東京オフィストレンド オフィス家具週間トレンド報告

10/10~10/16、オフィス家具業界の主なハイライト(+コラム)

イトーキ、8製品が「2022年度グッドデザイン賞」を受賞

2022年10月10日から10月16日までの1週間の業界の主なハイライトについては、イトーキは、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する2022年度グッドデザイン賞で8件が受賞し、このうち特に高く評価された「グッドデザイン・ベスト100」には、「ADDCELL(アドセル)」と「LINEA(リネアチェア)」の2件が選出されたといいます。

■グッドデザイン・ベスト100(2製品)

ADDCELL(アドセル)

人と音に配慮した、ユニバーサル対応のクローズドブース。同社によると、テレワークの増加で、遮音と吸音に優れた個室ブースのニーズが高まっているといいます。通常のブースと比較して、同製品は床をなくした新たな構造で、健常者のみならず車椅子の人でも使用できるブースとなっているとしています。

【審査員コメント】

コロナ禍において多様な作業環境が認められるようになり、ワークブースのニーズが高まっていると考えられるが、他の製品に見られない大きな特徴として、床面を無くすことで車椅子での利用を容易にした点があげられる。床面以外にもユニバーサルデザインに関する配慮が行き届いており、高く評価できる。床部材を除くことで強度面では不利になるが、フレーム全体で強度を確保しながら、スリムな外周で軽快な印象を生み出している。

LINEA(リネアチェア)

地球環境への負荷を低減するためニットで作ったオフィスチェアだといいます。

【審査員コメント】

一見既視感のあるシンプルな椅子に見えるが、技術的側面、環境への配慮、使用感など全ての面において既存の椅子とは全く異なる、未来の椅子である。最小限のスチールパイプの構造にハンモック構造という独自の技法を用いたデザインはニット特有の伸縮性によって体と一体感を生みだしながらも、耐久性の心配を全く感じさせない強度を備えている。最新の技術とデザインが融合した非の打ち所がない美しい椅子である。

■グッドデザイン賞(6製品)

Light Booth(ライトブース)

silta(シルタ)

Olika(オリカチェア)

Copt(コプト)

Common Furniture(コモンファニチャー)

工場用什器をオフィス空間に調和するよう再編集したという家具シリーズ。

工場用什器ならではの機能と強度を活かし、オフィスで使いやすいカラーリング・サイズ・バリエーションを揃えたといいます。オフィス空間の用途に合わせた使い方の可能性を広げる多彩なオプションも特徴だとしています。

【審査員コメント】

用途の違う既存の開発製品を新たなブランディングの枠組みの中で再編集し、新規マーケットへのアプローチを行うことに成功した好例である。工場や研究施設などで使用する業務用什器をそのままインテリアに用いる場合、ディテールの甘さがネガティブな印象を与えてしまうこともあるが、この製品は、現代のライフスタイルに合ったカラーリングを再考したり、機能に合わせた棚の追加などのカスタマイズを導入することで、インテリアに溶け込むバランスの良いデザインを生み出している。

iwasemi™-HXα(イワセミHXα)

科学技術を活かし日々の課題を解決する革新的な吸音材だといいます。

ガラスに囲まれた空間につきまとう反響音の問題。音響メタマテリアル設計技術を応用した透明吸音パネル「 iwasemi™ HX-α 」は、ガラスに貼れる吸音材だといいます。ガラスの反響音を抑え、オフィスにクリアな閑かさをもたらし話しやすい空間を実現するとしています。

【審査員コメント】

透過性を保ちながら、ガラス面の吸音性を高めるところに新しい可能性を感じた。オフィス空間などで既存のガラス面への取り付け可能な製品として、視線の変化をもたらすフィルムのような役割をしつつ、吸音効果があることの製品価値は高い。今後、より一層ガラスのよさを活かす形状やサイズのバリエーションなど、さらなる展開も期待できる。

