イトーキ、関東工場のオフィスエリアを大規模リニューアル
“働きたくなる工場”へ。
2025年9月11日(木)同工場において報道関係者向けオフィスエリア見学&取材会を開催

左から 関東⽣産企画部 松村 真奈 氏、
ワークスタイルデザイン統括部 クリエイティブディレクター 加藤 俊宏 氏
関東⼯場 ⼯場⻑ ⻄槇 馨 氏
関東⽣産企画部 係⻑ 若林 修治 氏

イトーキは、2025年9月11日(木)、千葉県千葉市にある関東工場のオフィスエリアを全面リニューアルしました。
同取り組みは、製造拠点における人的資本経営を空間から実践する先進事例として、働く一人ひとりの能力と意欲を引き出し、組織全体のエンゲージメントと生産性の向上をめざしているものだといいます。
2025年9月11日(木)には、千葉県千葉市にある同社関東工場において報道関係者向けオフィスエリア見学&取材会を開催しました。
当日のプレゼンターは
⽣産本部 関東⼯場 ⼯場⻑ ⻄槇 馨 氏
⽣産本部 ⽣産統括部 関東⽣産企画部 係⻑ 若林 修治 氏
ワークスタイルデザイン統括部 ワークスタイルデザインラボ クリエイティブチーム クリエイティブディレクター 加藤 俊宏 氏
オフィスリニューアルの概要説明
見学&取材会ではオフィスリニューアルの概要説明が行われました。
概要説明の冒頭、⽣産本部 関東⼯場 ⼯場⻑ ⻄槇 馨 氏が事業の全体像と関東工場の紹介そして今回のリニューアルビジョンについて説明しました。

イトーキは『明日の「働く」を、デザインする。』をミッションステートメントとして事業を展開。
事業内容は大きく分類するとワークプレイス事業部、設備機器事業部、パブリック事業部。特に最近はワークプレイス事業のなかでも、オフィス製品の単体の製品で売れるのではなく空間デザインや内装工事の需要が高まってきているといいます。また、新築よりもリニューアルの案件が非常に増加している状況だとしています。
関東工場の紹介
関東工場の紹介では以下のように説明しました。
生産開始は2008年12月、稼働して約17年。所在地は千葉県千葉市の土気緑の森工業団地にあるといいます。
敷地面積は約7万2千平米で延床面積が約2万1千平米。
工場は事務所と製造現場に分かれており、従業員は事務所で約60名、製造現場の方で約70名、合計で130名の体制で生産を行っているといいます。
同工場で生産している製品は、大きく分類して建材製品とオフィス製品。
建材製品では主にスチールパーティション、ガラスパーティション。オフィス製品の方はブースやローパーティションを生産しているといいます。
オフィス製品のなかではいま特にフルクローズドブースといわれる「ADDCELL(アドセル)」が非常に好調で、同工場のいわゆる売れ筋製品となっているといいます。特に今年からは「ADDCELL Hexa(アドセルヘキサ)」という六角形の新製品も発売しているとしました。
⼈的資本経営と“デザイン”の⼒

近年、多くの企業が人財獲得の課題を抱えているとし、そのような状況のなかでオフィスへの設備投資、投資効果として、離職率の低減であったり、エンゲージメントが向上したり、というような変化が起こっていることがわかるといいます。また、オフィス投資の意識変化としても、日本橋の本社オフィスでは見学者が3倍になっていることを見ても、ほかの企業もオフィス投資への変化が起こっているとしました。
特に地方の中小企業を中心に需要が高まっているとし、より課題が深刻化している製造業にこそ空間投資から働き方を変えることが今求められているといいます。
関東工場はその先進事例として多くの企業のモデルとなるようにしていきたいとしました。
リニューアルに込めた関東⼯場のビジョン~「働きたくなる工場」へ~
オフィスリニューアルに込めた関東工場の5つのビジョンとして
「働きたくなる工場」へ
①「働きやすさ」を徹底追求
現場で働く社員にとって本当に使いやすいオフィスを実現
②常に進化し続ける仕組み
完成形で終わらず、⽇々の業務や声を反映して変化できるオフィスへ
③⼯場ならではの価値発信
成功も失敗も含めて学びを共有し、お客様にリアルな魅⼒を伝える
④品質と信頼の体感
試験室・⾃動ライン・職⼈技を⾒学いただき、品質への姿勢を⽰す
⑤ESとCSの両⽴をめざす拠点
社員満⾜と顧客満⾜を⾼めるモデル⼯場として発信を継続
を挙げました。
この5つのビジョンを進めることにより従業員全員がずっとここで働きたい、また、新卒、転職者の人がここの工場で働きたくなるような工場にしていきたい、などと述べました。
プロジェクトについて
続いて、
⽣産本部 ⽣産統括部 関東⽣産企画部 係⻑ 若林 修治 氏が、
今回のリニューアルプロジェクトについての説明を行いました。

