イトーキ、AIで解き明かす生産性研究に関する記者発表会を開催

センシングとAIでデータをマルチモーダルに分析

生産性”を定義し、生産性の新たな評価モデル構築と計測手法の開発へ

イトーキはこのたび、株式会社松尾研究所とともに、AI技術を活用した「オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究」を開始。従来のオフィス稼働データや主観的なパフォーマンスサーベイデータに加え、オンライン上の行動履歴やウェアラブルデバイスによるライフログデータを活用し、働く環境・働き方・働く人の生産性との関係性を多面的に分析するといいます。
目的は「生産性の定義と向上に寄与する行動・環境モデルの構築」と「生産性の客観的な計測・検証手法の確立」の2点だとし、今後は社内実証を経て、大規模実証、サービスとしての展開を視野に入れているとしています。

AIで解き明かす生産性研究に関する記者発表会を開催

2025年7月29日(火)には、東京都中央区日本橋の本社で「AIで解き明かす生産性研究に関する記者発表会」を開催しました。
冒頭、当日の登壇者として
株式会社イトーキ 代表取締役社長 湊 宏司 氏
株式会社イトーキ 執行役員
ソリューション事業開発本部
ソリューション開発統括部 統括部長 八木 佳子 氏
株式会社松尾研究所 技術顧問
東京大学大学院工学系研究科
技術経営戦略学専攻/人工物工学研究センター 教授
松尾 豊 氏
株式会社松尾研究所
シニアデータサイエンティスト 大西 直 氏
が紹介されました。
総合司会・クロストークファシリテーターは
経済キャスター
瀧口 友里奈(タキグチ ユリナ)氏が務めました。

湊社長と松尾教授によるクロストーク

引き続いて、
「オフィスの成果、どう図る?―AIで見直す生産性のかたち」というテーマで滝口氏をモデレーターに、湊社長と松尾教授によるクロストークセッションが行われました。

クロストークセッションの様子 左から瀧口氏、湊社長、松尾教授

冒頭、滝口氏の「そもそも、何故いま生産性の見直しというものが必要なのか」、また「何故、松尾研究所と共同研究を行うことになったのか」という質問に対し、湊社長は
「4年前にオラクルからの転職でイトーキの社長に就任してから、そもそもオフィスとは何のためにあるのかを考え抜いたのですが、当時コロナ禍の最後の頃で、オフィス不要論というものが叫ばれていました。そもそもオフィスというものが何のためにあるのだろうということを考えると、究極の最終ゴールとしては生産性を上げるためにある。では生産性を上げるという文脈において、自分の古巣であるオラクルのICTのバックグラウンドでデジタル技術というものが使えるのではないか、ITやAIということを駆使して生産性ということを掲げていけるだろうと思いました。
一方で、いま、行きたくなるオフィスづくりということが大きなトレンドになっています。コロナのビフォー/アフターで大きく変わっていて、コロナのビフォーというのは、ご案内のとおりオフィスがファシリティコストというかたちだったのですね。けれどもコロナになって、行きたくなるオフィスをつくらないと、在宅勤務に慣れた社員が出社しない。今はさらに進んでオフィス投資=人的資本投資というようなかたちになっている。そこで働く社員のモチベーションが上がって生産性が上がる、とか、採用に効くということで優秀な学生、あるいは中途採用での優秀な人たちというのはこの会社に集まって生産性が上がっていくというようなかたちになっています。
オフィスを投資というふうに考えると、当然、投資対効果というものを1つの民間企業あるいは行政なども、気にしないといけない。ではその投資対効果の効果とは何か、ということになると最初の話に戻って生産性ということになる。ですので、この生産性ということをオフィスに投資することに対する対価として、どれだけそれが上がったのか、ということを測定できなくてはならない、ということが1つあります。

オフィスのチューンアップPDCAをデータドリブンに回していく

昔のオフィスづくりというのは一生懸命考えて、前提条件があり、それでオフィスをつくりました。たとえばおしゃれなオフィスをつくりました。社員にアンケートをとると新しいかっこいいオフィスができて最高です、などといういい評価がついてそれで終わってしまう。しかし、なかなかオフィスづくりというのは仮定に基づいてオフィスをつくるのでその前提条件の仮定が完璧に当たることはない。しかもつくった後、ビジネス環境が変わっていくのでどんどんチューンアップしていかなければいけない。