オカムラ、グループの温室効果ガス排出削減目標が国際的なイニシアチブによるSBT認定を取得

オカムラは、オカムラグループが掲げる温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定に準じた世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えるための科学的根拠に基づいた目標であるとして、国際的なイニシアチブ「SBTi(The Science Based Targets initiative)」によるSBT認定を取得したといいます。

同社によると、SBT(Science Based Targets)は、パリ協定が求める水準「世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの」と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことだといいます。

オカムラグループは、オカムラグループ環境方針を定め、GREEN(環境配慮)のWAVE(波)を自ら起こし、その波に乗るという「GREEN WAVE」の考えのもと、目指すべき方向性を示した環境長期ビジョンを10年ごとに策定し、すべての事業活動で経営資源を活用して環境負荷低減を実践しているといいます。環境長期ビジョン「GREEN WAVE 2030」においては、温室効果ガス排出量削減などの気候変動への対応や、水資源使用量の削減、生産プロセスにおける生産廃棄物の排出量原単位削減などについて定量目標を設定しているとしています。

コクヨ、リニューアル後初の書籍「WORKSIGHT 17号 植物倫理」を10月14日より発売

コクヨは、同社のヨコク研究所が編集する研究媒体WORKSIGHTのリニューアル後初となる書籍『WORKSIGHT[ワークサイト]17号 植物倫理 Plants/Ethics』を、10月14日(金)に発売。

同社によると「WORKSIGHT」は、2011年の創刊以来「オフィス」を軸に働き方の未来を考察してきたといいます。しかし、新型コロナウイルスによるパンデミックのさなか、これからの社会を見通すためには切り口を「オフィス」から「社会」そのものへとスコープを広げる必要があると考え、今年大幅なリニューアルを遂げたといいます。リニューアルにあたりコンテンツメーカーである黒鳥社を編集・制作パートナーとして新たに迎えているとしています。

リニューアル後第1弾の書籍である同誌では「植物」にフォーカス。社会的な孤立や分断が進む現代、さらには人間の知能を凌駕するAIが出現していく新しい時代において、動くことも語ることもせず、感情も持たない「生き物」である植物と私たち人間との関係を考えることが、これからの生き方や考え方を示す貴重なヒントになると考えるといいます。そのためには、これまでとは異なる人間観や倫理が、私たちには必要なのかもしれないとしています。同誌ではそうした「ベジタル(植物的)」な未来について、有識者との対話や、歴史上の哲学者・偉人たちが思考する植物や庭を手がかりに考察していくとしています。

コクヨ、浮かせてすっきり省スペースな壁面収納「さっと出し入れできる壁掛けポケット」3タイプを発売へ

コクヨは、フックで吊り下げ省スペースに使える、オフィス空間にも家庭にもなじむデザインの3タイプの壁面収納「さっと出し入れできる壁掛けポケット」を10月26日(水)から発売するといいます。

同社によると、医療介護・製造など立ち作業の多い現場では、動線上にある壁面を有効活用した壁掛けファイルが多く使用されていて、書類・備品等の整理だけでなく、回章書類などの情報伝達にも役立っているといいます。しかし、「書類が引っかかってスムーズに取り出せない」「通るときにあたって落としそう」「入れにくい」などの不満の声も聞かれ、まだまだ使い勝手に課題があることがわかっているとしています。

一方、家庭の収納に関しても、“失くしたら困るもの”“忘れたら困るもの”を一定期間保管するため、生活空間で邪魔にならないよう壁面を有効利用した収納が取り入れられているといいます。家庭ではインテリアにも合うカラーやデザインのもので揃えたいとの声がニーズとしてあるとしています。

今回発売する「さっと出し入れできる壁掛けポケット」は、“出し入れのしやすさ”や、“省スペース”、“書類以外のものも入る”が特長となるという壁面収納ポケット。出し入れしやすい立体ポケットを採用した「書類用」、厚手のカタログや雑誌も収容できる「書類・カタログ用」、透明のポケットで中身が確認しやすい「小物用」、用途によって選択できる3タイプを揃えたといいます。いずれも壁面にフックで吊り下げられるので、場所をとらずに省スペースで使えるとしています。カラーは、暮らしの空間にも取り入れやすいやわらかい雰囲気のホワイトと、ブラックの2色のバリエーションだといいます。「書類用」については、色で書類の分別がしやすいマルチカラーも用意しているとしています。

