オカムラ、「OPEN FIELD(オープン・フィールド)」企画展を開催

「ショールーム・フィクション 線のような家具と家具のような立体」テーマに

オカムラは、同社が主催する「OPEN FIELD(オープン・フィールド)」第2回企画展を2024年9月13日(金)~9月27日(金)までオカムラ ガーデンコートショールームで開催しました。


「OPEN FIELD」は、建築史家の五十嵐 太郎氏をキュレーターに迎え、オカムラ ガーデンコートショールームにて気鋭のクリエイターによるインスタレーションを発表するというもの。
第2回となる今回は、建築家の山田 紗子氏、アーティストの丸山 のどか氏が、「ショールーム・フィクション 線のような家具と家具のような立体」のタイトルでインスタレーションを展示。また、会期中、参加作家によるトークイベントや学生を対象にしたワークショップを開催しました。

キュレーター五十嵐 太郎氏によるコメント

予期されない出会いや出来事の場として生まれたOPEN FIELDの2回目の展覧会では、異なるジャンルのクリエイター、すなわち建築家の山田紗子さんと、アーティストの丸山のどかさんによるコラボレーションを企画した。二人とも期待されている若手である。山田さんは、ジャングル・ジムのような屋外空間を備えた野心的な自邸、daita2019などで注目されたほか、インスタレーションや展覧会の空間構成も手がけている。また丸山さんは、家具や小物など、身近な日常生活で見られるモノを対象としつつ、ベニヤや角材を用いて再現する手法で知られ、各地の展覧会に参加している。
そこで今回は日常の風景に違和感をあたえながら、異世界の存在を想像させる空間の創出をめざした。そもそもOPEN FIELDの会場が、オカムラのガーデンコートショールームの一部であることを踏まえ、ここをニュートラルなホワイトキューブとしてリセットせず、普段の雰囲気を残しながら、むしろ製品を陳列する「ショールーム」という位相をズラすことができるのではないか。
丸山さんがつくるのは、本物のようなモノ。これらは実用性を備えた家具や小物ではなく、抽象化された立体作品=彫刻である。しかも表面は絵画のようにペイントされている。三次元の存在でありながら、二次元的だ。一方、山田さんは空間の中で踊る線というべき細いスチールパイプのインスタレーションを制作し、それらが重なりあう室内の風景を生みだす。これは意味を剥奪された抽象的なモノのように見えるが、座るなどの機能をもち、家具的にふるまう。ときとして二次元に感じられるかもしれないが、三次元に展開する。
したがって、アートとデザイン、あるいは二次元と三次元が反転したり、宙吊りになるのが、「ショールーム・フィクション」の空間となるのだ。

参加作家プロフィール

山田 紗子氏(建築家)

1984年東京都生まれ。大学在学時にランドスケープデザインを学び、藤本壮介建築設計事務所で設計スタッフとして勤務の後、東京芸術大学大学院に進学。在学時に東京都美術館主催「Arts&Life:生きるための家」展で最優秀賞を受賞し、原寸大の住宅作品を展示する。独立後の主な仕事として、屋内外を横断する無数の構造材によって一体の住環境とした「daita2019」、形や色彩の散らばりから枠にとらわれない生活を提案した「miyazaki」等の住宅作品や、樹木群と人工物が渾然一体となる環境を立ち上げる2025年大阪関西万博休憩施設(2025年公開)などがある。主な受賞に、第三回日本建築設計学会賞大賞、第三十六回吉岡賞、Under 35 Architects exhibition 2020 Gold Medal、 第三回小嶋一浩賞など。

作品コンセプト

家具は、人と場の間に境界線を描く。人の体や行動を支えるためにデザインされた形は、同時に、人が空間に関わるための境界である。その境界線が開いたり閉じたりすることで、人はその場に近くなったり遠くなったりする。
境界線、つまりアウトラインだけで家具を作る。たとえばそれは頭の先よりも少し上を通り、右肩の後ろをかすめて、足元に水たまりを描く。または左右に手を伸ばしたようにすっと広がり、背後に大きな円を描くかもしれない。そのような家具を7つ並べる。そこではある時は、誰かのアウトラインが自分のアウトラインになり、その逆もある。複数のアウトラインが交錯する場に人や物が出入りし、常に揺れ動く境界と影が新たな場を立ち上げる。