同氏は関東生産企画部に在籍。主な仕事内容として工場の人事・総務、安全・衛生、近年ではESCSというところの事務局的な役割とそこの中心メンバーとして参加しているといいます。今回のリニューアルにおいても工場側の事務局メンバーとして携わっているとしています。
リニューアル前の関東工場オフィスは、稼働開始から17年経ち、島型対向、固定席で執務を行っていたため、自分の書類をはじめ身の回りに色々なものを抱え込んでしまうというような状態だったといいます。
リニューアルプロジェクト体制
リニューアルを行うにあたってのプロジェクト体制は
改修拠点:理想のオフィスを考える
関東工場
工場長
改修PJメンバー13名/オフィス在席者約60名
計画・空間デザイン設計
ワークスタイルデザイン統括部
プロジェクトマネージャー
ワークスタイルコンサルマネージャー
設計デザインマネージャー
ワークスタイルコンサルタント
設計デザイナ
工事・施工
エンジニアリング本部
工事管理
工事施工
DX推進本部
LAN・電話工事施工
で、関東工場、ワークスタイルデザイン統括部、エンジニアリング本部の3つがトライアングルのような形を形成。工場側からは執務者約60名の内13名を改修に係るプロジェクトメンバーに選出し、より多くの人が関わってオフィスづくりを進めてきたといいます。リニューアルのプロセスについては、オフィスを大きくと変えることに伴い働き方や運用が変わることが予測されるので従業員がついて来れないということを防ぐために全員参加型でオフィスのリニューアルを進めたとしています。

リニューアルのプロセス
Phase1
働き⽅の理解・把握
① トップインタビュー
「トップの想い」を理解する
② アンケート
「部⾨業務特性」を理解する
「課題とニーズ」を把握する
Phase2
⾃らの参画
③ ワークショップ
「ありたい姿」をコンセプト化する
「実現したい働き⽅や環境」を⾃分たちで考える
Phase3
全体への啓蒙
④ メルマガ配信
進捗やイベントをオフィスワーカーに発信し、
プロジェクトへの関⼼を引き寄せる
⑤ 運⽤マニュアル作成
意図どおり使われるよう正しい利⽤⽅法から
エチケットまで幅広くマニュアル化
Phase4
使い⽅の学習
⑥ e-learning
働き⽅やオフィスの運⽤ルールの
正しい知識を⾝に付ける
2番目のアンケートの結果で分かったことで働き方の特徴について、96.6%が出社、工場なので基本的にほぼ100%出社しているというような状況になっているといいます。従って長い時間をこのオフィスで過ごすというところがあり、集中して業務を行うところと時にはリラックスしてできるような空間がどうしても欲しいというのがあったとしています。また、自席と現場、2階のオフィスと1階の製造現場との往復が多いというようなところから様々ないろいろな意味を踏まえるとABWというような働き方はむしろ現実的ではないというような形で、自席プラスアルファで色々な働き方ができるのが理想ではないかというような声があったといいます。
同じく、働き方のニーズとしてはコワークの活動割合が高い、としての活動割合が高いということで、作業系タスクは早く終わらせたい、とか、集中と休憩のメリハリがある働き方をしたい。2番目は集中作業やクイックな情報共有ということで、活動ニーズに合わせていろいろな働き方が出来る場面が欲しいなどがあったといいます。
第1回ワークショップの実施 テーマは「新オフィスプロジェクトのコンセプトを考える」
ワークショップは2回実施。1回目は
テーマ「新オフィスプロジェクトのコンセプトを考える」
新オフィスで実現したい「ありたい姿」や「理想的な状態」を書き出してください。という問いに対し、グループで話し合い、各々の結果を発表。その中で出来上がったコンセプトは「CHALLENGE to Craft」ということで自分たちが作った製品誇りを持つ、もっと工場の魅力を伝えていきたいという思いから進化する工場、とか、健康とかコミュニケーションという意味で活き活きと働ける。これらを合わせて「CHALLENGE to Craft」というコンセプトをつくったとしています。
工場のチャレンジとしては書類の削減。事務所にある書類を約80%削減ということで工場では法令で保管しなければいけない書類があるものの、アクティブな書類とそうでない書類というものをきちんと分けて手元に置いておく書類を最小限にしたとしています。

