内田洋行、Open Assessment Technologies S.A.の株式取得(完全子会社化)
内田洋行は、2023 年 5 月 15 日の臨時取締役会で、Open Assessment Technologies S.A.社(本社:ルクセンブルク、以下「OAT」)が発行する株式の 100%を取得し、完全子会社化することを決議したことを同日発表しました。
OAT は、経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA 調査)等にも採用される
Computer Based Testing(CBT)のプラットフォームをオープンソースソフトウェアとして開発している、この分野では世界をリードしているベンチャー企業であり、欧州各国で多数の導入実績をもつ教育 ICT 分野の先進企業だといいます。内田洋行グループは、文部科学省や自治体、教育機関など、わが国での CBT システム導入を行っており、今後は OAT の経営の安定と開発を支援するとともに、両社のノウハウを活用して国内の CBT 市場の拡大と学習デジタルエコシステム構築に取り組むとしています。
記
1. 対象企業の概要等
■商 号 Open Assessment Technologies S.A.
■本 社 ルクセンブルク大公国
■設 立 2013 年
■代表者 Marc Oswald(CEO)氏
■従業員数 100 名
■主要拠点 ルクセンブルク、マドリード、ボストンほか
■事業内容 CBT システム(TAO)プラットフォームの開発・提供、オープンソースアセスメントサービスの開発・提供
■主要実績 OECD PISA 調査、フランス学力調査、イタリア学力調査等
2. 株式取得の背景
(1) 世界基準の CBT 化に貢献する OAT
2002 年、ルクセンブルク研究技術機構(LIST)とルクセンブルク大学は、コンピューターベースの適応型テストの初期コンセプトを策定し、2004 年にオープンスタンダードに基づいて構築された唯一のプラットフォームとなる CBT システム(コンピューターによるテスト)を開発して「TAO」と名付けたといいます。その後、2013 年、ルクセンブルク研究技術機構(LIST)とともにオランダ政府教育評価機関(Cito)が出資し、開発者が中心となって「TAO」を世界に供給するために設立されたのが OAT だとしています。OAT によって「TAO」は、フランスやイタリアの大規模学力調査をはじめ、ヨーロッパ各国やニューヨーク市の学力調査に採択されてきたといいます。2018 年には米国の大学入学審査の標準テストである ACT も出資に参画しているとしています。2022 年には、OECD(経済協力開発機構)の世界 80 カ国以上が参加するPISA(学習到達度調査)の 2025 年からの CBT プラットフォームに「TAO」が選ばれているとしています。
(2)国内での CBT 導入の広がりと OAT との協力関係
内田洋行は、2016 年からオープンソースで世界標準の「TAO」に着目しており、OAT と協力関係を築いてきたといいます。2020 年には、文部科学省によって、児童生徒が学校や家庭から国や地方自治体が作成する問題をオンライン上で活用できる CBT プラットフォームに「TAO」が採択され、「文部科学省 CBT システム(MEXCBT:メクビット)」となり、内田洋行はその開発に携わったとしています。2021 年、内田洋行は OAT と技術やビジネス面で相互に協力する包括契約を締結したといいます。
この MEXCBT は、2023 年に文部科学省の全国学力・学習状況調査(中学校)の生徒へのアンケートの一部や、英語「話すこと」調査にも活用されているといいます。今後は学力調査全体のCBT 化も予定されていて、自治体はじめ大学やその他教育機関国内においても CBT が広がる見込みだとしています。
(3)OAT 社の株式取得について
このような協業の過程の中で、内田洋行と OAT は、世界各国での CBT による学力調査などが安定的に実施されるには、オープンスタンダードの CBT サービスを中長期にわたって継続・維持していく社会的責任が高まるとの共通認識をもつに至ったといいます。そのため、より緊密な関係強化について協議を重ねた結果、OAT からの要請を受けて、内田洋行が OAT 社の株式100%を取得することで合意したとしています。
内田洋行は、今回の株式取得と合わせて、次世代 TAO システム開発のための資金を提供し、より幅広くユーザーが使える操作性や高度なテスト問題作成に対応できる機能等の実現を目指すといいます。ユーザーフレンドリーな体験をつくるため、アイテムバンクとコンテンツデザインのための新しい直感的なユーザーインターフェイスの開発などを予定しているとしています。このような全世界で広がる CBT 化ニーズの高まりに応えるべく、次世代 TAO システムの完成にOAT と共に注力するとしています。
3.将来の教育 ICT におけるデータ活用に向けて
内田洋行の事業において教育 ICT 分野は重要テーマにあるといいます。
全国の小中高の学校では文部科学省「GIGA スクール構想」の進展により、ほぼ全ての学校で1人1台のタブレット端末が整備され、内田洋行は全国小中学校に 133 万台以上のタブレット端末を導入しているとしています。今後は、児童生徒ひとりひとりの学習を向上するために、学習者が特定のプラットフォームに縛られることなく自分に合った学習コンテンツやツールを自由に使える学習デジタルエコシステムの実現が求められていて、オープンソースの CBT システムはその中核として期待されるとしています。
OAT は、CBT 化とアセスメントの革新において市場をリードしてきたといいます。TAO プラットフォームは、オープンソースでアクセスしやすく、世界標準規格に対応して他のデジタル学習教材との連携が容易だとしています。そのため既存の学習システムにも適合し、個々のユーザーはニーズに合わせて最善のソリューションを自由に構築することができるといいます。内田洋行は、国内文教市場での経験が長く、多様な学習支援システムの導入実績も豊富にあるといいます。
内田洋行と OAT は、両社の強みとリソースを活用することで、世界中の教育関係者のニーズの進化に応える、より多様なアプリケーションを連携できる学習デジタルエコシステムの構築を目指して、GIGAスクール後の教育サービスの変革にチャレンジし貢献していくとしています。
なお、同社は、将来のアジア市場での事業展開も見据えて取り組むとしています。