丸山 のどか氏(アーティスト)

1992年、新潟県生まれ。2018年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科美術専攻彫刻領域修了。ベニヤや角材などの製材された木材を用いて、言葉や風景を表象的に切り取り、立体化する作品を制作。現実と虚構が入り混じり、次元の境界が曖昧となる作品を発表している。
近年の主な展覧会に、「味/処」(神奈川県民ホールギャラリー、神奈川、2023年)、「アートサイト名古屋城2023」(名古屋城二之丸庭園、愛知、2023年)、「Encounters」(粟津邸、神奈川、2023年)、個展「資材館」(YEBISU ART LABO、愛知、2022年)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ2020」(旧・名古屋税関港寮、愛知、2020年)などがある。

作品コンセプト

人が家具と接する瞬間は日常生活の中で何度も訪れる。
脱ぎ捨てた服、積まれた書類、忘れ物のスマートフォン、行き場がない観葉植物などが家具の上に置かれる。
忙しない日々の中で、本来の機能とは違う使われ方をする家具たちは、まるで生活の痕跡を一時的に展示するための台座のようにも見えてくる。

開催概要

■タイトル
「ショールーム・フィクション 線のような家具と家具のような立体」
■参加作家
山田 紗子氏(建築家)、丸山 のどか氏(アーティスト)
■企画
五十嵐 太郎氏(建築史家)
■開催期間
2024年9月13日(金)~9月27日(金)10:00~17:00※日曜祝日休館
■会場
オカムラ ガーデンコートショールーム
東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート3F
■入場料
入場無料
■特別イベント
参加作家によるトークイベントや学生を対象にしたワークショップを開催。
トークイベント  :2024年9月14日(土)15:00~16:00
学生ワークショップ:2024年9月18日(水)15:00〜17:00
■主催
株式会社オカムラ

オープニングパーティを開催

企画展初日の9月13日(金)には18時からオープニングパーティを開催しました。

中村社長が冒頭の挨拶

オープニングパーティの冒頭、
同社代表取締役 社長執行役員の中村 雅行 氏が挨拶を行いました。


「弊社は株式会社オカムラといいますが、6年前までは株式会社岡村製作所といい製作所が付いておりました。戦後すぐにできた会社なのですが、今から約70年前スポーツカーをつくっておりました。その後わけあって撤退したのですが、自動車をつくっていたので、大卒のプロダクトデザインをする人を随分雇っていました。自動車から撤退したことでデザイナーだけ残ってしまったのですが、その人たちに1つは家具のプロダクトデザイナー、もう1つはスペースデザイナーになっていただいて今日にいたっております。
自負としてはデザインオリエンテッドの会社だということでずっとやってまいりました。それで実は2年前から奨学金制度をつくりました。どのような学生さんに奨学金を出しているかというと、美術大学の学生さんを対象に奨学金制度をつくりました。日本は資源も何もない国なのでデザインを志した学生さんに、油絵でもいいし、染織でもいいし、プロダクトデザインでもいい。そういう学生さんに4年間で720万円、返さなくてもいいですよ、当社に入らなくてもいいですよ、という制度をやっております。年間3000万円使っておりますから4年経つと16名の学生さんが当社の奨学金を使って、デザイン、建築という分野で将来活躍していただく育成のために行っております。
このオープンフィールドもその一環といえば一環なのですが、デザイン、建築対象に当社としては支援をさせていただきたいということの一環で行っております。
今回建築家の山田 紗子様とアーティストの丸山 のどか様に企画をしていただきました。東北大学大学院の五十嵐 太郎先生に全体のとりまとめ、キュレーターをお願いしております。
山田 紗子先生には当社の追浜工場を見て頂きそれを参考に展示の企画をしていただきました。後ほどそれについて触れられるかもしれませんが、今回第2回目を無事に開催することができました。今回、皆様も是非先生方の作品を見てお楽しみいただければと思います。
併せて、この場をお借りしまして弊社のデザイナーも育てていただきたいということで、作品を展示しておりますので、是非ご批判をいただければと存じます」
などと述べました。

