JOIFA、2024新春記念講演会と賀詞交歓会を開催
講演は北方雅人氏の「現場取材から見えてきた人口減少時代の新・成長戦略」
一般社団法人日本オフィス家具協会(JOIFA)は1月11日、東京都港区の赤坂インターシティコンファレンスで、2024年新春記念講演会・賀詞交歓会を開催しました。
新春記念講演会
第1部の新春記念講演会(Zoom併用)では、「現場取材から見えてきた人口減少時代の新・成長戦略」という演題で、日経BP社で日経ビジネス、日経トップリーダー等発行人の北方雅人(ほっぽう まさと)氏が講演を行いました。
北方氏は、2000年頃に始まった生産年齢人口の減少、2015年頃の人口減少を境に状況が180度変わったといいます。例えば、採用面接は選ぶ立場から会社をアピールする時代へ、限られたリソースのなか取引先数を絞り込む時代へ、情報開示においては人的資本、炭素会計、若者が集まる会社などが企業評価の判断のポイント、事業に対しても共感がないと人が集まらない、などという時代の状況が180度転換したとしました。
そのような時代に対応するには東洋思想の大家と呼ばれる安岡正篤氏が唱えた「多長根」、すなわち多面的、長期的、根本的という思考の三原則が有効であるとし、それはアマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏の「ロングターム」という考えとも共通するところがあるといいます。
そして、それらを裏付ける事例として、丸井グループ、アイリスオーヤマ、東邦レオ、ユニクロ、星野リゾートなどの経営者の考え方や実際の取り組みの具体例について紹介、解説しました。
中村会長が新年の挨拶
第2部は新年挨拶(Zoom併用)で、新年の挨拶を日本オフィス家具協会 会長の中村雅行 氏(オカムラ代表取締役社長執行役員)が行いました。
中村氏は、まずはじめに令和6年能登半島地震で被災された方々に業界として心よりお見舞いを申し上げますと述べた後、新年の挨拶を述べ「この時期になりますと、ことしはどのような年になるのかということが注目されますが、アメリカのウォール街で長年にわたって年始になると発表してきたびっくり10大ニュースというのがありまして、今年は残念ながらその書き手がいなくなったので発表がなかったそうですが、代わりに日本経済新聞さんが『大機小機』でびっくり10大ニュースというのを書いていまして、一言で申し上げますと『中東の地域紛争の拡大で原油価格が高騰してインフレの再燃に直面し、日本は円安の加速と日銀の早期値上げを迫られ、トランプ大統領の当選と中国の台湾政策強行などで世界は混とんとする』と書いてあります。年明けから暗い話ですが、きっとこのような予想は当たらないと思いますが、今年は辰年でございます。辰年というのはよく言われるように、活力旺盛になって大きく成長し、形が整う年だといわれています。また、株式相場の格言というのがありまして、皆様ご存じだと思いますが、『辰巳天井、午尻さがり、未は辛抱、申酉騒ぐ』というのですが、一昨日ある証券会社の会長さんがこれを引用して辰年と巳年は株が上がる、過去の事例からいうと、辰年というのは株が平均26%上がる、といわれていました。皆さんお買いになったらよろしいのではないかと思いますが(笑)、そのようないい年になればと思っております。
さて、私たちの業界を取り巻く環境は、それほど悪くないと思いますけれども、先ほど、北方氏が講演で話されていましたとおり、環境がまるで変ってしまったなと思います。1つ大きいのはデフレからインフレに変わったというのは、非常に大きいと思います。いま、色々なものを読んでいますと、インフレになりたいとか、インフレにしなくてはいけないなどと書いてありますが、私はもう世の中インフレではないかと思うのです。それによって、人件費、資材も費用も全部上がり続ける時代がやってきたと思っております。それを飲み込んでこの業界が発展するためには何が必要かというと、やはり付加価値のある提案とか製品、サービスがどうしても必要ですね。やはり、先ほどの講演ではないですが、今までの考え方を180度変えなくてはいけないのではないかと思います。3年続いたコロナで世の中はすっかり変わってしまいました。大手企業でも社員全員がテレワークに移行したというような会社も出て来ている訳ですから、我々が提供している働き方も大きくその提案の仕方を変えていかなくてはいけないのではないかなと思います。
今、働き方が変わって、これからの企業の競争力を創造するための共創作業、それを培うコミュニケーションのあり方はどうあるべきか、というのが経営者の大きな関心事になってきたのではないかなと思います。そういう意味からすると経営者がオフィスに対する投資の重要性を再認識する機会になったと思います。
