オカムラ、物流ピッキングロボット遠隔操作時の力覚フィードバック効果の調査研究を実施

物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE(プログレスワン)」の事業化に向けた取り組み

 オカムラは、自律・遠隔操作ハイブリッド型ロボットによる物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE(プログレスワン)」の事業化に向けた取り組みの一環として、物流ピッキングロボットの遠隔操作時の力覚フィードバック効果の調査研究を実施したといいます。同研究は「サイズや出力が異なるロボットの遠隔操作時の力覚フィードバック効果の先導調査研究」としてモーションリブ株式会社と共同で実施したとしています。

同社によると、遠隔操作ロボットシステムにおいて、オペレーターが遠隔地から物流現場にあるロボットでピッキング作業を行う際に、操作画面による視覚的な判断だけでは、遠隔での把持(しっかりものをつかむ)操作が困難であることが課題となっていたといいます。「プログレスワン」の事業化を進めるにあたり、視覚に加え、力覚フィードバックで操作性を高める開発・研究が必要だったとしています。

同研究は、ピッキングなどの物流施設内作業を想定した遠隔操作ロボットシステムにおいて、オペレーターが遠隔地からディスプレイを見ながら作業を行う際に、複雑な動作になるほどロボットが物体と接触した時の引っ張られる・押されるなどの力覚情報を人に知覚させる力覚フィードバックの重要性を実証するとともに課題を検討したといいます。実験結果から、力覚フィードバックが遠隔での把持操作や緩衝材の押し込みを効率的に行うために必要不可欠な機能であること、オペレーションの熟練者と初心者ではそれぞれ必要とする補助機能が異なることなどが明らかになったとしています。

遠隔操作ロボット実験装置

この研究は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が昨年22年度に公募したプロジェクト「ロボットによる社会変革推進に向けたロボット・AI部事業の周辺技術・関連課題に係る先導調査研究」として採択されたといいます。また、「第41回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2023)」のオープンフォーラム(2023年9月11日開催)にて講演を行ったとしています。

■研究の概要

同研究では、オペレーターが遠隔地からディスプレイを見ながら作業を行う際の力覚フィードバックに関する課題の特定と課題解決の検討のため、2段階で実験を行ったといいます。
まず、同じ型式のロボット2台を接続してオペレーター(プライマリー側)と作業用ロボット(セカンダリー側)で出力差がある遠隔操作環境を簡易的に構築し、物流現場で想定される遠隔操作作業(デモ作業)を通して、力覚フィードバックの有無が遠隔操作に与える影響を定量的・定性的に確認したとしています。力覚フィードバックには、リアルハプティクス®※を搭載したシステムを使用したといいます。物流現場のピッキングや緩衝材を詰める作業において適切な変位や力の増幅率が、遠隔操作に与える効果を確認したとしています。また、オペレーターが操作を行う際に、リアルな操作感を再現するための変位や力について課題を特定したとしています。
次に、プライマリー側とセカンダリー側で大きさの違うロボットを用いて、同じ型式での実験で効果がみられた倍率の組み合わせを検証したといいます。変位や力についての課題解決として、オペレーターの補助機能となるディスプレイに表示するユーザーインターフェース(UI)の有効性を確認したとしています。

※アクチュエータの力加減を自在に制御することができる技術。同研究では、この技術を簡便に実装できるモーションリブ株式会社の汎用力触覚ICチップ「AbcCore®」を搭載したシステムを使用。

■主な研究結果

・ロボットの遠隔操作において、力覚フィードバックは、ピッキング作業や緩衝材の押し込みを効率的に行うために必要不可欠な機能であることを確認したといいます。力覚フィードバックがない場合、対象物を倒したり、つかみ損ねて破損させたりして、把持に失敗することがあるとしています。

・ロボットの遠隔操作において、オペレーターが熟練者である場合と初心者である場合では、必要とする補助機能が異なることが確認できたといいます。熟練者は、視覚補助や空間認識補助、力覚認識の補強に影響するUIは必要としませんが、移動量と力の倍率を自身で変更できるスケールセレクタ機能は有効だったとしています。初心者は、視覚補助や空間認識補助、力覚認識の補強に影響するUIにより、作業効率の向上や心理的負担の軽減を図ることができるとしています。

オカムラは、これらの研究結果を生かし「PROGRESS ONE」の事業化に向けた研究や開発を進めていくとしています。
新しい技術やアイデアを取り入れ、より優れたロボット技術の開発を行うことで、物流業界のさらなる発展に貢献するとしています。

「PROGRESS ONE」について

「PROGRESS ONE」は、オカムラが事業化を進めている、AIを搭載したロボットによる自律ピッキングとロボット単独では難しい作業を遠隔操作技術の活用により、人が倉庫から離れた場所でロボット操作を行い遠隔でピッキング作業を行うハイブリッド型の物流自動化ソリューションだといいます。AIを活用したロボットの自律動作とオペレーターによる遠隔操作を使い分けるハイブリッド動作制御を実現し、従来の自律型ロボット単独では難しい作業や多種多様な商品への対応が可能だとしています。AI搭載ロボットを操作するオペレーターは、倉庫から離れた都市部や住宅地などの利便性のよい場所に設けられたオペレーションセンターへ勤務し遠隔操作を行うことができ、物流現場での新しい働き方を実現するといいます。これにより、従来の運用では時間や場所、身体などの制約によって物流現場で働くことが難しかった働き手へ雇用を創出するとしています。
「PROGRESS ONE」という名称は、"Picking Robot of Grateful Engineering Smart System"の略称であると同時に、物流業界における働き方を前に進める一助となるとの意味を込めているとしています

(画像はオカムラ様リリースより)

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