建築家 山田 紗子氏が挨拶

次に
建築家 山田 紗子氏が挨拶を行い
「この空間はオカムラのショールームでイベントなどで使われている場所ですごく広いのですが、今回お話をいただいて丸山さんとこの場所をつくるということになって、丸山さんがこのかわいらしいというか不思議な、家具とかパソコンとか日常にある、生活を創出させるものに、私たちがどのようなものを持ってこれるかなということで、空間にすっと入っていく影のような存在でその場所を緩く仕切ったりとか、誰かが座っている後ろにちょっとした空間をつくったりとかということが出来たらいいのではないかというふうに考えてつくり始めました。オカムラ様の場所なので、椅子をつくってみたいねとかとか言いながら追浜の工場に行かせていただいて、そうしたら力強い鉄の具材がたくさんあってそれをすごく繊細に加工しながら、有機的な感じになっていくのを見てすごく感動したというか、たくさんモノづくりを重ねられてきた歴史を感じながら、私たちももう一回鉄で造形をやってみたいねということでこういったかたちで家具を7つつくることになりました。
7つそれぞれが空間をつくるようなかたちになっています。1個1個これから販売もすることになっていて、大きな空間に置いてみることを想像していただければと思います。ご興味がある方は是非ご相談いただければと思います」
などと述べました。

アーティスト 丸山 のどか氏が挨拶

続いて
アーティスト 丸山 のどか氏が挨拶を行い
「今回の私の作品は会場内に点在している家具のような立体です。本来イスが持つ座るという機能が奪われて、その上にものが置かれていたり、乱雑に置かれていることを今回行っていて、共有空間のなかで人の生活の痕跡を一時的に展示するための台座のような機能をイスに与えているという感じです。
私は普段は一人で空間をつくるような作品を展示することが多いのですが、今回は自分以外の方とコラボレーションするのが初めてなのでいろいろと発案と違う出方というか、山田さんの家具の方は実際に座ることができるようになっているので、座った時に見える会場の空間の風景が場所によって視線の高さだったり、場所によって見え方が全然違って見えるので、腰かけて空間を楽しんでいただければと思います」
などと述べました。

建築史家 五十嵐 太郎氏が挨拶と乾杯の発声

最後に
建築史家 五十嵐 太郎氏が挨拶と乾杯の発声を行いました。五十嵐氏は
「このオカムラでの展示は私の前は川向先生が長く担当されておられて、私は昨年から企画を担当するようになりました。昨年は建築家とアーティストとテキスタイルデザイナーの3名のコラボレーションを行ったのですが、今年は山田さんと丸山さん、建築家とアーティストのコラボレーションとなっています。
コラボレーションするいうのはこのイベントの伝統的なやり方であってそれは是非引き継ぎたいと思って続けているんですけれども、誰と誰が組み合わさるとおもしろくなるかということをすごいバリエーションの中で考えていて、今回はこの場所がショールームだということを重視して、タイトルを『ショールームフィクション』と付けたのですけれど、展示空間を完全に壁で仕切ってそのエリアをニュートラルなホワイトキューブにして展示を組み立てる、美術館とはそういうやり方ですけれども、ここはそもそも美術館ではなくて普段はショールームの入口になっているので、ショールームっていう場所であるというその場所性からできるということで今回この2人に是非お願いしたいなと思いました。
2人ともこれまでいろんな場所で建築であるとか作品、あるいは展示を見させていただいて、今回アートとデザイン、アートというのはデザインと違ってある種、明快な機能を持たない。ここでは、デザインのように見えるもの、つまり家具とか文具とか、そういうものが実はアートであって、逆に空間インスタレーションのアートのように見えるものが機能を持ったデザインになっているという転倒した関係があったり、あるいは二次元のように見えるけれど線と面でつくられている山田さんのインスタレーション、ちょっと遠近感を喪失させられるところもあって、二次元的に見えても実際には三次元に存在しているわけですし、逆にあの丸山さんがつくったこの三次元としてある立体作品は、すごく表現が非現実的な仕上がりになっていて、三次元のものが逆にまるで二次元的なもののように見える。ちょっと不思議な次元なもののように見える。そこでも入れ変わりが起きている。ショールームなのだけれども展示場、展示場なのだけれどもショールーム。いくつかの位相がちょうど宙吊りになったような展示ができたらいいなということで、先行してコンセプト文を書いたのですけれども、本当にお二人が予想を超えて仕上げていただいた空間というのは、予想を超えて見事にそうなって、本当に良かったなと思っています。ありがとうございます」などと述べ、乾杯の発声を行いました。

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