コクヨ、立命館大学と「ノートとタブレットへの筆記における記憶効果の比較」の共同研究を実施

ノートはタブレットよりテスト得点が2割増

ノートでの暗記学習は、テスト得点が暗記直後・2.5か月後ともにタブレットより約20%高いことが判明

コクヨは、立命館大学 産業社会学部 岡本尚子准教授と共同で、「紙のノートとデジタル端末であるタブレットの筆記における記憶効果の比較実験」を実施し、媒体の違いが記憶と生理指標に与える影響を調べたといいます。その結果、タブレットに比べ、ノートの方が、記憶への高い効果が得られたといいます。また「見返しやすさ」「覚えやすさ」に加え、脈波で測るリラックス度合いとストレス度合いもノートに有意な差があらわれることが明らかになったとしています。

1. 背景と目的

2024年から、小学5年生から中学3年生の英語の授業でデジタル教科書の導入が始まるなど、義務教育において、ICTの活用が浸透しつつあるといいます。一方、紙のノートはデジタル端末に比べて「書いたことを覚えていられるか・定着しているか」「目の疲れにくさ」「書き込みやすさ」などの満足度が高いことがわかっているといいます(コクヨ調べ/2022年10月、n=1,560名)。しかしながら、それが日々の学習などに及ぼす影響については、これまで十分な検証がなされていなかったといいます。
そこで今回、筆記による暗記学習において、紙がデジタル端末と比較して、記憶への効果があるかを<成績評価>、<主観評価>、<生理計測評価>の3つの評価軸で検証を行ったといいます。これらの研究結果は、学生の学びの新たなサポートに活かすことが目的だとしています。

2. 実験概要

実験は2回に分けて実施したといいます。

1回目:被験者(実験参加者)は、同日にノート(キャンパスノート)、デジタル端末(タブレット)、2種類の媒体を使って記憶した内容をテストします。それぞれ、課題動画を視聴しながら学習内容をメモした後、そのメモを見返したり、メモにさらに筆記したりしながら記憶します。その直後に、15問の筆記式の暗記テストを実施。学習する内容を変えそれぞれの媒体で行ったとしています。

2回目:2.5か月後、同一被験者に対して1回目に筆記したノートとタブレットそれぞれのメモで復習を行い(メモを見返す、再度メモするなどの方法)、再度暗記テストを実施したとしています。

ノートへの筆記とタブレットへの筆記の記憶効果を正解数で評価する<成績評価>、筆記のしやすさや疲労度、筆記感の満足度、見返しやすさや覚えやすさを定性的に測る<主観評価>、脈波と呼吸と皮膚コンダクタンス*で測る<生理計測評価>の3つの指標で比較したとしています。
*皮膚コンダクタンスとは・・・情動の変化による発汗を手指に取り付けた電極で皮膚の抵抗変化として計測するもので、覚醒度の指標などに用いられるといいます。

【手 順】
 1回目:①動画を視聴しながらメモ→ ②メモ内容を見返す、書き込むなどして記憶(暗記学習)
     → ③暗記テスト→ 休憩→ ①~③をメモ媒体/動画を変えて実施
 2回目:①前回のメモ内容を見返す、書き込むなどして記憶(暗記学習)
    → ②暗記テスト→ 休憩→ ①~②をメモ媒体を変えて実施

【被験者】1回目:大学生21名/2回目:大学生19名
【暗記テスト】筆記式問題(15点満点/メモ媒体問わず紙面上で実施)
【メモ媒体】デジタル端末:タブレット(iPad)、紙のノート:キャンパスノート の2種類
※タブレットでは「Notability(メモアプリ)」を使用。画面にペーパーライクフィルムを貼り、紙のノートと同じ罫線表示としたとしています。
【提示動画】JAXA公式YouTube動画 2種類
【共同研究者】立命館大学 産業社会学部 子ども社会専攻 岡本尚子 准教授

