イトーキ、新ソリューション「Reserve Any」を発表

オフィスワーカーの働き方をリデザインしながら、会議室不足を解決

東京大学が設立した経済学コンサル会社とタッグを組み、いま注目のマーケットデザインを応用したアルゴリズムを実装

2024年11月20日（水）には記者発表会を開催

イトーキは、会議室不足を解決する新ソリューションとして、次世代会議室予約システム「Reserve Any（リザーブエニー）」を2025年に提供開始するといいます 。
アルゴリズム開発パートナーである、東京大学エコノミックコンサルティング株式会社（以下、UTEcon）と マーケットデザインを応用した「リソース利用価値最大化アルゴリズム」を開発し、ソリューションに実装。会議室の非効率な利用を最小限に全体最適を図り、オフィスワーカーの行動変容を促すことで組織全体の生産性向上を目指すとしています。

ソリューション開発の背景

同社によると、オフィスでの慢性的な会議室不足は、総務をはじめとする管理部門が、運用ルールの見直しや会議室の増設などで対策を行ってきましたが、解決には至っていないといいます。また、近年はコロナ禍を経てリモートワークによるハイブリッド会議が定着していて、音の問題がオフィスで顕著になってきたことや、フリーアドレスの拡大から、WEB会議に対応した空間や集中できる空間の設置が望まれ、管理対象が増えている傾向にあるとしています(※1)。

さらに、同社のオフィスデータ分析サービス「Data Trekking」から、会議室の非効率な利用実態が明らかになったといいます。例えば、実際の人数より大きな会議室の利用 、特定の従業員やチームによる独り占め、他の予約が入らない隙間時間の発生、人気の会議室や時間帯の集中利用 など。「Reserve Any」はこれらの根本原因を解決し、限りある会議室を最大限活用するために開発したとしています。

ソリューションの詳細

「Reserve Any」の特徴は、会議室の「ポイント予約制」だといいます。これは、会議室の予約状況に応じて会議室の価格（利用ポイント）が日々変動することで、予約者は保有ポイントを考慮しながら会議室を予約する仕組みだとしています。例えば、需要の多い時間帯や人気の会議室は利用ポイントを高く設定することで、需要が少ない時間帯や会議室の選択を予約者に促すといいます。会議室の価格を意識することで全体最適に望ましいふるまいが誘発され、必要度の高い予約者の希望する会議室の利用が可能になるとしています。

もう一つの特徴は2つの予約スタイルだといいます。「おまかせ予約」は予約者による会議室の指定が不要。利用人数など希望条件を入力するだけで最適な場所が割り当てられ、会議室予約の手間と無駄が減少するといいます。「こだわり予約」は会議の性質上、指定したい会議室がある予約者向けの仕様だとしています。

「ポイント予約制」を基本に、2つの予約スタイルを採用することで、会議室のオーバースペック利用の解消をはじめ、隙間時間の減少、独り占め防止、利用の分散を実現するとしています。

これらの新しい仕組みを支える技術として、「リソース利用価値最大化アルゴリズム」を「Reserve Any」に実装したといいます。アルゴリズム開発パートナーとしてUTEconが参画し、価格メカニズムを使って行動変容を促す経済学の根源的アプローチを会議室予約に応用したとしています。具体的には、いま注目されている経済学のマーケットデザイン(※2)の考え方をもとに、ダイナミックプライシング(※3)を応用しているとしています。

同社によると、一般的にダイナミックプライシングは「収益最大化」を目的とする手法ですが、「利用価値の最大化」を目的としている点が一線を画しているといいます。日々の予約データをもとにアルゴリズムが精度を向上させていくため、 「Reserve Any」を使えば使うほど、会議室不足が解決していくとしています。

ソリューションの展開

「Reserve Any」は、いつでも・どこでも・なんでも・だれでも、シェアしながら利用できる快適なオフィスを実現する由来から名付けられているといいます。一般的な会議室のみならず個室ブースやフリーアドレス席など様々なスペースの予約管理にも適しているとしています。 「予約者」「予約時間」などの情報をオフィス内で表示できる「Hoteling Label」とあわせて利用することで、システムのみならずオフィス空間での高い利便性を実現するとしています。

ソリューション概要

名称：Reserve Any（リザーブエニー）
提供時期：2025年
提供方法：Outlookへのアドイン対応

代表者コメント

株式会社イトーキ 代表取締役社長 湊 宏司氏

当社のワークプレイス事業は、オフィス家具の製造・販売を「Office1.0」、空間ベースのソリューション提供ビジネスを「Office2.0」、データ活用による働き方ベースのオフィスDXを「Office3.0」として展開しています。この度、このOffice3.0の領域でUTEcon様に参画いただき、オフィスイノベーションにつながるソリューションの提供を実現します。今後も付加価値と競争優位性が高いサービスを強化し、お客様のオフィスでの生産性向上に貢献してまいります。

