3世代目社長が挑む成長戦略
アール・エフ・ヤマカワ株式会社代表取締役社長 木村 奬 氏 インタビュー
良いデザインの商品を手の届く価格で
スタートアップと共に成長を
司会:現在のオフィス家具市場で勝ち続けるかについてどのようにお考えでしょうか。
木村:大手をはじめ非常に多くの、また色々な企業様がいらっしゃるなか、当社もメーカーとして独自性をだしていかなければと思っています。その点について当社としてはデザインにこだわりを持っていて、そこに重きをおいています。良いデザインのものが高いというのは意味がないと思っていて、デザインにこだわりつつ手の届きやすい価格にするためにかなり企業努力をしているというのが一番のところかなと思います。同じような価格帯の商品のなかではデザインにこだわりを持っていると自負しています。
司会:メーカーとしてトータルで提案をされていますね。トータルで展開できるメーカーというのは少ないのでは。
木村:そうですね。当社も長い間メーカーとしてデザイン製造から販売までを一貫して行うということを強みにやってきましたが、そのようなビジネスを続ける中で、インテリアデザインや設計事務所といったお客様からの案件には一部の家具しか納入できないということや、「家具のコーディネートやレイアウトまで考えてほしい」といった要望も多くあるといったことを踏まえ、徐々に我々も自社の家具で自分たちで空間をつくっていきたい、トータルで提案できるようにしたいと考えるようになりました。トータルソリューションビジネスに着手して今年で8年目になります。当社では「物件」と呼んでいるのですが、おかげ様で物件数もかなり伸びてきています。
「トータルで展開できるとメーカーというのは少ないのでは。 」というご質問に対してお答えするとすれば、オカムラやコクヨ、イトーキなどの大手はもちろん自社でトータル提案をされております。ただし、我々のような中小規模のメーカーは自社商品でトータル提案をすることは難しいため、それぞれが得意な商品開発を行い、お互いに売り買いの取引をしながら補い合うことで、お客様にトータル提案をしております。弊社もここ数年で同業メーカーの仕入先/販売先を急激に増やしており、横の繋がりを大切にしております。
司会:それにはテーマ性の提案と同時に、お客様にとっては、ワンストップという利便性もあるのではないですか。
木村:そうですね。我々として特化しているところは、我々と同じような企業規模の中小企業のお客様のところにそういうサービスを提供したいという思いがあります。充分な人手や時間、予算がなくても企業の成長につながるようなオフィスの移転やリニューアル、レイアウト変更を手軽にできるようにしたいという想いがあります。
司会:そのあたりが御社の強みということですね。
木村:そうですね。当社と似たようなメーカー様では、なかなかそこまで展開されていないところも多いと思います。大手ではやっておられますが、中小を主に対象にしている当社とは市場が違うと思っています。また、当社としてはスタートアップ企業を応援したいという気持ちもあり、起業を始めたお客様に当社の家具を買っていただき、成長と共にオフィス移転やリニューアル、レイアウト変更などのご相談を当社にご依頼いただけるということも目指しているところでもあります。オフィスを大きくする度に、いつでも声をかけていただけるような関係性を築きたい。そのために我々自身も成長していかなければいけないという想いがあります。
「きれいなところに人は集まる」
司会:働き方の変革は売上やデザイン面での影響を及ぼしていると思いますが、これからのオフィス環境や設備はどうあるべきだとお考えでしょうか。
木村:大企業が行なってきた働き方改革での試みが中小規模のオフィスにも波及しています。当社に関して言えば、ここ数年フリーアドレスデスクの売上が好調で、反面、固定席向けデスクが若干減少気味です。人材の雇用や定着が困難となっている今、我々のような中小規模の会社は特にそれが顕著なこともあり、どこの会社も「何かを変える必要がある」と感じているのではないでしょうか。そのとっかかりにしやすいのがフリーアドレス化です。席を固定せず、さらには複数のタイプのデスクからその時の気分や作業によって自分の裁量で席を選べる自由さ、そういったオフィスの使い方も「きれいなオフィス」と同様に働く人の魅力となり得ます。規模の大小に関わらず、これからはまずどういうオフィスなら気持ちよく働けるのか、働きたくなるのかを考えてレイアウトや設備を整えていく必要があると思います。
