《日経ニューオフィス賞》 NOPA、第36回日経ニューオフィス賞の表彰式を開催

経済産業大臣賞は兼松東京本社オフィスが受賞

(一社)ニューオフィス推進協会(NOPA)は2023年9月6日、東京都千代田区大手町の日本経済新聞社東京本社ビルで、第36回日経ニューオフィス賞表彰式を開催しました。

第36回日経ニューオフィス賞表彰式開催の様子

日経ニューオフィス賞は、一般社団法人ニューオフィス推進協会と日本経済新聞社が主催。経済産業省と日本商工会議所が後援する、ニューオフィスづくりの普及・促進を図ることを目的に、創意と工夫を凝らしたオフィスを表彰する制度。

三栖会長の主催者挨拶

表彰式では、主催者挨拶をニューオフィス推進協会会長の三栖邦博氏が行い「この表彰事業の目的は、創意と工夫にあふれ特に優れた先進的なオフィスを顕彰しニューオフィスの具体的模範事業として公表。そのことを通じて我が国のオフィスづくりの普及促進を図ることでございます。本日受賞されたオフィスはまさに模範となるオフィスでございます。このようなオフィスをつくられた皆様方の高いご見識とご熱意にこころより敬意を表さしていただきます。今年も全国から数多くの応募をいただきました。応募数全体としては、例年並みの132件の応募となりました。応募の内容の目立ったことの1つに地方の大都市や首都圏周辺部の先進的で大規模な研究開発系のオフィスが多かったことがあげられます。我が国のものづくり産業の健全な発展と研究開発への旺盛な投資が背景にあることがあります。応募オフィスの審査にあたられた古谷審査委員長をはじめ全国および各ブロックの審査委員の先生方には精力的にご審査いただきましてありがとうございます。また、ご応募いただいた企業の皆様、現地審査にご協力いただいた企業様にこの場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

主催者挨拶を行う三栖会長

応募オフィスを見せていただいて実感したことを2点あげたいと思います。1つはオフィスで働く人にどのような価値を提供できるかというEVP(Employee Value Proposition)の観点がオフィスづくりでますます重要になってきていることが、近年オフィスづくりの中心的課題になってきているWell-beingの向上とその背景にある人材を資本と捉えその価値の最大化を図る人的資本経営が重視されるなかで、オフィスで働く人々への提供できる価値の具現化としてオフィスが認識されはじめてきているという実感を今年は特に強くいたしました。働く人への価値に焦点を当てたオフィスでは、働き方と設えが調和し働く人々がいきいきと楽しみながら働いている空気感が自然と醸し出されているのが実感されました。オフィスづくりは働く人々の場づくりであると同時に振る舞いづくりであるという思いを強くいたしました。

もう1つはこの数年の間でオフィスの景色が大きく変わってきたことがあります。コロナの前後で最も顕著なワークスタイルの変化はハイブリッド、ABW、フリーアドレスの定着だと思われます。いずれも根底にはテレワークの飛躍的な普及をしたことがあり、それによりオフィスの形式を大きく変えました。一人でできる仕事は自宅で、コミュニケーションを伴う対面ワーキングの共創の場がオフィスという認識が経営者にも従業員にも浸透し、その結果、均質な空間に執務デスクがずらっと並ぶ従来型の風景がなくなり、変わってラウンジやサロン、ファミレスやキャンプ場などのさまざまな設えを中心に多彩な場が展開するケースが主流になってまいりました。そこでは目に優しい豊かな色彩やアートワーク、雰囲気を演出する照明、小川のせせらぎや鳥の声、さらにはアロマの香りなど五感に刺激を与える多様な取り組みが見られます。感性を刺激し、創造性を豊かにする取り組みは今後さらなる変化を見せ、オフィスの風景をかえていく、そういう予感がしております」などと述べました。