弊社の事例で恐縮ですが、先日2024年の働き方のキーワードというのを発表しました。それは、3つありまして、1つは「LIFE(ライフ)」というキーワードで、別に生活するというわけではなくて、働き甲斐とかキャリアを柔軟に、のような意味での「ライフ」ですね。2つ目は「WELL(ウェル)」です。Wellbeing、心身ともに健康にいることも含めて、使いやすさとか、利他と多様性、この辺の「ウェル」です。3番目は「COMMUNICATION(コミュニケーション)」ですが、これはチームが主役で、以心伝心、AIと一緒に働くといったコミュニケーションが大事だということです。この辺のキーワードを使って、これから我々の業界でもトレンドをつくって、需要をつくっていきたいなと思っています。
また、今年5月にオルガテック東京が開催されます。テーマが「未来を働くデザインがある」で、ここにいらっしゃる大変多くの皆様方に出展参加の予約をしていただいております。JOIFAの会長として本当に感謝申し上げます。この展示会で業界の新たな需要をつくっていくことができるのではないかと感じております。とはいえ、私たちを取り巻く環境は一方で厳しいものがありますけれども、かたや、DXやAIなど全く新しい技術が出て来てオフィスも新しい景色が出現するのではないかという予感もいたします。
新聞を見ておりますと、経営者のアンケートでは今年の景気は拡大するという方がほとんどでございますので、そういうことを信じて我々の業界がさらに拡大していくことを信じ色々な施策を行っていきたいと思います。
私は、働く場としてのオフィスというのは大切な社会資本の1つだと思っております。それを提案する業界団体として、社会から評価・信頼され、永続的に発展できるように会員の皆様と共に今年一年活動していきたいと思います」などと述べました。
経済産業省塚本企画官が来賓代表の挨拶
続いて来賓の紹介が行われました。
紹介された来賓は以下のとおりです。
経済産業省製造産業局生活製品課 企画官(日用品・地場産業品担当) 塚本裕之氏
経済産業省製造産業局生活製品課 課長補佐 谷口淳子氏
日本オフィス学会 会長 松岡利昌氏
一般社団法人ニューオフィス推進協会 専務理事 竹森邦彦氏
一般社団法人日本家具産業振興会 専務理事 高橋清司氏
デザインオフィスf&f 代表 藤村盛造氏
SOMPOリスクマネジメント(株) 常務執行役員 原敬徳氏
SOMPOリスクマネジメント(株) 企画開発グループリーダー 鈴木健一郎氏
ケルンメッセ(株) 代表取締役社長 高木誠氏
ケルンメッセ(株) プロジェクトディレクター 松岡靖之氏
ケルンメッセ(株) シニアマーコムマネージャー 丹野牧子氏
監査法人ユウワット会計社 代表社員 木地健介氏
日本経済社 執行役員 深澤博氏
日本経済社 第1営業局 第2営業部 鈴木亮氏
来賓挨拶を経済産業省製造産業局生活製品課 企画官 塚本裕之氏が行いました。
塚本氏は「冒頭、1月1日に発生をいたしました令和6年能登半島地震においてお亡くなりになりました方に心からご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様方にお見舞い申し上げたいと思います。経済産業省といたしましても発災の直後から電力、ガスのエネルギーインフラの復旧、それから暖房器具とかそういった生活用品に関わる部分の所管物資のプッシュ型の支援なども実施しております。また、コンビニ等を通じての食糧支援なども実施しております。私の生活製品課はまさに生活用品の物件を担当している所管でございまして、生活が関与なども元旦から支援の対応にいま当たっているところでございます。また、中小企業・小規模事業者の資金繰り支援とか、今後の色々な支援についても、我々として鋭意検討しているところでございますので、被災地の復旧・復興が進むように我々としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。
さて、コロナの方も収束しまして、だいぶん世の中の動きも活発になってまいりました。そうはいっても国際情勢で、ロシアのウクライナへの侵攻の問題とか、中東の問題とかありまして、いろいろ不安定な情勢にある状況でございます。こうしたなかで原料高など業界の皆様方への影響もあろうかと思います。他方で我が国の経済は長年続いたデフレ構造から脱却するために昨年は賃上げとか設備投資とか3年ぶりの高水準になるなど潮目の変化も生じているところでございます。昨年末には17兆円規模の経済対策も実施しておりまして、いま当省でもGX、DXのところについても各種政策にこれから取り組んでいくところでございます。こうしたことにしっかりと対応して今年は日本経済がますますよくなっていくことに我々としても取り組みたいと思っております。