司会:オフィス環境整備が経営や従業員のパフォーマンスに影響を及ぼすということですね。
木村:以前は企業が人を選ぶという時代だったかと思いますが、今は一人の人が自分が働く企業を選ぶという時代になったと思います。他社と比べてより良いところを出す。どれだけ人に来てほしいかということをアピールしなければいけないという時代なので、オフィス環境はそれを示す大きなファクターかなと思っています。面接に行って、グレーのデスクがただ並べてある殺風景なオフィスよりは、家具選びや色使いにこだわりを感じさせる雰囲気の良いオフィスの方が「ここで働いてみたい」となる可能性が高いでしょう。実際、当社の採用においてもオフィスの印象が決め手になったという声があります。従業員にとっても快適性を意識して整えられたオフィスの方が仕事がはかどる。だからオフィスプランニングが重要なのです。比較的手の届きやすい価格帯で魅力のあるオフィス空間がつくれるということを示しながら、企業価値向上を図るためのソリューションとしてサービスを発展させていきたいと考えています。
司会:一般論としても、オフィスを新しくすることや、働き方を変えていこうという姿勢の見える経営者の方が、新卒で来られる方も来たくなるのではないのでしょうか。
木村:そうですね。それはあると思いますし、仮に私が若い世代でこれから仕事をはじめようとなったとしたら、素晴らしい環境で仕事ができる方がいいなと思うので、そこは1つの要素としてあると思います。もちろん福利厚生だとか、色々な社内制度がある中でのオフィス空間に関しては、1つの大きなファクターだと思います。
司会:それらの動きの中で、中小企業ならではのオフィス環境事情というものがありますか。
木村:中小企業というのは「人」「物」「金」をはじめとして、色々なリソースが限定されていると思います。私も中小企業の経営者仲間が多く、どういうふうどのようにオフィスをやりくりをしていくかということに困っている方が結構いらっしゃいまして、何から手をつけていいかわからないというようなことが多いです。上を見れば大手や有名企業のように、社員食堂も無料で、何でも買い与えてくれるようなところや、テレワークし放題のような企業もあるなかで、中小企業として我々がまず提供できる価値は何かと考えた時に、まず、オフィス空間を変えるということ。それは企業の雰囲気を劇的に変えていただける有力な方法なのですが、かといって中小企業ではそこに何千万円、何億円をかけることがなかなか一気にはできません。我々は、同じような規模・立場ですのでそういう事情がとてもよく理解できます。「この小さい空間だけでも一回変えてみましょう」、という提案をすることができますし、限られた予算のなかで、コストをミニマイズしながら、パフォーマンスを最大限発揮できるようなご提案をできるように頑張っていきたいと思っています。
当社の会長がずっと言っていることに「きれいなところに人は集まる」ということがあります。掃除をするにしてもこだわりを持ち、毎朝15分掃除をするとか、空間がきれいであればそこに人が集まり、そこに情報が落ちるという好循環が起こる。その環境を整理するというところは非常に大事かなと思います。
”きれい”というのは外観的に整っていることに加え、日々手をかけて清潔を保つということでもあります。ビジネスの拠点となるオフィスを常にきちんと整えておくことは非常に大事だと思います。
司会:社員の方も掃除を行っておられるのですね。
木村:掃除の目的には、単にオフィスをきれいに保つということだけではなく、細部に目を配り日々違いを発見してもらいたいということもあります。そういう繊細さは周囲への気配り、”気を利かせる”ということにもつながります。小さな気づきを大事にしてほしいですし、そういう視点がビジネスに活きてくることもあるでしょう。少しずつですが浸透してきていると思います。
アール・エフ・ヤマカワがこだわるデザインと機能性
司会:アール・エフ・ヤマカワがこだわるデザインと機能性とは。