橋本真吾経済産業省大臣官房審議官の後援代表挨拶

後援代表挨拶を行う橋本審議官

次に後援代表挨拶を経済産業省大臣官房審議官(製造産業局担当)の橋本真吾氏が行い「新型コロナウイルス感染を経験いたしましてオンライン勤務が広がったことや世界経済が大きく変革の時期を迎えているというなかで、オフィスに求められている機能とそこから生み出されていく価値というものが大きく変容しております。今回受賞されました皆様のオフィスにはコミュニケーションの活性化という面、また、集中して作業するといったこととリラックスすることの両立といった、現代のオフィスに求められている新たな価値、課題につきまして具体的な答えをそれぞれの企業の文化価値に合った形で、明確に実現されているものと考えております。本日受賞されました皆様のオフィスやこの受賞式が今後多くの企業に着目されまして、それを起点に、それぞれの企業に合ったオフィスづくりが日本全体に広まっていくと、そうしたものを通じて我が国経済の新たな発展に繋がっていけばよいと期待をしているところでございます」などと述べました。

審査委員の紹介

続いて、審査委員の紹介が行われました。紹介された審査委員は以下のとおりです。(紹介順)

審査委員長
古谷 誠章氏  (建築家・早稲田大学 教授)
審査委員
岡田 謙一氏  (慶應義塾大学 名誉教授)
木川田 一榮氏 (大阪大学 元教授)
中田 重克氏  (公益社団法人 日本インテリアデザイナー協会)
平手 小太郎氏 (東京大学 名誉教授)
平野 哲行氏  (株式会社平野デザイン設計 代表取締役社長)
清水 桂子氏  (日本経済新聞社 編集 グローバル消費産業担当 企業報道部長)
三栖 邦博氏  (一般社団法人ニューオフィス推進協会 会長)
中村 義人氏  (公認会計士)(懇親パーティから出席)
塚本 裕之氏  (経済産業省 製造産業局 生活製品課 企画官)(当日は欠席)
仲 隆介氏   (NAKA Lab代表・京都工芸繊維大学 名誉教授)(当日は欠席)

古谷誠章審査委員長の講評

講評を審査委員長の建築家・早稲田大学教授の古谷誠章氏が行い「これまで何年かこの賞の審査をさせていただきましたが、その多くがコロナのようなことが起こることなど思ってもみない頃に構想が始まったオフィスです。今年受賞されているオフィスもそれなりの年月をかけてご準備されていますので、その多くはコロナ禍の始まる以前からご計画をされてきたものが多いと拝察されますが、それでも、このタイミングになってコロナを経験したいま、振り返ってみて、そしてその中に優れた先見の明をお持ちで素晴らしい企画を立てられていたことが大変驚きでもありますし、こうして今日表彰されますオフィスのお考え、コンセプトというのはそういう意味で誠に正しい先進性を備えたものだと解しております。なかでもコロナ禍にあって、オフィスに人々が集う意味というものが見直されてきたわけですが、同時に優れた発達した通信手段があって、それに皆さんが習熟したこともあって一説には会社に行かなくても仕事ができるのではないかと思われるようなそういう節もございましたけれども、それを経験したなかでもう一度考えてみたときにオフィスに集うこと、過ごす時間のなかにあるというようなものに皆さん再び着目されているそれが顕著に表れているというふうに思います。去年まではコロナ禍によって生じたスペースの余剰であるとかといったものをこれまでのオフィスにはない新しい価値を生み出す場所として共創の場として工夫されてお使いになっている例が多かったように思いますけれども、今年はさらにそれが一歩踏み込まれたかたちでそれぞれの社員の皆様が会社に来る意味、あるいは楽しさといったようなもの、そういったものに気づかせてくれるようなそういうオフィスが多かったように思います。そういうものをつくるときには、どんな会社にも通用する1つのやり方というものはなく、各社がそれぞれの個性と企業の姿勢や社風、いろいろなことがあるかと思いますが、それに基づいてご自分の会社において最もふさわしい人々が集う場所としてのオフィスはどうなのかなというのをほとんど社員の皆さんも一丸となって考えられてきた、そういう感じがひしひしと伝わってまいります。