第2回ワークショップの実施 テーマ「実現したい働き⽅をレイアウトに落とし込む」
2回目のワークショップでは実現したい働き方をレイアウトに落とし込むようなことを行ったといいます。3チームに分かれてアイディア出しを行ない各チームで発表を行ったとしています。1人で集中してできるような環境が欲しいとか靴を脱いでリラックスできる空間が欲しいというような意見もあったといいます。自分たちのこだわりが詰まった理想のオフィスのかたちにしているのだというふうになるとしています。
メルマガは工場全体に配信。みんなで働き方を前向きに変革させていくというような目的で行ったといいます。リアルタイムで情報を共有しながら誰一人置いていかないというかたちで働き方を変えることに対する抵抗感を減らすという目的もあったとしています。
チェンジマネジメントという言葉で取り組み、考え方を改めていく。新しい働き方に柔軟に対応していくというような考えの下でリニューアルを行ってきたとしました。
デザインについて
続いて
ワークスタイルデザイン統括部 ワークスタイルデザインラボ クリエイティブチーム クリエイティブディレクター 加藤 俊宏 氏がデザインについての説明を行いました。

加藤氏は、
リニューアル前の関東工場のオフィスは昔ながらの島型対向で、デスクトップパネルがあり、キャビネットやパーティション、書類とか、色々なものに囲まれて要塞のようになっていたといいます。同氏は、オフィスづくりは、プライバシーとコミュニケーションのバランスを考えるところから始まるとして、従来の状態は完全にプライバシー寄りになってしまっていたといいます。アンケートを取るとコミュニケーションは取れているとあったものの、これをやめればもっと上にいけると思ったので、もっと上に行けるオフィスをつくったとしました。
また加藤氏は、パーティションをなくして個人の顔が見えるようにしたといいます。顔が見えるということは隣の人が何をやっているのか、少し先の人が何をやっているのかという行動が見える。その顔が見えて行動が見えると社内がどう動いているのかわかる。社会がどう動いているのか見えるとわかると会社がどう動いているのかがわかるというすごい好循環が生まれるといいます。
こういった見通せるオフィスにすることで仲間の温度感、仲間を感じられるオフィスをつくっているといいます。その仲間を感じられるオフィスをつくることにより出社したくなる。工場で働きたくなるというオフィスを実現できればと思ったとしました。
次に加藤氏は、奥側からエントランスが映っているアングルの画像を示し、工場の立地に着目したとしました。工場には隣に高い建物がないので日光が入り、景色が見える。そういったものを見えるような空間構成をしているといいます。自然光とか緑の景色というのを取り込めるようなオフィスにしているとし、緑の景色を取り込みつつその景色を中に引きずり込みたい、ということで窓側の方にグリーンを多めに配置しているとしました。中と外をはっきりと区切らず曖昧な中で一体感が出るようなオフィスづくりをしたとしています。その中でデスクも窓側はまっすぐに、グループアドレス席はジグザグにしているといいます。従ってまっすぐ座って前を見ただけでも人の顔が見える。何をやっているのがわかる。そういった体温を感じるようなオフィスをつくっているとしました。
リニューアルで実現したかったポイント3点
トップインタビューとワークショップを行った後に、加藤氏としては、製造業という業界が抱える課題に対してアプローチしていくことの必要性を感じ、リニューアルで実現したかったポイント3点として、
①⼈材不⾜への対応
採⽤と定着を⽀える、柔軟な働き⽅と居⼼地
②安全性の確保
集中とリラックスを切り替える多様な空間の工夫
③⽣産性の向上とイノベーションの創出
連携を促すグループアドレス制と動線計画
仲間を知る
連携を生むゾーニング
出会う動線計画
集まりのデザイン
を挙げ、それぞれについて解説しました。