東京大学エコノミックコンサルティング株式会社 取締役/東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院 教授 渡辺 安虎氏

マーケットデザインという経済学の新たな手法と、イトーキ様のオフィスに関する知見とデータとが合わせることで「Reserve Any」は開発されました。経済学のアカデミックな知見に基づくプロダクト開発とコンサルティングを行う弊社にとって、オフィスの効率的な利用という課題に役立てられることを嬉しく思います。

2024年11月20日（水）には記者発表会を開催

2024年11月20日（水）には東京都中央区の同社本社オフィスで記者発表会を開催しました。

登壇者は
イトーキ 代表取締役社長 湊 宏司 氏
イトーキ 商品開発本部ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長　藤田 浩彰 氏
イトーキ 商品開発本部ソリューション開発統括部ビジネス開発部開発 1 課　浜中 麻衣 氏
UTEcon 取締役 東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授 渡辺 安虎 氏

湊社長の冒頭の挨拶

発表会の冒頭、挨拶に立った湊社長は経営戦略や同サービスの開発背景について
「私からは本日のサービスの全社戦略における位置づけについてお話しさせていただきたいと思います。

まずOffice 1.0、 2.0、 3.0。我々オフィス戦略をこのように定義しております。Office 1.0というのは、例えば今皆様お座りのバーテブラという家具ですけれども、こういった家具売りです。これではなかなか差別化が難しいですので、付加価値をつけるために上流の方に上っていく。我々のベストプラクティスというのは働き方のコンサルティングをさせていただいて、その明日の働き方を実装するためのオフィスレイアウトを社内の160名のデザイナがレイアウトを提供させて頂き、内装工事の部隊がありますので、加えて内装工事もさせていただける。その過程でイトーキの什器をステップインしてオフィスを丸ごとお客様に提供するというのが2.0の世界です。
そしてさらにそこに入れた後もオフィスの生産性ということを上げていかないといけない。これをデータドリブンにやっていこうというのがOffice 3.0という戦略で定義しています。本日のサービスはこのOffice 3.0の中に該当するサービスです。

これまでも「Workers Trail（ワーカーズ・トレイル）」というもの、これは人の流れをオフィスのレイアウト上トラッキングしていくようなサービスです。それから「Performance Trail（パフォーマンス・トレイル）」。これはサーベイによってあなたのパフォーマンス発揮できていますか、心の状態はどうですか体の状態はどうですかというようなコンサルティングのサービスを提供しておりました。今年に入りまして矢継ぎ早に「Data Trekking（データ・トレッキング）」サービスということで、データに基づいてこういう働き方をしているのでこういうオフィスレイアウトにした方がいいですよというようなサービスを開始しております。その中のコンポーネントとしてオフィスレイアウトの自動生成AIですね。こちらは3月に「燈株式会社」様と一緒に発表させていただいております。また7月にはRF IDを使ってアセットマネジメントをしていく。家具がどこにあるかという固定資産管理をしていけるような取り組みとして「RFルーカス株式会社」様といっしょに記者発表をさせていただいております。
さらに第６弾サービスということで本日の「Reserve Any」。会議室予約となります。
何で今更会議室予約なんだろうと思われると思うのですが、在宅勤務が増えてきていますので、昔のように全員出社している状況だと例えば五人のチームミーティングだと脇でやればいいやとなっていましたが、今は５人だと1人は在宅だったりするのです。WEB会議というのがすごく今オフィスで増えてきております。そうするとやっぱり会議室があったほうがいいよねっていうことで会議室を探すのですけれども、会議室が足りないと。会議室が足りない問題というところがいろいろなところで起こっていてオフィスの効率を高めようとすると実は会議室というところに着目するとものすごくオフィス効率というものが上がっていく。しかもポイントはそれを東京大学の経済学部と一緒に考えたということで、今日渡辺先生もお招きして、あの私自身東大の経済の出身で、先ほど色々な思い出話をさせていただいたのですけれども、その東京大学の経済学部の「UTEcon」と一緒にやらせていただいております。その辺りの話もこれから詳細にお話させていただきますので本日はよろしくお願いいたします」などと述べました。

「Reserve Any」詳細説明

続いて「Reserve Any」詳細説明を藤田氏と浜中氏がリレートークで行いました。

開発背景・コンセプト

藤田氏は開発背景・コンセプトについて
会議室不足は、オフィスが抱える永遠のテーマで、昔も今も、オフィス環境における最も根深い問題だといいます。会議室不足は人やアイデアの交わりを阻害し、日常における無用のストレスとなっており、その解決の糸口は見えていないとしています。