講評を行う古谷審査委員長

時間に限りがございますのでほんの少しだけ述べさせていただきますが、兼松東京本社オフィスは入った瞬間にわかるのですが、会社の受付に入ったという雰囲気ではありませんで、これはホテルのレセプションとラウンジではないかと思うような気配もありますし、さらにはオフィスフロア全体がカフェのようなそこここにさまざまな工夫に満ちた空間が用意されているなかで、社員の方々が自由にその場を選び取って仕事にいそしんでおられる、あるいは仕事というのも没入されている方もいれば、みんなでグループワークをされている方も多くて、しかもこのご時世にあってかなりの出社率、かなり大勢の方がオフィスにいらっしゃるという気がいたしました。非常に活気のあるオフィスでありました。それだけ、先ほど申し上げましたように会社に来たくなるオフィス、あるいは会社に来ることによって初めてできることの価値というものを皆さんが十分に感じてらっしゃって、その目的に合わせて集っておられるなという感じがしたところでございます。しかも、会社の若い皆さんも一丸となってそのオフィスづくりをしたという経緯がなんとなくそこら中から感じられる、皆さんが愛着をもってオフィスを使われている様子がとても新鮮に感じましたし、これからの1つの方向性を発信しているなと思った次第です。

次に、クリエイティブ・オフィス賞を受賞された4つのオフィスでございます。
SAPグループ本社オフィスは柔軟な発想でできているし、まずオフィスのレイアウトそのものがまっすぐ並べるのではなくて45°に並べ方を変えるだけでガラッと雰囲気を変えていらっしゃるという、そこにある種のやわらかさ、人と人とが横並びになっているのではなくて、出会う場所としてのオフィスづくりがされていたと聞いております。

JLL東京オフィス、これもまさにこれからのオフィスを代表するオフィスだと思います。グローバルな不動産事業を展開されているのにふさわしい非常に国際感覚にあふれていますし、そして皆さんが思い思いに場所を選んで執務されるのにふさわしいバラエティというかバリエーションを備えている、机が並んでいるオフィスのちょうど対極にある姿を指し示していると感じました。

日本ロレアル本社オフィス、これも大変驚きました。これも企業の扱われている内容が、ファッション関係のいくつものブランドを扱われている会社ということで、ちょっと一般的な企業、商社や不動産のオフィスと違うのは当然なのですけれども、まるでそこがいろいろある化粧品の1つの世界がつながりあっている、百貨店の1階の化粧品フロアに入ったのではないかと思うようなオフィスでございますが、非常に楽しいしいきいきとして華やかなオフィスです。これはそこにお勤めになっておられる方が日々その会社に勤めているということを実感するような、あるいは誇りに思うようなというような感覚に満ちていたなと思うんですが、1つ何よりも驚いたことは普通テナントとして入られているオフィスは、共用部分と借りてらっしゃる部分が厳密に線を引かれているのですが、その境界線にまで及んでそこをガラス張りにしてしまわれて、そこがまるでその百貨店のお店のコーナーであるかのような演出をされていて、エレベーターホールにまであふれている大変意欲的なテナントオフィスとしては異例ではありますけれど、そのエネルギーが満ち満ちている、それを感じたところであります。

最後に、ミズノイノベーションセンター、これも見るからにスポーツ用品のメーカーであることが体現されている、トラックにせよジムにせよいろいろなものがオフィスのなかに綾織のように混ぜ込まれているオフィスでこれもやっぱり社員の皆さんがその会社に勤めているということを日々実感されるのではないかな、その中から新しいアイデアが出てきそうだなと感じさせるように聞いております。いずれも先ほど、三栖会長がおっしゃっていたEVP(Employee Value Proposition)、つまり働いている方々がどのようにその中の価値を見出すことができるか、そういうことを創意工夫されているオフィスが本当に綺羅星のように並んでいる、素晴らしいオフィスを拝見させていただいたことを大変光栄に思います。」などと述べました。

表彰

その後表彰が行われ、ニューオフィス推進賞16件、(うち、経済産業大臣賞1件、クリエイティブ・オフィス賞4件)、関東ニューオフィス奨励賞3件がそれぞれ紹介され表彰されました。
表彰されたオフィスは以下のとおりです。(表彰順)

