イトーキ、イトーキ中央研究所が10年後のオフィスとモノづくりに関するビジョンを発表

3Dプリンターを活用したサステナブルな次世代オフィス家具のプロトタイプモデル披露

慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同で

イトーキは、2024年9月27日(金)、イトーキ中央研究所が、10年後を見据えたオフィスとモノづくりのビジョンを発表しました。
また、慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同で、3Dプリンターを活用したビジョン実現のためのサステナブルな次世代オフィス家具のプロトタイプモデルを発表しました。

イトーキ中央研究所とは

イトーキ中央研究所とは、オフィスとオフィス家具づくりに今後訪れる課題に長期的視点で取り組むため、2023年1月にイトーキに新設された組織だといいます。空間デザイン、プロダクトデザイン、開発設計、樹脂材料、3DCADなどの専門人材が所属し、10年後の働き方を見据えたオフィスとオフィス家具のあり方、素材、設計手法、生産技術に関するリサーチを行っているとしています。

中央研究所が考える “オフィスとモノづくりの現状と課題”

同研究所によると、働き方の多様化やビジネス環境の急速な変化に伴い、多くの企業がオフィスのあり方や最適化について模索するなか、より良いオフィス環境が従業員エンゲージメント向上や人材確保に寄与することが明らかになっているといいます。企業の成長に合わせて常にオフィス環境を改善していくことは、今後のオフィスづくりの要点になるとしています。同時に、頻繁な移転や改装はコスト面の負荷や廃棄物問題など環境面への負荷も考慮しなければならず、今後一層経営の課題として複雑性・重要性を増やしていくとしています。
一方、オフィスはデザイン面でも様変わりしており、多種多様なアイテムが使われるようになったといいます。オフィス家具も多品種を少量で供給するケースが増えつつあり、数に頼る生産以外の選択肢も見つけていく必要があるとしています。
オフィスとモノづくり、同研究所ではこの二つの視点から課題を設定し解決策を探求しているとしています。

中央研究所5つの研究テーマと長期ビジョン「CENTRAL Lab.の世界線」

変化し続けるオフィスとそこで使われるオフィス家具のあり方について、長期的な視点で中央研究所が探求するテーマは以下の5つだといいます。
1)流動的オフィス
オフィスは常に変化するようになると仮定し、合理的なオフィスづくりの手法を探求する
2)プラスチックリサイクル
オフィス家具に活用できる独自のマテリアルリサイクル手法を探求する
3)パラメトリックデザイン
コンピューターを駆使して斬新なデザインを描き出す手法を探求する
4)アディティブマニュファクチャリング ※
3Dプリンターによる造形をオフィス家具に応用する技術を探求する
※材料を「積層」または「付加」することでさまざまな形状の製品を製造する手法
5)使用状態可視化
IoT技術によりオフィス家具の使用状態を把握し循環型のユーザー体験を作り出す

上記5つの研究テーマを単体ではなくひとつのビジョンに紡ぎ出し、全く新しい循環モデルとしての確立を目指しているとしています。

具体的には、より柔軟に変化するオフィスに対応するため、コンピューターによるデザインと3Dプリンターを駆使して数に頼らない生産を実現するといいます。また、プラスチックパーツは使用状態を可視化することで短いサイクルで回収し、独自のリサイクル手法を確立してプラスチックごみ問題に貢献するとしています。

慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同で、次世代オフィス家具のプロトタイプモデルを製作

同研究所によると、今回、上記ビジョン実現に向け、日本のデジタルファブリケーション界を牽引する慶應義塾大学KGRI 環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターセンター長 環境情報学部教授の田中浩也氏、慶応義塾大学政策・メディア研究科(SFC)特任講師の湯浅亮平氏の参画を得、次世代オフィス家具のプロトタイプモデルを製作したといいます。同プロトタイプモデルは、鎌倉にある同センターの拠点「リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ」の大型3Dプリンターを活用し工夫を重ね、以下を特徴とした流動的オフィス向けワークテーブルとして完成したとしています。

