済界の皆様に多大なるご協力をいただいているところでございますが皆様とともにこの一大国際イベントを盛り上げていきたいと思います。本日この場にいらっしゃいます皆様のご健勝とご多幸をお祈りいたしまして私のご挨拶とさせていただきます」などと述べました。
第3部 賀詞交歓会
黒田副会長が乾杯の発声
引き続き第3部として会場参加者のみの賀詞交換会が行われ、乾杯の発声を日本オフィス家具協会副会長の黒田章裕氏(コクヨ会長)が行いました。
黒田氏は乾杯に先立ち挨拶として
「皆様のご挨拶をお聞きしましても我々チャレンジする課題というのはたくさんあると考えております。私が皆様の前に立つとついつい万博の話になるのはお許しをいただきたいのですが、自分が2019年に万博誘致メンバーの一人としてパリに行って1週間パリ在の大使館を回って日本への投票をお願いしました。それなりに少し役に立ったかなと思い帰ってきて安倍総理からご苦労様ということで主たるメンバーが10名ほど呼ばれまして握手をさせてもらったのですが、ロシアとアゼルバイジャンにこれだけの差をつけて勝ったということで、大変喜んでおられました。

誘致の時に万博の事務局の方にお話しを聞きましたところ、実は万博は1970年の日本万博6400万人の来場があって以来ずっと来場者が減っている。そんなことないでしょう。上海万博1億人といっていましたよねと申し上げましたら、あれは正確ではない。もしもあの数字が正確であっても流れは確実に後退しています。このままいくと年間2000万人くらいしか来ない万博の継続は無理だと。なぜ無理だというとそれぞれの国のお国自慢、その時の為政者がいわば銅像を建てるようなもので開いてきた万博がいかに世界から魅力がなくなったかということだということでありました。
日本の万博は大きなターニングポイント
本年日本が「いのち輝く未来社会のデザイン」といって全く形のないもの、銅像ではなく、いわば日本の社会課題、これを持ち込んで万博を開きたいということで、我々としては表立ってはいえないけれどもぜひ日本に勝ってほしい、ここで万博の方向を変えてほしいと。多くの国々がこれから日本と同じ跡に続くはずだと。社会保障費が増え国の予算の中で高齢化していく人のため、国民のためにお金を使っていかなくてはならないという時代を前に、日本がその解決策を出してくれるというのは万博のもともとの狙いからすると大変素晴らしいことだということで今回その万博が開かれるということであります。
以前、我々日本の経済は世界の14%のGDPを確保しておりました。今は4%です。他が増えたということでありますが、アジアは少なくとも14倍。その間にGDPのスケールを増やしています。ということで我々が頑張った以上に我々の周りは頑張っている。スタートのレベルが違うとはいうものの日本がこれからある意味大きな曲がり角から、万博の来場者を増やしていくように、成長軌道に変わっていく、大きなターニングポイントにしたいということで万博が開かれます。ということで、今、関西では「行くぞ!万博」でやっているのですが、ぜひ大勢の皆様方が万博へ足を運んで見ていただきたい。ところが以前の万博と違って今回はスケールが、建物もそうですが、中も内容が濃い(全部がそうだとは思いませんが)のでなかなか中に入って見る機会が少ない。行くといっても中に入ってどのパビリオンも入れないというところがあるので、この辺りは皆様一生懸命工夫して多くのパビリオンを見ていただきたいと思います。万博に乾杯とは言いませんが、皆様と声を合わせて今年一年のご健康と事業の発展を祈念いたしまして盃を上げたいと思います」などと述べ乾杯の発声を行いました。


大久保副会長が中締めの挨拶
和やかな歓談の後、中締めを日本オフィス家具協会副会長の大久保昇氏(内田洋行代表取締役社長)が行いました。
大久保氏は
「(先ほど蛇が絡まっているというお話のあった)注連縄のことですが、私は今宮崎県のみやざき林業大学校の名誉校長をやっておりまして、年に何度も訪れるのですが、このような場所(壇上を指して)にも注連縄が張ってあります。いつも張っているそうで、注連縄のなかに神様がいるということだそうです。しかし神様は普通にしていても降りてこないので、皆でわーつと踊っていると神様が上から何をやっているのかと思って、皆が踊っていたら(気が付いたら)横で一緒に踊っているのだそうです。蛇が締めている中で踊ったらよい巳年になるのではないかと思います。

今年もこの会に参加させていただき、前会長から色々な形でJOIFAが発展をさせていただき、現在の中村会長になられてさらにモダンになったかなと思います。新年であることもありますが雰囲気もいいですね。どんどんと蛇が今度は龍になって昇ってくれるといいと思いますが、記念講演も聴いておりましたが、なかなかサービスでビジネスを行うのは我々の業界で行うことについてどうすればいいかと思いますが、最後にやはりハッピーにしなくてはいけない。ぜひ皆様、この業界を楽しくするために会社の中に注連縄を張っていただきまして、踊りましょう。踊りましたら神様もお客様も来て楽しくなる。
オフィス家具は人をワクワクさせる
また、私は色々な方々にお話をしていますが、元々ITの方をやっておりまして、オフィス家具は社長になってから担当したのですが、ただ、何十年も前にある学校にコンピューターを納入しました。当時、昭和60年頃、PCを100台入れるということはあまりなかったことなのですが、その時に一番受けたのが当時のOAデスク、新しいタイプの机が出た。それが本当に先生が全員集まって来られて、皆さんこの机がいい、と。別にコンピューターが入ったといって、オタクの人は別にして、それがどうしたという感じですが、家具って(人を)ワクワクさせるんだなというその時の記憶がものすごく残っています。
ですから皆様、会社に戻られましたら机の上に注連縄を張ってその上で踊って神様を呼ぶ。
そしてお客様をお呼びして、今年一年皆様と一緒に良い年にしたいと思います」などと述べ、三本締めで会を締めました。