ニューオフィス推進賞

兼松 東京本社オフィス(東京都千代田区) <経済産業大臣賞>
SAPグループ本社オフィス(東京都千代田区)<クリエイティブ・オフィス賞>
JLL 東京オフィス(東京都千代田区)<クリエイティブ・オフィス賞>
日本ロレアル本社オフィス 「ビューティーバレー」(東京都 新宿区)<クリエイティブ・オフィス賞>
ミズノ イノベーションセンター 「MIZUNO ENGINE」(大阪府大阪市)<クリエイティブ・オフィス賞>
ウェルネット札幌本社オフィス(北海道札幌市)
京セラ きりしまR&Dセンター(鹿児島県霧島市)
クボタ グローバル技術研究所 A棟 (大阪府堺市)
Kurita Innovation Hub(東京都昭島市)
JR東日本 東京建設プロジェクトマネジメントオフィス(東京都品川区)
住友生命 東京本社オフィス(東京都中央区)
中外ライフサイエンスパーク横浜(神奈川県横浜市)
凸版印刷 expace office(東京都台東区)
三井物産都市開発 本社オフィス(東京都港区)
三菱地所ホーム本社 TOKYO BASE(東京都新宿区)
molten [the Box] (広島県広島市)

関東ニューオフィス奨励賞

住友ファーマ 東京本社オフィス(東京都中央区)
商船三井本社オフィス 5-6階、8-14階(東京都港区)
LIXIL本社オフィス24階(東京都品川区)

経済産業大臣賞を受賞した兼松に関しては以下のように紹介されました。
兼松は、「貿易商権を日本人の手に」との理想を掲げ1889年に創設。事業創造(0から1を生み出す)を重視し、国内外のパートナーと共に「事業をつくりあげること」に注力する、独自の位置づけの総合商社である。
兼松東京本社オフィスは、その位置づけを確固とし、30年後を見据えた新たな成長ステージへと移行すること、また、それらを内外に示す役割を持っている。そのために東京駅直結の機能の充実した高層オフィスビルに、抽出した経営課題「パートナーの利便性の向上」「従業員満足度の向上および生産性の向上」「を解決する、“be.(ビードット)”;ひとり一人が成りたい自分を持ち続けること」をコンセプトとした、「協創し新たなイノベーションを生む」「プロフェッショナルとして行動する」「固定観念を打破し多様化を受け入れる」という、兼松に関わる全ての人々が集う環境を構築した。
「兼松らしさ」を継承し、働き方を変え、部門を超えた「付加価値」を生み出し、ビジネスを自らが構築する、プロフェッショナルのためのワークプレイスである。