たとえば、当社は2018年にこの本社を構えていますけれども、2018年にオフィスをつくったときには819人この3フロアに収容されていました。そこから7年後のいま、おかげさまでビジネスが好調で人数をふやしていますのでこちらのビルには1200人が働いています。40%くらい上がっているわけです。途中でコロナがありましたので働き方というものも変わっています。ですから2018年につくったオフィスと2025年のいまのオフィスはオフィスのレイアウトというものが全然違うのですね。オフィスづくりというものはチューンアップしていかなければならない。ということで、これのPDCAをデータドリブンにぐるぐる回していくということをAI、ITの力を使って、生産性をあげていくために行っていきたいということです。
また、何故松尾研究所なのかということですが、もうAIといえば松尾研究所でしょう、ということで、前職のオラクル時代にも、松尾研究所と色々と取り組みたくてアプローチをさせていただいていて、その時からのお付き合い頂いているのですが、イトーキに来てついにその念願がかなって一緒にやらせていただいております」と答えました。
次に瀧口氏は松尾氏に
松尾研究所としてイトーキから生産性に関する共同研究の提案があったときに、松尾研究所として取り組んでみようと考えた意義について、また、過去に松尾氏の研究室が電子メール、またはSNS、睡眠時間などを解析することでその日のパフォーマンスや、気分を推定するといった研究をされていたがそれとの関連性は、との質問が投げかけられました。それに対して松尾氏は
「今の話を聞いて思い出したのですが、2007年ぐらいにスタンフォードからまた東大に戻ってきて、その時Webの研究を色々とやっていたのですが、結構ABテストをして最適化していくという手法がWebの世界では当たり前ですけれど、リアルの世界にはそれは全然ない。顧客が来た時に座っている椅子の色を変えてデータをとると、一番会話が弾む色とかが出せるのですよ、最適化できるのですよ、というのを一生懸命主張していたのですが、皆ぽかんとして理解されなかったということと、2013年に転居して、私も生産性ということに興味があったので、自分がどのようなときに生産的なのか、どのようなときに生産的でないのかというのをデータを使って分析したいということがありました。
それを具体的にどのようにしたかというとeメールの受信、送信を全部、ソーシャルメディア、ツイッターとかを書き込むので、ツイッター、フェイスブックのログを全部取ります、というふうにして行うと、例えば夜中は空きますから、ツイッターとかフェイスブックのログから自分がいつ寝ているのかとかだいたい推測できます。そういうのをいろいろ組み合わせてどういうときに自分がパフォーマンスが上がるのか、どういうときに自分のパフォーマンスが下がるのかを分析した、というのがありまして、それを70人で行ったのですが、当時としては非常に画期的でした。


色々面白かったのが、自分が気にしているほど何かの要因で生産性が上がったり下がったりはしないのだけれども、ただ調子がいいときは調子がいいのですね。前日調子が良かったら翌日調子がいい。ただ睡眠時間が減ると翌日寝るのが遅くなるとパフォーマンスが落ちるなどそういうのがあり、色々と見えてきたことがあってそういうのが面白いと思っていたのですけれどもデータのとれる範囲が限られているので、もう少し広げなくてはいけない。当然そのオンライン上の活動だけではなくて、オフライン上の活動もありますし、それも合わせて、あと生産性の定義というのも非常に難しいですから、それもちゃんと考えなくてはいけない、など色々と課題があった研究を昔行なっていたことがありまして、湊社長からお話を聞いてこれはすごく面白いと思ってぜひやらせていただきたいと考えました」などと答えました。それを聞いて瀧口氏が
「そもそも原点として生産性に対する探求というところに課題感があったということなのですね。しかもそれをリアルでPDCAを回していくというのは、こういったコラボレーションがなければなかなか実現しないということなのですね」と問うと、松尾氏は
「たぶん滅茶苦茶最適化の余地はあると思います」と答えました。それ
に対して湊氏が
「今までフィーリングで行っていたものを、これ結構難しいのですが、そこで働くのが人なので、あまりロジカルに突き詰めると無機質なものができる。でも一方でデザインだ、こんなおしゃれな空間で働きたいというハートへの共感、そのバランスをうまいこと、一緒にとって行けるのではないかなと思います」と答えました。