これまで、運用ルールの整備、予約システム導入、会議室の増設など様々な対策を講じてきましたが、依然として会議室不足は解決されていないといいます。
さらにコロナ禍によりABW・リモートワークが普及し働く場所の自由度がさらに拡充し、これがきっかけで解決するのではないかと思われましたが、結果的にはWeb会議用や一人用、二人用の小さな」会議室がこの１，２年でオフィスの中に急増して、それらの不足の問題などもそれに加わり、さらに状況は複雑、混乱しているとしています。
そもそも会議室不足を起こしている原因について、同社は、同社の持つ知見やデータから４つの原因を明らかにしたといいます。
１つはオーバーステップ＝実際の人数よりも大きめの会議室が使われている、
２つ目は隙間時間＝他の予約を入れられないムダな空き時間が発生している、
３つ目は独り占め＝会議室を特定の個人や組織が独占してしまっている、
４つ目は利用の集中＝特定の会議室や時間帯に予約が集中してしまっている、だとしています。
同社は、ルール、予約の仕方、運用の方法、さらには組織文化や習慣に起因する「非効率な利用」を全体的なシステム（しくみ）の根本的な見直しが必要だといいます。

そこで今回同社は、UTEconとタッグを組み「経済学の最新の理論」「高度なアルゴリズム」「膨大なデータの活用」を用いて誰もが諦め放置していた問題をOFFICE3.0のアプローチで解決することに挑戦。そして生まれたのが「Reserve Any」だといいます。
いつでも（Anytime）、どこでも（Anyplace）、なんでも（Anything）、だれでも（Anyone）シェアしながら利用できる快適なオフィスを実現するというのが会議室不足を解決するソリューション「Reserve Any」のビジョンだとしています。

特長をまとめた動画が上映され、その後開発担当者の
浜中氏が実際のサービスの詳細内容についての説明を行いました。

サービスの詳細内容

会議室不足を解決するソリューション「Reserve Any」の特長は2つだっといいます。
１つは会議室予約の新しい「しくみ」＝ポイント予約制
２つ目は会議室予約の新しい「スタイル」＝おまかせ予約とこだわり予約
だといいます。これらを使うことで会議室不足の「本当の原因」を解決するとしています。

会議室予約の新しい「しくみ」＝ポイント予約制

会議室予約の新しい「しくみ」＝ポイント予約制とは、価格を変動させるダイナミックプライシング（変動価格制）で働く人の行動変容を促すといいます。
会議室が足りないでも増やせない状況においては、非効率な利用をなくし稼働率を高める必要がある。その非効率な利用をなくすためにポイント予約制を通じてダイナミックプライシングで人の行動を変えていく。
このポイント予約制は、経済学の理論の応用で限りある会議室の利用価値を最大限高めるために経済学で言われる需要と供給による価格の自動調整（神の見えざる手）などの様々な理論を通して開発したとしています。
ポイント予約制のフローについては、予約をするとき会議内容に応じて条件や機能を入力。次にアルゴリズムが社内全体の会議室の重要に応じて予約可能な会議室一つ一つに価格を設定し予約者に提示。予約者は提示された価格と所有するポイントを考慮しながら会議室を予約することで自然と全体最適につながる選択を行うことができるとしています。
どのように価格が調整されていくのかについては、会議の開催日が近ければ近いほど価格は安くなり、遠いと高くなるといいます。また、会議室の場所を指定しないと価格はやすくなり、場所を指定すると高くなるとしています。社内全体の会議の数が減っていると安くなり、増えていると高くなるといいます。最後に会議室や時間帯の人気が下がっていると安く、上がっていると高くなるとしています。このように様々な要因から総合的に価格が日々自動で調整されていくとしています。

会議室予約の新しい「スタイル」＝おまかせ予約とこだわり予約

会議室予約の新しい「スタイル」＝おまかせ予約とこだわり予約については、
おまかせ予約は、会議室の希望条件を入力するだけで予約が完了する予約方法だといいます。特長としてアルゴリズムが最適な場所を自動で割り当てるため予約者は会議室を選ぶことなく簡単に予約が完了するといいます。全体として最も効率的な割り当てになるよう会議の直前までシミュレーションを行うため場所の確定をするのは会議の前日だとしています。
こだわり予約は希望条件に合った会議室を選ぶ予約方法。特長は、会議室の価格を意識しながら予約できるので、予約者は最善の選択が自然にできるといいます。
なお、おまかせ予約はこだわり予約よりも安い価格に調整し、できるだけおまかせ予約に誘導することが、稼働率向上のカギになるとしています。