谷川薫兼松代表取締役会長の受賞オフィス代表挨拶

受賞オフィス代表挨拶を行う谷川兼松代表取締役会長

受賞オフィス代表挨拶を兼松株式会社代表取締役会長の谷川薫氏が行い
「当社は昨年の11月に丸の内のKITTEビルに移転をいたしました。実は30年ぶりのオフィスの移転になります。当社は創業から134年目になりますけれども、その多くは東京駅周辺でオフィスを構えて事業をしてまいりました。いろいろな変遷がございまして、また、丸の内に戻ったというような状況です。その移転を決定しましたのは、先ほどのお話にもありましたけれども、コロナの前、2018年の9月でございました。その少し前から移転の話はありましたが、当時はどこに移転しようかどれくらいの規模にしようかという話のなかで、物件がありましてそこで話を進めたわけでございます。しかしながら、オフィスを決定した直後、皆さんご承知のとおりコロナ感染症が世の中に蔓延をいたしまして、簡単にいうと暗雲立ち込めるというような経済状況になりまして、私どももここは一体どうすればよいのか、というような議論もありましたけれども、やはり新しいオフィスに移転をして、新しい環境の中で、新しい仕事をするんだという強い思いをもって移転を決行することといたしました。
当時は、いまもそうなのですが、中期経営計画を走らせておりまして、そのなかで質の向上というものを1つ掲げておりました。この質の向上というのは、役員、従業員の質の向上をするとともに、オフィス環境、職場環境といったものを改善していこうとオフィス空間をあげていこうと、そういったような取り組みをしておりました。何といっても人的資本というのが商社にとっては極めて重要だということで、その人的資本を重要視した質の1つといったことになります。しかしながら、コロナの最中は皆さまもご記憶かと思いますけれども、在宅勤務、私どもも多い時には8割がた在宅勤務になりまして、移転の議論もままならぬということもあったのですが、当時私の方から皆さんに指示をしまして、若手を中心とした新しい考え方のチームを組んでオフィスの環境を整えようということになりまして、若手の皆さんが中心となっていろんな試作を出して考え抜いていただいたということでございます。
基本的には30年後を見据えた当社の成長を支えるワークプレイス、そんなものをつくりたいということを目指していきました。最初の時点で私の方から事務局にいくつかお願いしたのは、まずお話したのは、オフィスは先進的である、もっとも先進的なオフィスにしようということを話をいたしました。これはIT環境とかそういったもののみならず、仕事の動線であるとか仕事の在りようであるとか、そういったことを先進的であろうということで事務所のデザインをしていただきたいというふうにお願いしました。当然のことながら、様々なIT機器が入り、仕事の動線も素晴らしいと思いました。2つ目に完全フリーアドレスにしようと指示をいたしました。これはともすれば組織に囚われがちのビジネスや人、こういった横のつながりがなくなってしまうようなそういった環境にこれまでありましたので、やはり商社であるかぎり、さまざまな事業が連携してビジネスを展開すべきであるということから、固定した席をなくしてしまおうというふうにしました。
これは結構賛否両論ありまして、役職者からは大きな反対を受けました。そもそも自分の部下がどこにいるかわからない、といった考えですが、そこを押し切りまして、現在においては完全フリーアドレスとなっております。当社のなかはどこで働いても結構、誰と隣に座っていてもOK、どのような仕事のスタイルをとってもOKということになりました。ついでに副産物として、服装もそれだったら何でもいいのではないかということになりまして、TシャツOK、ジーパンOKということになりまして、現在当社の社内は様々な服装で皆さんが様々な思い思いの仕事に向かって邁進しているというような環境が生まれました。結果的にいわゆるABWというものに繋がっていくわけですが、こういったことも議論の末出てきたということになります。
もう一つ私どもは、東京本社の従業員は700人少しなのですが、グループ全体をあげますとその10倍ということになりまして、しかもグループ全体で収益をあげていくということですのでやはりグループの人たちが自由に出入りできるオフィスにしたいというような話で結果的に私どものカフェテリア、パーチという名前なのですが、カフェテリアについてはグループの人たちはいくらでも出入りができる、いつでも会合ができる、グループの人たちがお客様を連れて、東京駅周辺で会議をしたいという時には本社の会議室を使える、そういうような環境をつくりました。結果的にこれも功を奏しまして、多くのお客様に自由に来ていただけるそのような環境が整いました。
そのようなことをいくつかお願いをして若手を中心としたワーキンググループがいろいろなことを考えて現在のオフィスになっております。これをやることによりまして、従業員同士、部門間、関係会社、グループ会社、お客様とのシナジーを強く打ち出していこうということで、オフィス環境を整えるということになりました。なかでも私が一番こだわりましたのが、私ども2フロアなのですが、上と下をつなぐ内階段を必ずつけてくれとお話をしまして、そこは実現していただきました。もともとは螺旋階段がいいといったのですが螺旋階段は高いということで普通の階段になりましたけれども、その階段があることで人と人との交流が生まれるということになりました。私自身も毎日1回カフェテリアにコーヒーを買いに行くのですが、その階段を通って降りていきます。そうしますとさまざまな従業員とすれ違い、元気そうにしているなとか、向こうも私のことを見てまあ元気そうだなと思うことがあると思うのですが、そういった中から交流が生まれ、そこから見える景色、いろいろなものが目に飛び込んで活発に議論しているな、若手同士で話しをしているな、そういうこともよくみるようになりました。こういったこともやはり新しいオフィスでこそのシナジー効果ではないかなというふうに思います。
それから私が指示をしたわけではないのですけれども、若手なのか中堅なのかわかりませんけれど、役員を一堂に集めたらというような提案がございまして、先ほど申し上げた階段のすぐ近くにガラス張りの役員室をつくりました。これが実はとてもよく機能をしております。各役員は決定権を持っているし、情報源も持っている、様々なビジネスも良く知っている。その役員たちが1つの部屋に戻ってきてまた出ていく。また情報を集めて帰ってきて隣同士でまたディスカッションをする。したがって、私ども様々な事業があるのですが、電子の人が横を向くと畜産、例えば牛肉を扱っている役員と隣同士で話し合う。こういったことで様々な事業を生み出していくことができるようになりました。これは下から上がってきた提案で私が受けたのですが、そういったことがみんなのところから生まれてきました。そのガラス張りの役員室を我々は金魚鉢と呼んでいるのですが、外から非常によく見える感じになっております。こういった最新のオフィスも先ほど申し上げましたような若手を中心としたワーキングチーム、JPタワーに移転したものですからJPチームと呼んでおりました。そういったところから生まれてきたものでありますし、大変お世話になりました、設計、プロジェクトマネジメント、施工の方々の努力の賜物だと思います。
今回オフィスを移転するにあたりまして、スぺースを前のオフィスからくらべると2割くらい減らしました。従業員の数は同じなのですが、そこをどうやってカバーするのかを考えた末、やはり書類を減らそうということになりまして、2年前から断捨離を行いました。書類を思い切って捨てました。捨てるといってもデジタル化してからでないと捨てられないわけですが、その断捨離プロジェクトを何度も行い、ようやく今のオフィスのスペースにまで減らしました。これも役員から新入社員まで一人ひとりが目的を理解して努力してくれたおかげだと思います。今回、この賞をいただいたのも上から下まで一丸となってオフィスの移転を成功裏に実現させるのだという強い思があってそして実現できたというふうに思います。これからはこのオフィスを大きく活用して、事業シナジーを創造し、そして会社も大きく成長していくというステージにしたいと思います。
これから30年後も同じデザインのオフィスなのかというとそうではなくて、途中何度か変更を入れながらオフィスデザインを改良していこうということも皆さんと話をしておりますので、次から次へと新たな雰囲気であるとか、新たな機器だとかそういったものを導入しながらオフィスそのものをさらに進化させて行きたいなと思います。これぞ我々が推進するニューオフィスの考え方です。今日は皆さんの前でお話ができたのを非常にうれしく思っておりますし、私どもを選んでいただいて本当にありがとうございました。これからも未来に向けて新しいオフィスを皆さんが考えるにあたって我々のオフィスもその参考の一助にしていただければなと思います」などと述べ表彰式は閉会しました。