木村:デザイン性と一口にいっても色々なデザインが好きな方がいらっしゃるので、私はデザインには正解はないとは思っていますが、基本的にはそぎ落としたデザインというものを当社としては求めているというところもあるので、継ぎ足しというよりも、どんどんとそぎ落としていくという、シンプルだけれども見た目が美しいというところがまず1つあります。細かいところですが、家具の一部に使われる曲線1つでも、どれくらいのRであればバランスが良く美しく見えるのかというところにこだわってデザインしています。また、基本的に当社の商品は業者ではなくエンドユーザーが組み立てられるようにすべて設計をしているので通販で販売していただくことも多いのですが、フラットパッケージで届いたものをお客様が簡単に組み上げられるところもデザインとして1つのこだわりです。実際組み立て説明書などにも非常にこだわりを持って作っています。他の大型の家具量販店の浸透もあるでしょうが、我々もその昔から組み立て家具にこだわってきているのでその部分に関しては他社よりは秀でているのではないかと思っています。
司会:使用した時に家具がもたらす感覚的なものについてはいかがでしょうか。
木村:結局のところ気持ちがいいかそうでないかというところだと思いますが、感応性の部分では数値化が難しいと思っています。私が気持ちいいと思ったものがほかの人が気持ちいいかというと、また違った感じ方になるかもしれません。何かしらの数値や指標に落とし込まなければならないと思いますが、私としては、なるべくご購入していただきたいお客様の顔を想像しながら商品開発をするというのを一番のモットーにしています。当社の企業理念のなかにある「進化し続けるデザインの良品を環境に配慮して提供していく」という言葉があります通り、常に昔の商品を越えなければならないということは思っていますし、そうでなければ市場に置いて行かれると思いますので常に改良、進化していくことは意識をしています。
司会:今オフィスという市場が様々な産業から注目させていている市場だと思いますがそのあたりについては。
木村:特にオフィス回帰ということがあると思います。一時期コロナ禍でテレワークが盛んにおこなわれましたが、出社に切り替える企業も増えてきていると思います。まだ大手はテレワークを維持しているところも多いかもしれませんが、我々中小企業においてはリソースも限られていますし、一人何役もやらなければならないところも結構ありますので、そういうところでテレワークというのはなかなか合わない企業様も多くいらっしゃると思っています。当社も緊急事態宣言中はフルリモートにしたのですが、これもまたチャンスだととらえてリモートワークにしたときに良かったこと、悪かったことを社員全員にアンケートを行いました。その時に、「通勤しなくていい」、「時間の余裕ができる」という良いところもあったのですが、悪かったことの1つに「腰が痛い」ということがありました。そもそも自宅にイスがないという人もいました。当社のオフィスでは実際に販売している高機能なイスを社員の方に使っていただいているのですが、長時間座って仕事をするなかで、オフィスにあるイスのありがたみを分かったと声にしていただいていることはうれしい限りです。我々もお客様に家具を提案する時に、イスには色々と値段の幅があるなかで、イスに関してはやはり良いものを選んだ方がいいですよという話はさせてもらっています。一番触れている時間が長いですし、そこに対して価値というか座り続けながら、疲れにくいものを社員の皆様に使っていただくと経営者の気持ちというものが伝わりやすくなるのではないですか、というお話を他の経営者に方にはさせていただいています。当社のイスも色々な価格レンジのものがあり、安価なところは1万円くらい、それから2,3万円、そして5万円くらいまであります。そこは経営判断になるのですがというような話をさせていただいた上で、当社の例を用いて社員満足度としてイスは重要なファクターですよということをお話させていただいています。
3世代目社長ならではの経営へのこだわり
司会:事業継承による3世代目社長ならではの経営へのこだわりとは。もともとの創業のことなどもお聞きでできればと思いますが。
木村:当社はもともと私の母方の祖父母が始めた会社です。なので母が山川一族で、父が木村一族なのですが、母方の祖父母が60年前に始めた会社で、そのあと私の父親と母親が結婚して、そこで私の父親が社長になり、それが2代目の社長です。2011年に父親が突然亡くなって、その後母親(現会長)が10年間社長を全うし、2022年に私が社長に就任したということになります。ですから3代目は母で私は4代目なのですが、世代としては3世代目となります。