2つの予約方法の流れをデモ

次に実際におまかせ予約とこだわり予約のデモンストレーションを紹介しました。
デモンストレーションでは、「Reserve Any」が利用ユーザーが最も多いoutlookのアドインを採用しているといいます。
おまかせ予約の流れについては、例えば自分自身と5名のメンバーとの会議設定を行う場合、新しいイベントを開き会議のタイトル、招待したいメンバー、日時を入力し「Reserve Any」のアドインを開く。複数人で会議室を利用する場合は部署ポイントから、一人用の個室などは個人ポイントから引かれるといいます。今回は複数人なので部署ポイントから引かれるとしました。利用人数、オフィス、フロアはデフォオルトで入っているため条件を指定するだけで該当する会議室があると予約が完了となるとしています。おまかせ予約が表示され送信ボタンを押すとおまかせ予約が完了し、おまかせ予約がメンバーに入るとしています。そして利用日の前日になると場所が確定され会議室名が表示され詳細についてメンバーに通知されるといいます。
こだわり予約は途中まではおまかせ予約とおなじで、新しいイベントを開きタイトル、メンバー、日時を入力しアドインの画面を開く。こだわり予約の画面に切り替えて希望する条件を指定。条件に該当する会議室があると会議室とポイントが表示され、保有するポイントを考慮しながら場所を指定するといいます。そうすると場所が確定し会議室名が入り、送信ボタンを押してこだわり予約の完了となるとしています。

次に浜中氏は、おまかせ予約とこだわり予約が会議室不足の「本当の原因」に対してどのように解決するのかを紹介しました。
まず、利用人数に対して最適なサイズの会議室を割り当てつることでオーバースペックの解決に貢献するといいます。また、無駄な隙間をつくらず最も効率的に会議室を割り当てることで隙間時間の解決に貢献するとしています。続いて、繰り返し長時間予約し続けると保有ポイントが不足することで独り占めの解決に貢献するといいます。そして特定の場所や時間に需要が集中しないよう価格差を設定することにより利用の集中の解決に貢献するとしています。そうすることで会議室全体の稼働率を高めるとしています。

最も効率的に会議室を割り当てるとはどのようなイメージなのかについても紹介しました。
例えば16時～18時の2時間の会議を予約したいが現状では会議室の予約が埋まっていて2時間の予約が取れなくなっている場合、「Reserve Any」のアルゴリズムでは、必要な人に会議室がいきわたるように予約枠を入れ替えて最適な割り当てを行い隙間時間の発生を防ぐことができるといいます。
そして「Reserve Any」をさらに活用してもらうために、会議室不足に対するこれらの効果指標をレポーティングするといいます。
レポーティングには3種類あり、1つ目は導入前に行う「導入効果シミュレーション」。2つ目は導入後に行う会議室の利用実態を可視化する「モニタリング」、3つ目がモニタリングした結果を世の中や他社と比較する「ベンチマーク」。導入後はもとより、導入前にシミュレーションを行って効果を見定められるという点がポイントとなっているとしています。
最後に「Reserve Any」が目指すゴールとして
働く人にとっては、コラボレーションやコミュニケーションの機会増加による従業員体験の向上。総務にとっては、保有するオフィススペースの稼働率向上による資産の最大
企業にとっては、組織運営プロセスの迅速化をビジネスの加速による競争力の向上。そして社会にとっては、人材の力を活かすオフィス運用方法の提案と提供を通じた人的資本経営の推進をあげました。

サービス提供情報

再び藤田氏が登壇しサービス提供情報について
① リソース（会議室）の利用価値を最大化するアルゴリズムを実装している
② 会議室だけでなくWEB会議ブースや集中スペースも一体で運用可能
③ 予約情報を表示するHoteling Labelもセットで利用してもらい、オフィス空間も連携した高い利便性を提供
をあげ、特に3つ目はオフィスのデザイン、物理的な空間をつくるイトーキの大いなる強みであると述べました。
また、サービス提供に関する情報として
「Reserve Any」のサービスの提供は2025年の2月から
ターゲットイメージ（初期）はユーザー1000名程度の大規模オフィス
料金体系は、利用の人数や部屋数に応じた課金制
などとしました。

クロストークセッションを開催

その後
藤田 氏、浜中 氏、渡辺 安虎 氏の3名よる
「経済学×働き方～マーケットデザインがもたらすオフィスイノベーション～」というテーマのクロストークセッションが開催されました。

質疑応答

クロストークセッション終了後
イトーキ 代表取締役社長 湊 宏司 氏
イトーキ 商品開発本部ソリューション開発統括部ビジネス開発部 部長　藤田 浩彰 氏
イトーキ 商品開発本部ソリューション開発統括部ビジネス開発部開発 1 課　浜中 麻衣 氏
UTEcon 取締役 東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授 渡辺 安虎 氏
イトーキ 執行役員商品開発本部 ソリューション開発統括部 統括部長 八木 佳子 氏
の5名が登壇し質疑応答が行われました。