懇親パーティ

続いて、場所をカンファレンスルームに移し懇親パーティが開催されました。

三栖会長の主催者挨拶


主催者挨拶を行う三栖会長

懇親パーティでは、主催者挨拶を三栖会長が行い、「このパーティは4年ぶりの開催となりますが、受賞者と囲んでオフィスに関わる大勢の皆様方と一堂に会してリアルにコミュニケーションができることを大変うれしく思っております。今年は132件の応募でございました。先ほどの表彰式で16件のニューオフィス推進賞と3件の奨励賞の表彰式をさせていただきました。私も審査委員の一人として、たくさんのオフィスを見せていただきました。コロナの前と後でいろいろなことが変わりましたが、一言でいうと何がということを考えました。一言でいうとコロナの前は働く人にとってはオフィスは働かされる場所だったのではないか、コロナ後は自ら働く場になった、自ら率先して主体的に働く、そういう場になった、働く側の大きな変化ではないかと思っております。オフィスづくりを自分事として捉え、自分も参画してオフィスをつくり、そしてそこで振る舞う。オフィスがそういう場になったのではないかなと思います。その背景には、よくいわれます人的資本経営が重視されるなかでwell-beingがオフィスづくりの主要なテーマになってきております。そういったなかで、従業員にどういう価値が提供できるか従業員に提供できる価値、Employee Value Propositionといわれますけれども、そのEVPの具現化がオフィスづくりで大変重要になってきたということも大きな変化であると思います。このEVPの視点が今後のオフィスづくりにいろいろな新しい挑戦とか、新しい可能性を拓いていくのではないかという気がしてるところでございます」などと述べました。