特徴1:従来比約50%の重量で動かしやすい

従来のオフィス家具の天板の定番仕様は、木製芯材にメラミン化粧板を貼り、樹脂をエッジ部分に巻くというもの。極めて汎用性に優れた仕様ですが、頻繁にレイアウトを変更して部屋を変化させるためには重すぎると考えたといいます。このワークテーブルでは重量を約50%に抑え、非力な人がひとりでも動かしやすくしたとしています。

特徴2:モノマテリアルを実現した天板

木製芯材とメラミン化粧板、樹脂エッジの仕様は分解が容易ではないといいます。今回のワークテーブルでは、天板を全て単一のプラスチック素材(ポリプロピレン)にし、使用後の分解を飛躍的に容易にしたとしています。

特徴3:3Dプリンターによる造形

市販のポリプロピレン板を活用した天板本体にエッジと枠部分を直接3Dプリンターで出力しているといいます。造形しやすくカラー展開も可能な樹脂材のレシピを独自開発したとしています。

特徴4:コンピューターにより生成された形状

天板裏面の強度補強パーツを3Dプリンターで出力しているといいます。形状の検討に当たっては、最新の3DCADでジェネレイティブ・デザイン(最適な形状をコンピューターに生成させる)を活用したとしています。

特徴5:負荷を測定し使用状態を可視化

天板裏面にセンサーチップを設置し、天板にかかる圧力を常時計測しているといいます。クラウドにデータを送信することで使用状態が把握でき、交換・再生時期を明示するとしています。

イトーキ中央研究所は、2030年の実用化に向けた技術確立を目指し研究開発を進めるとともに、オフィスとモノづくりを通して持続可能な社会実現に貢献していくとしています。

株式会社イトーキ 執行役員 中央研究所 所長
清水 俊也氏 コメント

オフィスに対する価値観が大きく変化する今日、オフィスづくりとオフィス家具づくりを生業とする当社はオフィスが抱える本質的な課題に向き合う存在でありたいと思います。新技術・新素材・新しいユーザー体験をオフィスの文脈に応用することが当研究所の姿勢です。完成と浸透には時間を要する課題もありますが、発足と同時にスタートすることができました。今後も「CENTRAL Lab.の世界線」が実現するまでの過程を発信していきますのでぜひご注目ください。

慶應義塾大学 KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センター センター長 環境情報学部 教授
田中 浩也 氏 コメント

社会全体の「創造生産性」を高めながら、同時に環境や資源に配慮したものづくりを行うことが、現在あらゆる産業分野に求められています。そのなかでも象徴的ともいえるオフィスデザイン分野において、未来の働き方を「予祝」するようなプロトタイプを生み出せたことは、これからの方向性を指し示し、時代の舵取りを行ううえで、大きな意味があると思います。また今回の研究は、3DプリンターやIoTなどを所与のツールとして完全に咀嚼したうえでの「統合度」を高めていくものでした。こうした方向性をさらに深く突き詰めていけたらと思います。

慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターについて

約10年に渡って研究開発してきた環境配慮型、資源循環型のものづくり手法(3Dプリンターおよびそのための各種設計技法)を、産学連携や自治体連携を通じて社会実装するために設立されたセンターだといいます。

イトーキ中央研究所について

オフィスとオフィス家具づくりに今後訪れる課題に長期的視点で取り組むため、2023年1月にイトーキに新設された組織。空間デザイン、プロダクトデザイン、開発設計、樹脂材料、3DCADなどの専門人材が所属し、10年後の働き方を見据えたオフィスとオフィス家具のあり方、素材、設計手法、生産技術に関するリサーチを行っているとしています。

イトーキのワークプレイス事業について

株式会社イトーキは1890年創業。ミッションステートメントに『明日の「働く」を、デザインする。』を掲げ、オフィス家具の製造販売、オフィス空間デザイン、働き方コンサルティング、オフィスデータ分析サービスのほか、在宅ワークや家庭学習用家具、公共施設や物流施設向け機器など、“Tech×Design based on PEOPLE”を強みに、さまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートしているといいます。ハイブリッドワークが普及し働く場所や働き方の多様化が進むなか、生産性や創造性を高める空間DX、最適なオフィス運用を伴走型で支援するコンサルティングサービスなども展開。外部デザイナーやパートナー企業との協業も積極的に行い、これからの新しいワークスタイルとワークプレイスを提案しているとしています。

(画像はイトーキ様リリースより)

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