また、オフィスの家具の業界ということになりますと、コロナによってだいぶん働き方も変わったということなのだと思います。私は日経ニューオフィス賞の審査員をさせていただいておりますけれども、昨年も大変素敵な、興味深い取り組みをされているオフィスを審査させていただきました。やはり、いままでのオフィスとは全く異なるコンセプトであったり、什器、備品といったところもかなり昔とは違う、コロナ前とは違うものが取り組まれているなという感じがいたしましたので、新しいオフィスにまた、オフィス業界の皆様方もいろいろな取り組みを支えていかれるのではないかと思っております。また、昨年開催されたオルガテック東京のオープニングセレモニーに参加させていただきまして、そのあと会場の方も拝見いたしました。来場者数が26000人を超えるということで大変盛況だったとお伺いいたしました。今年は5月に開催されるということもお聞きしておりますので昨年以上にまた盛況になることをお祈りいたしております。今年がオフィス家具業界に皆様方にとって良い年になることをお祈りいたします。」などと述べました。
賀詞交歓会では山田副会長が乾杯の発声
引き続き第3部として会場参加者のみの賀詞交歓会が行われ、乾杯の発声を日本オフィス家具協会副会長の山田匡通氏(イトーキ代表取締役会長)が行いました。
山田氏は乾杯に先立ち挨拶として、令和6年能登半島地震と同日起こった羽田空港の事故で亡くなられた人々に対しての冥福を祈るとともに、被災された人々に対するお見舞いを述べた後「オフィス家具事業の今後の方向について、私はかなり前向きに捉えております。コロナというものを通して、北方氏の講演の中での「多」「長」「根」の「根」のところ、根本的にオフィスとは何なのか、オフィスに一体何が求められているのか、基本的な認識としての議論になったと思います。そこで出てきたことで私が思うには、人が集まるということによって明らかに新しい価値がそこで生まれてくる。単なる事務の仕事をしていく、事務的な手続きということは一人でもできるかもしれない、ある程度のコミュニケーションはオンラインでできるかもしれないけれど、人が集まることによって明らかに価値創造が違ってくる。リアルで集まった時に一言もしゃべらなくても、集まっただけでそこに新しい雰囲気が盛り上がってくるということを感じられたことがあると思います。オフィスというのはその価値があるのだと思います。人が集まり、そこで新しい価値が生まれてくる。人々の協業によってしか新しい価値というものは生まれてこないのだと思います。そのなかで、私の持論なのですが、人がオフィスをつくるのだけれども、逆に、オフィスが人をつくるのです。オフィスの環境によって働き方が変わると同時に、オフィスによって人が集まり、そこで新しい価値が生まれて、そこで人が成長していくという。そういう効果があるということがオフィスにはあるのだということがコロナを通して再認識されたのだと思います。また、集まるのは必ずしも社員だけではないのです。ここがポイントで、お客様を含めて、我々がつくるオフィスに集まってそこで議論が始まって新しい価値、新しい働き方が展開されていくというふうにオフィス事業というものは展開されていくのではないかと思っています。我々の行っている事業は、社会を変えていく価値創造の原点を社会に対して供給している、そういう偉大なる事業ではないかというふうに私は思っております。人がオフィスをつくる、オフィスが人をつくる、それによって新しい価値を創造し、社会を変える、この時代に向かっていくのではないかということを新年に期待して乾杯の音頭を取らせていただきます」などと述べ乾杯の発声を行いました。
塚本副会長が中締めの挨拶
和やかな歓談の後、中締めを日本オフィス家具協会副会長の塚本幹雄氏(コマニー代表取締役会長執行役員)が行いました。
塚本氏は、「本年は早々から能登半島地震、そして羽田での事故、年明け早々大変な年のスタートとなったと思います。一方では今日、日経225が35000円を超えるということで、いい意味で大きな変化だなと思います。今年も大きな変化、出来事は当たり前のように起きていくのかなと思いますけれども、私どもは石川県ですから、直接地震にあったことになっていますが、こういう変化の大きい時こそ、一喜一憂することなく今あることを受け入れて、そして、どうあるべきかということを考えて、前向きに物事を行っていくということが大事だなと一生懸命、今、自分に言い聞かせています。今年も激動になるのは間違いないのではないかなと思います。そのなかで、先ほどの中村会長が詳しくお話なさいましたけれども、企業としては、世の中にどれだけお役に立つことができるのかということをベースに考えていくことがすごく大事で、そのためには、「質」をいかに高めるかということを追求する。それが付加価値をいかに追求していくかということになるのではないか、それを徹底的にやっていくことがすごく大事なことではないかと思っています。是非皆様と共に「質」の追求、そして付加価値を高める、ということを共に頑張っていきたいなと思いますし、是非皆さん頑張っていきましょう」などと述べ、令和6年能登半島地震で被害を受けた人たちの一日も早い復興を祈りつつ、一本締めで会を締めました。