米倉誠一郎日本ファシリティマネジメント協会会長の来賓挨拶

来賓挨拶を行う米倉日本ファシリティマネジメント協会会長

来賓挨拶を公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会会長の米倉誠一郎氏が行い「日本は生産性でついに世界の22位に転落しました。かつては1位の時もあったのですね。OECDの資料を今日改めて見たのですが、平均賃金では24位でした。韓国にもイタリアにも抜かれ、もっと言えばスペインにも抜かれました。日本はどういうふうに見られてるかというと、生産性が低くて賃金も安い国だなと。これ、悔しいですよね。まさにオフィスから新しいものが生まれてくる、イノベーションが生まれてくると思うのですが、今まではやっぱり効率中心でしたね。先ほど三栖会長が働かされるといわれましたが、効率が中心。やっぱりこれからは、クリエイティビティ、そういうことを中心にしていかなければいけないのだろうなと思っています。そういう意味では今回受賞された皆様が新しい取り組み、ワクワクするようなオフィスをつくろうという意志が伝わってきてうれしい限りですが、もう一つやっぱり我々はつくったときから壊すことを考えている。壊すときにどうなるのかそういうことを考えたオフィスも、いいモノを入れても終わった時に捨てるではなくて、これがどういうふうに活きていくのかという、環境との調和を考えていかなければいけない時代になったと思います。
日本ファシリティマネジメント協会では、今までの効率性あるいはそれに伴うようなオフィスメンテナンスだけではなくて、つくった時から次の世代に継ぐことを考えていますので、今回ニューオフィス賞を受賞された方々はそのマネジメントの視点を入れて、ぜひ、我々の日本マネジメント大賞にご応募くださるとありがたいなと思っております。これは実にいい賞なのです。本当に素晴らしいクリエイティビティとファシリティをマネジメントしていく、それもただ単に長く使うことも重要なのですが、次の世代にどういうふうに移していくか、という視点を重視していますので、ぜひこの賞にもご応募ください」などと述べました。