司会:3世代目の社長としての拘りとしてどのようなことがありますか。
木村:まず生まれたときから会社があったということが大きいのではないかと思います。本当は生まれる前からあるのですが、生まれた時から経営者として育てられているということが1つ大きな要素としてあります。2代目の方々だと生まれた時から社長になると思われて考えている方も少ないのではと思いわれますし、3世代目となるとやはりそこが一番大きな違いかなと思っています。特に祖母が非常に経営に対して色々なこだわりを持っている人だったので、日々子供のころから経営に対しての「いろは」を吹き込まれていたのが大きいと思います。
司会:具体的にはどのようなことがありますか。
木村:「仕入れ先様もお客様」、というのは常に申していましたね。当社に一歩でも入られたら誰もがお客様なので分け隔てなくちゃんとお付き合いしなさいということはよくいわれました。仕入れ先様も幸せではないと長く経営はできない、もちろんお客様を満足させるのは当たり前の話なのですが、それ以外にも仕入れ先様も満足させて気持ちよく当社にきてもらって気持ちよく帰っていただくことは常に心掛けなさいと。三方よしという言葉がありますが、それはずっと昔から実践していたのだと思います。
司会:3世代目の社長としては、今後どのように経営されていくおつもりですか。
木村:受け継がれたものは引き継いでいかなくてはいけないと思っておりますし、それだけでは企業経営としてはいけないので、新しいものをどんどん取り入れながら自分として、社会貢献だとか、社会の役にたつということを会社としても個人としても進めていきたいと思って考えています。社会のためにならなければその存在価値もないと思うので、そのことは根底にあると思っています。
アール・エフ・ヤマカワの成長戦略と今後の展望
司会:アール・エフ・ヤマカワの成長戦略、今後の展望や海外戦略についてお聞かせください。
木村:基本路線としては家具のメーカーとしてスタートしているので、ここは譲れない部分であります。基本路線は大きく変えないかなと思いますが、取り扱うアイテムだとか、価格のレンジ帯だとかなど、そのあたりを広げていかないといけないという使命感がメーカー企業としてはあります。さらに、お話ししたトータルソリューション事業で空間提案力の強化を図っています。市場を広く捉えることで、より良い製品開発、サービスの提供につなげていきたいという考えです。さらに別の事業として、これは本社のある三重県での話になりますが、数年前から介護リフォーム事業にも着手しました。今後ますます需要が増える領域でもありますし、我々自身が三重県でできることを増やしていくことで三重県に本社があるという存在価値を高めていけると考えております。話が少し戻りますが、当社のメーカー事業・TS事業の主要顧客には教育関連施設があり、知名度の高い塾や予備校をはじめ塾経営におけるスタートアップ企業さまにもたくさんのお引き合いをいただいています。つまり、我々はこれらの事業を通じて「塾で学ぶ」「オフィスで働く」「自宅で介護する・介護を受ける」という人の一生の複数のステージに関わることができています。家具は、人が生きていく上でなくてはならないもの、そして各ステージで必要になるもの。私は当社の家具や空間づくりを通じて、人の人生に寄り添いたい。そういう気持ちで企業として、人に、社会に関わっていきたいと考えています。
司会:そうしますと、御社の場合現状柱はいくつあるのですか。
木村:家具メーカー事業、トータルソリューションのオフィスプランニング事業、それに介護リフォーム事業です。メーカー事業においてはOEM・ODMも行っています。
司会:工場をお持ちなのですか。
木村:2006年に国内工場を閉鎖して以来、生産は協力工場で行っておりますので、今はファブレスメーカーです。
司会:塾はどの事業に入るのですか。
木村:塾に関しては、教育施設向け家具の供給ということで家具メーカー事業に含まれます。病院内の家具なども今後手掛けていく予定です。
司会:海外の拠点については。
木村:上海とアメリカに現地法人がありますし、仕入先も韓国、台湾、中国、もうすぐインドが始まるのですが、販売に関してはヨーロッパやアメリカなどにも販売をしています。
趣味は料理 「明日死んだら食べれやん」
司会:社長のプロフィールについてお聞きしますが、まず、ご趣味は。