生産性という羅針盤をつくる

さらに生産性研究にあたって一番の課題はどこにあるか、という質問に対して、湊社長は
「これは、そもそも生産性とは何かという話です。先ほどのお話をお客様としているときに、投資対効果でデータドリブンに生産性ということを計測できますよという話をすると、是非やりたいと、湊さんがいっているとおりだね、でも、湊さんがいっている生産性とは何なの?という話になるわけですね。これは当然、当社においても、例えば営業部門の生産性と工場における生産性は全然違いますよね。なので、生産性とは何かということをある程度羅針盤みたいな形で、一軒一軒お客様と、そもそも生産性とはですねという話をしているときりがないので、そうではなくて、松尾研究所と一緒に羅針盤になるような、生産性とは例えばこういう部門だったらこういう考え方がありますよね、というような要素をつくりこんでいくというようなことが重要だと思います」と答えました。

湊社長

オフィスづくりの世界標準へ

次に瀧口氏の松尾氏に対する
「生産性研究における課題や、AI活用について、AI活用をRPAや生成AIなど業務効率化の分野で非常に効率化されている時流だなと思うのですが、フィジカルとデジタルで生産性を追求するということはオフィスで働く一人ひとりの理解、解像度を上げていく作業でもあると思うのですが、このあたりについては」という質問に松尾氏は
「これから生成AIが業務のなかに入っていくと思います。すでに相当使われている方もいると思いますし、それが業務プロセス全体を変革していくことになる、その中で人と人間の仕事のバランスというものもまた変わってくるのですね。そうしたときにオフィスの役割とかそこで果たすべき機能をたぶん連続的に変わっているはずで、その中でどういうふうにしたらその時点での生産性、何等かの定義した生産性を上げられるのか、という常に変化していく中でちゃんといい値、というかそういった設定を保ち続けるというのは非常に重要になってくるのではないかなと思います。業務の後ろ側の人とAIの役割分担がずっと変わってくるということがこの先おそらく5年10年の間に色々な業界で起こってくる。中でもオフィスは重要になってくる」と答えました。瀧口氏は
「これだけAIが進化するなかでオフィスや場の設計というものもそれに合わせて変わっていかないといけない。いまそういったタイミングにあるということですね」と問うと、湊氏は
「いまの、仕事のやり方が変わることで当然AIが活用される、仕事のやり方が変わる、その結果オフィスのレイアウトが変わっていく、というのはすごく興味深いですよね。じゃ変わっていくというところをどう変ればいいのかというところをやはり生産性という指標で見ていく。今の段階では、実はオフィスレイアウトづくりにAIとかを活用しているのですけれども、AI活用しているというと、松尾先生からしかられるかもしれませんが、まだヒューマンパワーに頼っていることが正直多いのですけれども、例えばいま私もフィットビットで生体情報をとられているのですけれども、あるいは社員全員がビーコンをもっていて位置情報が分かって、例えば照明の明るさとかエアコンの温度とかでどのような環境にいるときに心穏やかになっているとか、あるいはどのようなレイアウトをつくっているとディスカッションが活性化しているというのをデータとしてとっています。でも今のところまだヒューマンが頑張っている。出てきたデータをいま人間が頑張っていて、これをいまAIの方にどんどんデータを学習させているのですね。このオフィスづくりというところに対してAIが活用できるというアプローチが1つあるし、あるいは、そもそもオフィスを対象としているのは働き方というものを私たちは対象にしているので、その働き方そのものでもAIという要素が入ることで変わっていくという二重の面で私たちの業界にポジティブなインパクトを与えてくれるのではないかなと思っています」と話しました。それを受けて松尾氏は
「無茶苦茶面白いですね。やっぱり仕事が変わっていく。AIが変わっていくから業務が変わっていく。そのなかでオフィスをどういうふうに変えていったらいいのか。これもAIがやる。そういうのをちゃんと実現していくと、世界標準にできますよね。本当にシリコンバレーの企業とかが全部そういう仕組みでオフィスを使っていてもおかしくない、そんな感じもします」と答えました。湊氏はさらに
「ありがとうございます。オフィスというのは何をどうしても日本の人口は減少していくのでマクロで見たときには将来日本のオフィスというのは減っていくのだと思うのですよね。当然イトーキという会社がこれからもサバイブしていくためには、海外ということにもどう進出していくかを考える上でもすごくいいヒントをいまいただけたと思います」と話したのに対して松尾氏は
「すごい楽しみです。こういうデータとかAIをきっかけにグローバルにどんどん伸びていくという、そういうふうな企業がどんどん出てくると日本経済もどんどん膨らんでいくと思いますし、是非実現してほしいと思います」と答えました。

松尾教授

瀧口氏は
「この前の時間でこの本社オフィスを見学させていただいたのですけれども、やはりこれだけ快適に一人ひとりの働き方に合わせた場所というのを提供してもらえるオフィスだと働いている方自身も自分たち自身がすごく大切にされているなと感じられる。一人ひとりが生き生き働けるというということが日本の活力につながってくるのだろうなということを強く感じました」などと述べクロストークセッションを締めました。