佐藤夏樹ミズノグローバル研究開発部部長の受賞オフィス代表挨拶

受賞オフィス代表挨拶を行う佐藤ミズノグローバル研究開発部部長

あらためて受賞オフィスが紹介された後、受賞オフィス代表挨拶をミズノ株式会社グローバル研究開発部部長の佐藤夏樹氏が行いました。佐藤氏は
「このプロジェクト、弊社の方で始まったのが、2019年の秋でした。コロナが始まる直前、そのころにスタートして、プロジェクトが始まったと思ったらコロナに突入しました。パートナーの企業と結局何十回も打ち合わせを行って、完成に至ったのを覚えております。その打ち合わせをどうするのかということでオンラインも駆使し、リアルでも集まっていろいろな方法を試しながら、やっていました。その過程で気づかされたことはリアルの価値です。リアルにやっぱり膝突き合わせて、顔を見て、心と心を通わせて交流する、意見交換する、この価値がどれだけでかいのかというのを、コロナを通じて私たち自身が学ばせていただきました。その過程を経て、どうすれば感染症リスクを下げながら、人と人が混ざり合えるのか、交流して、心通わせて一体感をもって混ざることができるのかということにパートナーと3社で新しいオフィス空間をつくっていったのを思い出しております。
オフィスは、去年の11月にオープンしました。このような素晴らしい賞があるということで、審査をしていただきまして、近畿ブロックの審査委員長に審査していただいた後に、私たちにとっては、非常に印象的でうれしいコメントを頂きましたのでここで共有させていただきたいと思います。私たちのオフィスはイノベーションセンター、ミズノエンジンということなのですが、ミズノさん、ここは工場とオフィスが一体となったような場所ですね。3つ重要なポイントがあります。まず1つ目は、すごくきれいな場所があることと同時にものすごく汚い泥くさい、ビューティフルとかクリーンとダーティが対極するけれど同居する、ものすごく泥臭い一面もたくさんあります。きれいな場所もいっぱいあります。そこがまず1つ特長的ですね。2つ目は、クローズドとオープン、研究要素もあるので基本的には極秘情報の塊なので普通はクローズにしますけれども、そこをオープンにしているということで、これも対立するものが同居している。3つ目はドライとウエットということで、コーヒーを飲んだりしている空間とオフィス空間が同居している、これがすごく評価に値するとおっしゃっていただきました。私たちのオフィスはイノベーションセンターとしていろいろなことがごちゃまぜになっています。研究所でもあり、試作品をつくる、試作品の工場でもあり、実験場でもあり、オフィスでもある。ということで、いろいろなものがごちゃまぜになっています。大事にしているのは、いろいろな壁を取っ払って、いろいろなものが混ざりあう、人と人が混ざり合う。あとはモノ、試作品が混ざり合う、ということを大事にしておりましたので、そのようなコメントをうれしく感じたのを覚えております。弊社のイノベーションセンターは昨年11月にオープンしてから6月までにすでに社外の企業の方、1000人に来ていただいております。社外に対してもオープンということを特徴といたしておりますので、本日お集まりの方々もぜひ弊社のイノベーションセンターにお越し頂いてご案内させていただきたいと思っております。」などと述べました。

古谷誠章審査委員長の乾杯の発声

乾杯の発声の挨拶をする古谷審査委員長

乾杯の発声を審査委員長の建築家・早稲田大学教授の古谷誠章氏が行い
「先ほどの表彰式の時の講評でも少しだけふれたのですが、近年の素晴らしいオフィスを見るにつけ、何とか社員の方が自宅ではなくて会社のオフィスに集うことの意義、また、楽しさを感じられるようなオフィスづくりというのが進められているなあというのが実感でございます。今年受賞された皆様方のオフィスそれぞれに、オフィスに集うことの楽しさとか意味合いとか、それをそれぞれに感じさせられました。また、それが1つのひな型でどこにでも通用する方法ではなくて、各社各様の個性を持った、その会社に合ったオフィスづくりを自ら、若い世代の方々を中心につくりあげてきたという感じがみなぎっておりまして、どこを訪れても大変楽しく、審査も行わせていただきました。
私は実はオフィスだけではなくて、あちこちの住宅表彰の審査もしております。東京や中国地方、つい先週沖縄でもやってまいりましたが、最近の新しい住宅にはそれぞれ共働きのご夫婦が家の中に気持ちよく仕事ができる拠点などが構えられておりまして、オフィスもうかうかしていると、いままでは通信環境が整ったとはいえ、それぞれのご家庭は大して外的な仕事環境はなかったと思われていましたけれども、いま着々と各ご家庭にもいい働き場所が出来上がっている。そうするとオフィスと家庭はライバルという関係になるのですが、そうではなく適材適所、小さなお子さんを抱えているお母さまにとっては自宅で快適に仕事をすればそれはそれで快適で、それでもなお、みんなのいるオフィスに出向いて行ってそこで人と会ってともに働くことから生まれてくる創造性、そういったようなものが感じられますとやっぱりオフィスに行って働くということもとても重要な意味を持つということが実感されると思うんですね。ですから今後は本当に自宅といわず、それこそいろいろなところに仕事の環境が整い、そのなかで本社、あるいは拠点となるオフィスの快適なそして非常にワクワクする創造性あふれるオフィスづくりというものが連環してきますと素晴らしいワーク環境というものが出来上がるのではないかなと思った次第です」などと述べ乾杯の発声を行いました。

和やかな歓談が続き、懇親パーティは盛況の裡に閉会となりました。

Follow me!