コクヨ、3種の紙質が選べるドイツ装ノート「PERPANEP」の予約販売を応援購入サービス「Makuake」で開始

文具関連では、コクヨは、「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」の3種の書き心地から、愛用の筆記具や好みに合った紙質を選べるドイツ装ノート「PERPANEP(ペルパネプ)」の予約販売を、応援購入サービス「Makuake」で、10月11日(火)から開始。

「PERPANEP」は、紙と筆記具の相性に注目し、「書き心地」をデザインしたというノートのシリーズ。滑るように颯爽と書ける「ツルツル」、滑らかで心地よい書き味の「さらさら」、音を感じる落ち着いた書き味の「ザラザラ」の3種のコクヨオリジナル原紙を用いたノートを用意しているといいます。

書き心地を選べる3種の紙

愛用の筆記具との相性や、自分の好みに合った書き心地の紙を3種類から選べるといいます。

滑るように颯爽と書ける書き心地の紙「ツルツル」や、滑らかで心地よい書き味の紙「さらさら」では、ペンと自分がつながったような感覚になり、スラスラと気持ちのままに書き綴ることができるといいます。一方で、音を感じる落ち着いた書き心地の紙「ザラザラ」では、書く際の音や紙の抵抗感を感じることができ、書き進むほど自分の気持ちや意志が文字や線に乗るように感じるとしています。

注目のコラム オフィス山人の少し深掘り

今週まず注目したことについては、イトーキの8製品が2022年度グッドデザインを受賞し、このうち特に高く評価された「グッドデザイン・ベスト100」には、「ADDCELL(アドセル)」と「LINEA(リネアチェア)」の2件が選出されたという記事です。

アドセルの受賞理由の大きなポイントは、審査員のコメントにもありますが、床面を無くすことで車椅子での利用を容易にした点でしょう。それだけではなく「バーテブラ03」など従来のオフィスチェアを使用することができるので、状況が許せばより長時間のソロワークが楽に出来るということでもあると思います。

リネアチェアは、「最新の技術とデザインが融合した非の打ち所がない美しい椅子である」と審査員コメントで絶賛されています。実際に技術の向上が新たなオフィスチェアを実現させたということで、「未来の椅子」ともコメントされ、またオフィスチェアの基準が上がったということではないかと思います。

グッドデザイン賞6製品のなかでは、「コモンファニチャー」に注目しています。イトーキはここ数年、シリーズのブランディング化を強化し、トータルで一つのテイストを持たせたオフィス空間を提案していますが、審査員コメントのなかにある「工場や研究施設などで使用する業務用什器をそのままインテリアに用いる場合、ディテールの甘さがネガティブな印象を与えてしまうこともあるが」とあるようにこの製品の乗り越えなければならなかった従来のポイントを示し、それをクリアしていることに言及しており、この製品が単に目先を変えただけのものではなく、非常にデザイン的にも実践のうえでも素晴らしいものだということを謳っていると思います。

イワセミは、これも新たな技術との融合で実現した製品で、これもイトーキが示すオフィス3.0の実現だといえるのではないかと思います。

先週は、オカムラ、コクヨのグッドデザイン受賞の発表があり、これで大手3社がそろったことになりますが、今年は新たな技術、新たなコンセプトを明示した新たな市場を切り拓く製品がより多くあったと思います。グッドデザインというのは本来そういうものなのでしょうが、オフィス家具業界もオフィス市場もあらためて新たな局面に差し掛かってきているのではないかということを感じさせるとともに、今後の展開に期待できるのではないかと思います。

オカムラのグループの温室効果ガス排出削減目標が国際的なイニシアチブによるSBT認定を取得の記事ですが、同社らしい積極的な動きだと思います。これにより、より具体的な目標に対する実践と、自らに制約をかけることによるなかでのより意識の高まりからくるイノベーションへの期待と、『GREEN(環境配慮)のWAVE(波)を自ら起こし、その波に乗るという「GREEN WAVE」の考え』による「グルーブ感」のようなある種の勢いを得ることができるのではないでしょうか。