リレートークセッションを実施

続いて
「オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究」という題でのリレートークセッションを八木氏と大西氏が行いました。セッションの冒頭、八木氏は

トークセッションを行う八木氏と大西氏


「具体的に何をしているかということを二人でお話をしていきたいと思います。だいぶん先ほどのトークの中で出てきましたけれども、何故私たちがタッグを組んで生産性の研究をしているのかということですが、オフィスは生産性を上げるためにあるからということで、昔は座りやすいイスを提供していればよかった、そのあとは心地よい空間を提供すればよかったのですけれど、これから私たちは生産性が上がるオフィスを提供しないといけないですし、それが今後の日本のためにもなるだろうということでこれができるようになっていきたいと思っております。
(同社本社のフロア画面を示して)これは上のフロア私たちのオフィスで、こういったオフィスをつくるとイトーキの経営にとても良い効果がありました。(エンゲージメントスコア82.5%、「家族や知人に薦めたい」スコア+11pts、インターンシップ応募数+50%、地方の営業利益率+5pts、インターン生の本採用率2.4倍)これは私たちもこのような数字を公表しております。改修した拠点とそうでない拠点では利益率が違ったのですね。インターンに応募いただける数が違ったとか、色々な良い効果があったと、私たちなりに検証はしているのですけれども、やっぱり「本当ですか」ということにもなりますし、何故こうなったのかを含めてちゃんとデータで理屈も含めて立ち上がっていかないといけないと思っているということで今回の研究を始めています。


とはいえ、生産性は非常に難しい課題で、研究をしないとなかなか解き明かせないな、というのが長年の私たちの課題でした。それでどういうところが難しいかということをざっくり2つに分けると定義の多様性が1つ。もう1つは生産性をどうしたら向上できるかと考えたときに、影響する要素がとてもたくさんあってなかなか捉えきれないということで、やりかけては不満的な研究に終わっていた。それはイトーキもそうですし、オフィスに関わる業界全体もそうだったかなというふうに思います。

生産性の定義の難しさ

生産性とはという言葉でググるとクリアにでてくるのですが、何らかの生産性の向上に資するようなインプット、投資、投入ということに対してどれだけのアウトプットが得られたか、ということで、ここはあまり議論が持ち上がらないのですが、具体的に文章はないけれども何ですかということになると分野によって、あるいは人によって色々な指標を使われるので、イトーキさんの言っている生産性って何分の何の話なのという話になるということで散らかることになる。これ自体は何を捉えたいのかによって定義を決めきることは難しいのですけれどももう一つ散らかる要素として、パフォーマンスという言葉もあります。このパフォーマンスという言葉がどこでどのように使われているのかということをいくつか拾ってみると、明確に分子だけの話をしていることもあれば、あまり判然としないこともあれば、分子・分母、効率性を示す成果指標という定義をされていることもあって、生産性と近い使い方をされていることもあるので、これはこれでまた違ったファクターで、パフォーマンスの向上といってもそれ何の話ですかということで、まずこのあたりからの整理からしなくてはいけないということで議論を始めています。
そこで一旦、生産性はインプット分のアウトプット。オフィスで言えばオフィスワーカーの生産性向上に資するような投資、インプットに対してどれだけ生産性が向上したかというアウトプットの話に対して整理をしますし、それからパフォーマンスという言葉を使うときは、明確にアウトプットのこと、成果のことだというふうにいいましょうということで、ここまでは合意できるのですけれども、このパフォーマンスなり、生産性なりを何として、これをどうやって測っていくことについてはまだまだ整理が必要かなと思っています。そのようなことを調べたり議論していくなかで、最近の研究で2つくらい面白いものがあったということなので大西さんからご紹介いただきたいなと思っています」と述べました。それを受けて大西氏は、最近の研究からとして
① Murphy-Hill, et al. (2021)の論文
概要=Google, ABB, 米国企業の三社に従業員アンケートを実施し、ソフトウェア開発者の生産性を予測する要素を分析
詳細=生産性と強い相関があった要素は、仕事への熱意
同僚のサポート
有益なフィードバック
の3点であった
示唆=生産性の評価には中間指標も含めると予測精度が上がる
② Nicole Forsgren et al. (2021)の論文
概要=GitHub、ビクトリア大学、Microsoft が、ソフトウェア開発者の生産性を評価するためのフレームワークとしてSPACEを提唱
詳細=Satisfaction and well being
Performance
Activity
Communication and collaboration
Efficiency and flow
のうち、3つ以上の観点で評価するとよいという主張
示唆=生産性の指標は、SPACEの観点で3つ以上で構成するとよい
の2つの論文を挙げ、さらに
「これらの論文から、生産性というのは3つ以上の指標かつ中間指標というのをちゃんと考える必要があるというのが示唆として出てきております。
ここから先ほど八木さんの方からインプット分のアウトプットという話があったのですが、一般によく言われるインプットというのは人事制度や教育、オフィス、業務ツールから直接売上ですとか特許だとか契約みたいなところを抑えていく、最適化しにいくみたいなところがあると思うのですけれども、今回私たちが注目したのはこの間の中間指標というところ、いわゆる定義化しにくいところ、熱意やサポート、コミュニケーションみたいなところをうまく定義化してこれらを含めてアウトプットとして定義して、生産性を定義するというとことをイトーキさんと一緒にまさに目指していけるところと思っております」などと述べました。