木村:趣味は料理です。先ほども午前中料理をしていて社員のみんなに振舞っていました。今日は寒いので豚汁などをつくって、家でつくってきたものを持ってきてみんなに召し上がってもらいました。料理が好きなのでキャンプなんかも好きですし、暇があったら料理をしています。外で食べることも好きなので、食べること飲むことも趣味だと思います。
司会:料理をつくることはオフィスをつくることに似ているのでは。
木村:そうですね。デザインすることにも似ていますね。当社の家具をデザインしていただいているデザイナーの方々は料理が得意な人が多いです。
司会:具体的に趣味の料理がデザインに生きて来たことは。
木村:色合いなどは特にそうですね。料理は目で食べるとも言いますが、見た目がよくないとおいしく見えないですから。使う前に見るということでは家具とすごく共通点があると思います。かっこよくないと意味がないなとも思います。
司会:座右の銘などはありますか。
木村:祖母がずっといっていたのが、三重弁で「明日死んだら食べれやん」という言葉ですね。今日食べたいものを食べておけという意味ですが、物事を明日に持ち越すなということ、今日やるべきことをやっておかないと明日死んだら後悔するよということだと思っています。
司会:スポーツ経験などは。
木村:もともとバスケットボールをやっていました。大学もバスケで行っていまして、結構真剣にやっていました。
司会:スポーツ選手がよくキャンプで仕上げるというような表現で実戦感覚を養い、臨戦態勢で公式戦に臨むということが、オフィスやオフィス家具に要素として必要なのではないでしょうか。
木村:オフィス家具だけでなくそれはビジネス全体に必要なことではあると思います。仕事をする上で万全な準備をしておくということが一番大事ですし、かといって準備したところで実戦とはまた違った状況になってきたときの対応力も必要になってくるのかなと思います。そういう意味ではスポーツと似通ったところが多いなと思いますね。相手がこう出て来た時にこう対応するということではビジネスと非常に似ているとは思いますね。
社内外の研修制度を充実 キャリアアッププランを考慮
司会:インタビューに出られた感想は。
木村:個人的には個人としてはあまり目立たない方がいいと思っています。会社としては目立った方がいいとは思いますが。社員を含め全員がスターだと思っていますので。
司会:研修制度も充実されていると聞いていますが、社員教育に関しては。
木村:中小企業なので、採用も難しいですし、以前は離職も多かったのですが、離職する人たちの話を聞いていると研修制度などが充実していないということがありました。そこで研修制度に力を入れるようになり、入社時研修をはじめ、一人先輩社員を専属でつけるブラザー・シスター制度、メンター優遇制度など社内の研修制度を充実させました。社外研修においても社員それぞれに相応しい研修を受講してもらうようにしています。人事が一人ひとりにヒアリングを行いながらキャリアアッププランを考え社員に合った研修を当てます。例えばリーダーを目指している人であれば、リーダーシップを身に着けるための研修を受講してもらったりしています。当社の今の幹部の人も基本的には外部の研修を参加させたうえで今の役職につけているようにしています。それがあるとベクトルが維持しやすいというか、ある程度この情報は共通認識を持てているという部分があるので話が通じやすく、話の目線を合わせる上では非常に大事かなと思っています。
司会:社員の方々の年齢構成などは。
木村:最近キャリアの人たちを採用し始めたので、以前は30前半くらいでしたが、いまは30後半くらいだと思います。その他役員の男女比率、従業員の男女比率なども採用のページで公開をしています。
司会:それらの研修制度などを通じて企業理念や企業のDNAなどが肌感として伝わっていると思われますか。
木村:社歴の長い人たちは理解していると思いますが、若い人たちは、なかなか身についているという部分においてはまだ半分半分かもしれないですね。全員がそれを把握したうえで仕事に臨んでほしいと思っていますが、新しいカタチをそれぞれ自分なりの身体に落とし込むまでしばらく時間はかかるのではないかと思います。しかしながらあくまで会社を続けていくことが大前提ですので、社員の人たちに高見を目指していただくと同時に彼らのプライベートも高めてもらいたいと思っています。その一助になれればと思っています。