左上:脈波・皮膚コンダクタンス測定機、左下:呼吸測定機 /右:タブレットで筆記効果の実験をする様子
左上:脈波・皮膚コンダクタンス測定機、左下:呼吸測定機 /右:タブレットで筆記効果の実験をする様子

3. 結果

(1)<成績評価>メモ・暗記学習 直後の暗記テストは、タブレットに比べてノートのほうが22%、2.5か月後に実施した復習後の暗記テストも、ノートのほうが20% 高得点

※15点満点の暗記テストの平均値を比較

テストの得点を比較すると、平均得点7.7点のタブレットに対して、ノートは9.4点と22%高く、2.5か月後に実施した再テストでも、タブレットの5.9点に対して、ノートは7.1点と20%高い結果になったとしています。

(2)<主観評価>実験後のアンケートでは、タブレットに比べてノートのほうが「見返しやすさ」で24%、「覚えやすさ」で28%高く評価

※5段階評価の平均値を比較

1~5点で評価された主観評価の得点を比較すると、「見返しやすさ」が、タブレットは3.4点、ノートは4.2点とノートの方が24%高く、「覚えやすさ」もタブレットは3.2点、ノートは4.1点とノートの方が28%高い結果となったとしています。(1回目の実験後アンケート結果)

■ノートの良い点(アンケート自由記入欄より抜粋)

・見開き1ページに全てメモされていることで、視覚としても頭に残りやすかった。
・書いている感覚があるので、触覚的にも覚えやすい。書くときの音もある。
・書いた時の工夫や筆圧の記憶が少しだがあった。慣れている。

■タブレットの良い点(アンケート自由記入欄より抜粋)

・見返しやすい感じがしたのと、消したり書いたりがすぐできる点が暗記しやすい。
・弱い力でも均一に濃く記述できる。
・暗記するために書き込む作業がやりやすかった。

(3)<生理計測評価>見返しおよび筆記による暗記学習において、タブレットに比べてノートの方がリラックス度が高く、ストレス度が低い

脈波の計測試験で、数値が高いほどリラックスしていることを示すHF成分の割合は、タブレットが1.2、ノートが1.5とノートの方が高く、数値が高いほどストレス度合が高いことを示すLF/HF成分の割合はタブレットが2.3、ノートが1.8とノートの方が低いことがわかったとしています。
※数値は、暗記学習時のHF、LF/HF成分の平均値を、安静時(3分間のうち最後の1分間)の平均値で割ったものです。

今回の実験により、紙のノートへの筆記時における記憶効果を科学的に検証できたことは、大きな成果だといいます。コクヨは今後も、実証実験を重ね、学生が快適で効率よく学習できる新商品の開発に取り組んでいくとしています。

4. 共同研究者の紹介

今回の「ノートとタブレットへの筆記における記憶効果の比較」の研究においては、立命館大学 産業社会学部 岡本尚子准教授と共同研究を行ったといいます。
同共同研究は、2024年5月24日の第42回日本生理心理学会大会にて、一部発表しているとしています。

岡本 尚子 氏

立命館大学 産業社会学部 准教授。大阪大学大学院 人間科学研究科 博士課程修了。博士(人間科学)。日本学術振興会特別研究員(DC2,PD)を経て現職。専門は教育工学,算数・数学教育学。

5. 書き心地にこだわった「キャンパスノート」シリーズのご紹介

1975年の発売以来、定番ノートとして多くの方々に親しんでいただけるよう「書き心地」「使い心地」を追求してきたといいます。2008年には東大生のノートから発想を得た「ドット入り罫線」、2022年にはデジタル端末で狭い机上を有効に使うための「ハーフサイズ」、2023年には綴じノートの見開き性を追求した「フラットが気持ちいいノート」などを発売。今後も、目的や用途に合わせて選べるよう、多彩なバリエーションで日常の「書く」をサポートするとしています。

キャンパスノートシリーズ
上段左から:キャンパスノート、ドット入り罫線
下段左から:ハーフサイズ、フラットが気持ちいいノート(ドット入り罫線)

(画像はコクヨ様リリースより)

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