コクヨ、リニューアル後初の書籍「WORKSIGHT 17号 植物倫理」を10月14日より発売の記事ですが、山人はあらためて同誌の「新型コロナウイルスによるパンデミックのさなか、これからの社会を見通すためには切り口を「オフィス」から「社会」そのものへとスコープを広げる必要があると考え」というリニューアルの理由に注目しました。

切り口を社会に広げるということは、大きな発見ではないかと思います。それは実はわかりきったことかもしれませんが、そこに気付きリニューアルするということは実は大変難しいことなのだと思います。オフィスのことだけを考えていたということ自体が実はある意味不自然なことで、元来オフィスは社会的なものであり、極論すれば世の中の全分野を網羅する総合的なものと捉えられるべきものなのだと思います。オフィスの分野のなかでオフィスのことを掘り下げていくという行為はこれからも続くと思いますが、常に社会の視点を忘れないこと、それを広く受け入れることも必要なのであり、これらはすべて人間の存在に関わってくるものだと思うからです。そういう時期にオフィスが来ているということなのだとも思います。もちろん自然や環境なども含まれますが、これからは広範囲での深い洞察とそれがいかにオフィスに活かされていくのかに注目していきたいと思います。

コクヨ、浮かせてすっきり省スペースな壁面収納「さっと出し入れできる壁掛けポケット」3タイプを発売への記事ですが、これについてはいくらDXが進歩しても我々人間はアナログとリアルからは逃れられないのだということをあらためて感じました。そのなかでいかに効率よく利便性を追求するかということはまだまだ有効なのだと思います。バーチャル、デジタルとリアルとアナログの境目にこの業界があり、常にその間に発生する課題を解決していくことがこの業界の使命の1つなのではないかということをあらためて感じたということなのだと思います。

文具関連ですが、コクヨ、3種の紙質が選べるドイツ装ノート「PERPANEP」の予約販売を応援購入サービス「Makuake」で開始の記事について、そのなかの3種の書き心地について一言。

3種の書き心地、滑るように颯爽と書ける書き心地の紙「ツルツル」や、滑らかで心地よい書き味の紙「さらさら」では、ペンと自分がつながったような感覚になり、スラスラと気持ちのままに書き綴ることができるといいます。一方で、「音を感じる落ち着いた書き心地の紙「ザラザラ」では、書く際の音や紙の抵抗感を感じることができ、書き進むほど自分の気持ちや意志が文字や線に乗るように感じる」という部分を敢えて掲載したのはこのためです。

つまり「一体感」と「音を感じる落ち着いた書き心地の紙「ザラザラ」では、書く際の音や紙の抵抗感を感じることができ、書き進むほど自分の気持ちや意志が文字や線に乗るように感じる」という段階においてこれは「書く」ということの醍醐味といいますか、手書きのもつ良さの大きな要件になっていることだと思います。山人は「書」においてその研究を行っているのですが、これらは「書」においても非常に重要なポイントで、ノートにおいてもこの領域にまで達している同社の取り組みには敬意を表したいと思います。

これらはまず書くということに意識的になることにつながり、そこから集中が始まり、体験、体感の楽しさにつながっていくのだと思います。すなわち書くことのエンタテインメント性というものが成立してくるのだと思います。同社においてそれが体系化され、掘り下げていかれることを期待したいと思いますが、逆にどこまで投資できるかが課題なのではないでしょうか。アナログ、手書きの生き残り策というと後ろ向きですが、これを新たなエンタテインメントの世界に成立させる今が分岐点なのかもしれません。

一般販売はこのプロジェクトに共感してもらえるサポーターからの反響や生の声に基づくとしていますが、動向に注目していきたいと考えています。

(このコラムは、あくまでも山人の主観的なものです。従って各メーカー様には何の関係もありません)

Follow me!