採⽤と定着を⽀える、柔軟な働き⽅と居⼼地
⼈材不⾜への対応については、採用と定着を支えるためには柔軟な働き方ということと居心地という2つが共存するオフィスをつくる必要があるといいます。以前は固定席があってちょっとしたミーティングの場所があって、フォンブースがあって、収納がある、という4カ所ぐらいしかパターンがなかったのに較べ、今回10以上のエリアを設けたといいます。中央の部分にグループアドレス席、自分たちが座るような席があって周りに色々なエリアを設けているとしました。その結果、何かをやろうとすると周りに行く。カフェとか、例えばサウナと呼ばれるミーティングスペースでオープンミーティングをするとかで移動する。移動するとこのオフィス全体を使って働くようになる。全体を使って働くようになると人の顔が動き、行動が現れ、それを見た人たちはこういう人が会社にいるというのが見えるといいます。そのような、顔が見える、仲間を感じるオフィスとして構築しているとしました。
レイアウトについて以前は、収納が非常に多くあり、追いやられるように固定席があったというかたちで動線も直線だったといいます。今は収納を減らした結果どこにでも家具が置けるようになったのでぐるぐる回ることができるといいます。回っている間に会社の中が分かるというような場所を構築しているとしました。
CMF:⾊味・質感の変化が五感に訴え、居⼼地の良さを与える
また、変えると同時にCMFにこだわっているといいます。すなわち「COLOR(色)」、「MATERIAL(素材)」「FINISH(仕上げ)」にこだわり、イトーキが定めるデザインコードであるイトーキセンス、その中から「TIMELESS(タイムレス)」というものを採用しているといいます。その理由は、年を追うごとに古びるというより、味が出て価値が保たれる空間を目指したからだとしています。
集中とリラックスを切り替える多様な空間の工夫
安全性の確保として、心理的安全性と物理的な安全性があり、物理的な安全性は安全第一という工場でよく掲げるスローガン、ケガしないオフィスをつくろうということ。心理的安全性として色々なところを選べるような場所をつくっているといいます。「開放的な空間」「靴を脱いでリラックスMTG」「リチャージできるカフェ」「ハイフォーカス」など、ずっとグループアドレスで上司ににらまれながら働くとメンタル的によくないということで、集中したいときに開放感を得る、カフェでコーヒーを飲みながら仕事をする、などの選べる場所をたくさん設けたとしています。
連携を促すグループアドレス制と動線設計

仲間を知る
3番目の⽣産性の向上とイノベーションの創出については、まず仲間を知るということでグループアドレスと呼んでいるが、実際はユニットアドレス、部署ごとにデスクに当てはめているといいます。その理由として横に流れる流れ作業で仕事が成り立っているのでそのブロックは崩さないとしたといいます。このブロックを崩さずにちょっと自由度を確保するということがグループアドレス、ユニットごとにユニットアドレスというものを使いながら働いて仲間を知ってもらうというふうな形をとっているとしました。
連携を生むゾーニング
連携を生むゾーニングということで、グループアドレスを中央にまとめて基本的にここに人が集まるようなオフィスになり、集まる場所をつくってから好きなところにいけるような場所をつくっているというような形だとしています。ワークショップやアンケートで出ていた1位から5位のニーズを当てはめている形になっているとしています。
出会う動線計画と集まりのデザイン
出会う動線計画をということで、真っすぐだったものを回るようにしたといいます。それに加えてちゃんと集まれる場所をつくろうと考えたとし、せっかくぐるぐる回って顔が見えても一人ひとりが出会うだけだとサイズが小さいと思い、皆で集まれる場所をつくろうということで小上がりになっているところを中心にぐるりと回って朝礼ができるみたいな場所、小上がりをステージとしてみんなの前で喋れるような場所をつくったとしています。
また、それと同時に通路側に面した立ちミーティングをつくっているといいます。ミーティングをやっている人に何やっているのとか、コメントがすぐできるようになっていて、関係ない人が加わるので色々な意見が出る、とか、会社はこんなことやっているのだ、この事業部ではこんなことやっているのだみたいなことが知れるきっかけになるとしています。
運⽤ルール :ワークショップでルールを策定「新オフィスでの運⽤・ルールを考える」
運用ルールついては、使うメンバーがワークショップを行い、こうやって使っていこうというルールをつくることで自分のオフィスになるといいます。そうすることで、今まで固定席で基本的に自分のものだと思っていた席がグループアドレスになると皆でシェアして使う、みんなのものとして使うということが増えたといいます。こういったワークショップを行っていくなかで、自分の席だけではなく空間全体を綺麗にしたいという意識の変化を身につけていこうと考えているとしています。そして、このできたガイドブックがインフォメーションとしてディスプレイに投影されるような形で考えているとしました。
今後の検討ポイント:食堂
最後に今後の検討ポイントとして⾷堂を挙げ、限られた休憩時間の中で、最⼤の空間パフォーマンスを求められる場であり、休憩時間外の使⽤⽅法・持ち帰りお惣菜コーナーなどを検討中だといいます。また、関東⼯場では体を動かす休憩の需要も⾼く、卓球台やダーツは多くの人が使っているといいます。ワークショップでも筋トレエリアの要望があり、健康意識は⼀般的なオフィスワーカーより⾼い傾向にあるなどとしました。
オフィス見学ツアーや質疑応答を実施
オフィスリニューアルの概要説明の後、リニューアル担当者のガイドによるオフィス見学ツアーや質疑応答が行われました。












(画像は一部イトーキ様より頂戴したものを使用しています)