五感で感じるオフィスとインターネットでダイレクトに提案
司会:現在の売上高は。
木村:去年約32億5000万円です。この10年でプラス10億円、それまでの1.5倍になり、私が社長になって、50億を目指そうということでやっています。あくまで数字は数字で、やっていることの積み重ねですから、数字を目指すというより日々の行動や内容の方が私としては重要だと思っています。日々行うべきことをちゃんとやっていれば50億は可能だと思います。
司会:御社が考えるオフィス提案とは。
木村:私が考えるオフィス空間提案とは、このオフィスに来ていただくことがまず1つです。東京オフィスがある場所は一般的なオフィスビルではなく倉庫なのですが、ここでお客様の既成概念を壊すという狙いがあります。発想がぶっ飛んだらここまでできるということをご覧いただいて、最大限に膨らませたイメージから少しずつ削ぎ落すことで、お客様のリアリティにどこまで近づけていくかという提案をするのが最終目標です。積み上げていく提案にしていくとどこかで止まってしまいますが、一旦振り切ったところを見せていると、最終的にストップの地点は一緒になるか、もしくは上から削ぎ落していく方が良いものができるのではないかと思っています。そういう提案方法の方がお客様にワクワクしていただけるのではないでしょうか。
司会:空間をいかに感じさせるかということはありますか。
木村:ありますね。当社は今このオフィスを五感で感じるオフィスにしたいと思っておりまして、視覚、触覚はもともとあるものですが、入口を入っていただいて感じられたと思いますが、香りのところもある企業とコラボして入口で香りを印象づけるようなことを行っていますし、オフィス内に音の方も心地よい音も流していまして、自分たちでつくって食べる味覚など、いままで見て、触れてという感覚にそれらの感覚を加えて五感で感じる空間を提案していきたいなと思っています。
司会:トータルでの空間提案が可能ですから、お客様の選択肢の1つとして大手のメーカーと競合することも前提にされていますか。
木村:もちろんそうですが、お客様の規模として大企業は見ていません。中小規模のお客様との商売がターゲットです。ただし販売店として流通のお相手は大企業も多いです。空間の提案の対象となるエンドユーザーとしてのお客様としては5人10人から多くても100人くらいの規模の企業様がお相手です。そこをもっと底上げしたいという気持ちが大きいですね。また、同じ規模の企業をターゲットとしておられるメーカー様もありますが、その方たちとはまた違った路線で独自性を出していきたいと思っています。
司会:展示会などはやっておられますか。
木村:定例的な展示会はやっておらず、主にショールームに来ていただく形になります。見本市に関しても当社のスタッフが出したいと思ったら出したらいいかなと思っています。海外の展示会などには以前はよく出展していました。ちゃんと目的と目標を持ってやらないと、毎年出して変り映えしないのでは意味ないので、毎年違うものが出せるようになったらやってもいいかなと思いますが、もう少し先かなと思います。ただ、営業サイドから出したいという声があれば、そういうボトムアップという形で出せればいいなと思います。その方が社員のモチベーションが上がると思うので、私の方からやりなさいとはあまり言いたくないと考えています。
司会:今後の自社アピールの方法については。
木村:幸いなことに今はインターネットというものがあって、自分が探したいものに最短距離で情報や物に到達できる時代なので、そのあたりに関しては比較的力を入れていきたいと思っています。我々が買ってもらいたいと思っているお客様とダイレクトに繋がっていけるので、そこにはきっちりとアプローチしていきたいと思っています。実際、ニッチではありますが、「塾 レイアウト」など特定のキーワードを入力すると、当社が1ページ目に出てきます。そのような強みを色々な場所で持っておきたいと思っていますし、その中でニッチトップを目指していきたいと思っています。
「楽しめ」が社員へのメッセージ
司会:今後ますます期待できますね。
木村:頑張ります!と今言いましたが、私は社員にはあまり頑張れとは言わないで、「楽しめ」と言っています。頑張るといつか疲れてしまうので、楽しんでいたら疲れないじゃないですか。ですから「楽しめ」という言葉を使っています。