中間指標の構造化が大切

八木氏は続いて同社がいいままでベースに使用することの多かったという「経済産業省のモデル」を紹介。
「今までそのパフォーマンスの指標だけを捉えていましたが、何故パフォーマンスが上がったのか、上がりそうなのかを捉えていくときには、間の指標がすごく大事だということだとし、それも含めて全体をアウトプットとして捉えて何のインプットでこの働き方を含めた全体がよくなったのかというこういう観点で指標化をしなければいけないというのが、今回ここまでお調べいただいたなかで得られた示唆かなと思っています。」と述べ、さらに「もう一つ大事なのは何をしたらよくなるのかという関係性をちゃんと把握をしておいて、最終的なパフォーマンスの向上だけではなくて途中の行動の変化をパフォーマンスの向上に向かうような行動の変化が生まれているのかというようなこともわかるという、ここをちゃんとモデル化をして指標化をしておくことが生産性の予測をしたり、解決策を考えたりしていくうえではとても重要だというのが過去からここまでの研究で分かっていることです。」と述べ、続いて
「ということで定義の難しさということはもちろんあって、なかなか合意もできないところなのですが、インプット分のアウトプットだということは大前提としてありつつも、今回私たちが注目しているのはちゃんと中間指標を含めて何が良くなれば何が良くなるのか、ここを構造化をしていくということが重要だろうということでそれに向かってこれからさらに研究を進めたいなと思っています。」と述べました。

影響因子の多さをセンシングとAIで解決

さらに
影響因子の多さについて、同社が顧客のパフォーマンスを予測するときに使うサーベイのモデルを示して、「仕事」「働き方」「生活」のそれぞれの状態からパフォーマンスの状態をサーベイで可視化して調べてきたのに対し、働き方に関してそれまでは、会議の時間や休憩時間、など人間がリアルに何をしているかというオフラインの働き方だけを捉えていたが、仕事はそれだけはなく、オンラインの働き方も含め、それが結果としてパフォーマンスの向上にどう寄与していくのか全体を捉えないといけないということで、今回そのスポークではじめているとしました。
そうすると影響する因子はどんどん増えていくのに対し、それを捉えないと生産性が分からないのかということになると研究のハードルが高くなるという気がするが、それはできるだけ可能な限り幅広くとらえなくてはいけないと思っているし、それが今であればセンシングとAIで可能にもなってきているのでこれに挑戦する価値がある。挑戦可能な状態になっているので、挑戦しない手はないだろうということで、センシングとAIを使ってできるだけ幅広く影響因子を把握していこうということで今回具体的な研究を始めているとしました。

マルチモーダルでデータ分析

続いて具体的な中身をさらに大西氏が説明。
オフィスにおけるマルチモーダルデータ活用による生産性評価研究として
「マルチモーダルとは?」
「松尾研における先行論文と本プロジェクトに生かせる知見」
「マルチモーダルデータ分析」
について述べました。
マルチモーダルデータ分析では、オフライン・オンライン・主観評価それぞれのデータを匿名化処理を行い分析。生体データ、サーベイ、位置情報、オンラインデータのデータを生活、働く場所、移動のしかた、コミュニケーションの4つの軸でそれらがどのように生産性に寄与するのかをマルチモーダルで分析をしているとしました。
さらにオフラインの話として
生活、働く場所、移動のしかた、コミュニケーションの4つについて
生活と生産性については、5~7時間睡眠の時がパフォーマンスが高い傾向
働く場所と生産性については、特定のエリアで長く働いていると、パフォーマンスが高い傾向
場所の使い方と生産性については、多様な場所にバランスよく滞在している方が、パフォーマンスが高い傾向
移動のしかたと生産性については、いままさに分析を進めているとして、移動のどの要素がパフォーマンスの良しあしに影響するのかを解析している
としました。
さらにオンラインとオフラインを組み合わせて分析するとして
コミュニケーションと生産性について、接触ネットワーク(閾値9.25時間以上)ではパフォーマンス値の近い人同士のコミュニケーション頻度が高い傾向
コミュニケーションについては、部門間コミュニケーションの状態を可視化
オンライン・オフラインのコミュニケーションとして
位置情報から見たコミュニケーションでは、誰と誰が同じエリアにいるか
オンライン上でのコミュニケ―ションでは、誰と誰がオンラインでやり取りしているか、誰が中心になっているか
という2つを統合し、今後オフライン・オンラインのどのようなコミュニケーションが最適かというところも一緒に分析していきたいとしました。

大西氏


両者はこれらを2回にわたり実験。被験者の一部に介入を行う介入研究でいままさに分析を進めているとしました。
これを受けて八木氏は
「このオンラインとオフラインのつなぎ合わせがすごく面白いなと思っていて、リアルに一緒にいる人とのコミュニケーションとオンライン上のコミュニケーションをこれから分析していきましょうと話をしているのですけれども、最短的には顔を合わさない人とはチャットもしなくなったりするので、リアルに合う人の方がオンライン上のコミュニケーションが増えるのではないかと何となく思っていたりするのですけれども、本当にそうなのか。あるいは顔を合わさない方がオンラインではつながるのかという、そういうことがわかる。そうするとこの部門とこの部門コミュニケーションが取れてないなとなると実際そのオフィスでその人たちのいる時間を増やすことでオンライン上のコミュニケーションも増やすことが可能かもしれない、ということで、介入につながっていくということで、すごくおもしろいと思うので私も分析結果を楽しみにしています。

因果と相関 全体をモデル化へ

もう1つ、今介入という言葉が出てきましたが何故こういうことをしているかというと、長年私たちがお客様に言われて困っていることでもあるのですけれども、私たちはオフィスをきれいにすると生産性が上がって売上も上がるはずですとお客様にお伝えをするのですが、時々お客様から、いやいや儲かっている会社がオフィスに投資しているのではないか、と言われ、原因と結果が逆なのではないかといわれることがありまして、そういわれると何ともお答えができない。いやそんなことは・・・。となるので、本当にどちらが原因で、どちらが結果なのかということを解き明かしていくというのは、お客様に無駄のない投資をしていただくうえでも必要ですし、私たち自身のビジネスにとってもとても大事なことなので、この因果ということを、介入という手法もそうですし、AIを使用した分析もそうですし、本当に解き明かしていくということがチャレンジングで面白いなと思っているところです。
研究は一緒に始めたところで、これからどんどん掘り下げていくところではあるのですけれども、これから先ほどお示ししたような睡眠だとか、コラボレーションと集中のバランスですとか、どういう移動の仕方だとか、そういうことをいまのところ部門共通で使える主観パフォームということを生産性のアウトプット指標の1つとして中間指標と含めて何と何が関係あるかということを分析しています。これを色々な職種、色々な会社様と一緒に行うことで中間要素にはもっと何があるのか、ということもクリアにしたいですし、本当に会社として見ていかなくてはいけない売上だとか、契約の更新数など本当に経営に直結する課題とこういった指標がどういう関係にあるのかということの因果関係をさらに明らかにしていきたいと思っています。それを私たちとしてはオフィスがどのようにサポートするのかという、環境をセンシングしていくということも含めて、この関係を全体をモデル化していくことにこれから挑戦をしていきたいと思っています。
私たちはどんな環境の上でそしてどんな家具でどんな設備で働いている人がどういった行動をしているのかというデータを集めているのですが、これを1つのAIを活用したプラットフォームに集めることでこの精度を高めていきここで集まる知見を使うとさらに生産性が高まるオフィスということがつくれるようにもなっていくので、このPDCAをぐるぐる回して、そのためにこの関係性を明らかにしていくことをこれから行っていきたいと思っています」などと述べリレートークセッションを締めくくりました。

八木氏

続いて質疑応答などが行われ記者発表会は盛況の裡に閉会しました。

質疑応答の様子

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